アメリカのミズーリ州とイリノイ州を隔てるミシシッピ川に架かる鉄道橋「Merchants Bridge」の改修工事が完了。橋に架けられた長さ158mのトラススパン3つそれぞれをそのまま撤去し、新設する橋も大組された状態で架けるという豪快な施工方法。
鉄道橋「Merchants Bridge」改修工事
鉄道橋「Merchants Bridge」はアメリカ ミズーリ州セントルイスとイリノイ州ベニスの間にあるミシシッピ川を横断する橋。正式名称はMerchants Memorial Mississippi Rail Bridge。全長1,320m、ミシシッピ川に架かる部分は1スパン158mのトラススパン3つで構成されている。
1889年5月に開通、建造されて130年が経過し、橋の改修工事を行わなければ後10年程度しか使用できないだろうと言われていた。それに加え、建造当時から一度に通行できる列車は1両に制限されており、輸送量の増加が期待されていた。
改修費用は317億円
2018年秋に開始した鉄道橋「Merchants Bridge」の改修工事にかかった費用は2億2千2百万ドル。日本円に換算すると317億円(1ドル=143円として換算)、改修期間は4年。
今回の改修工事により、新しく架けられた橋では強度が増加し屈強になったことで、通行できる列車がこれまで1両だったのが2両に倍増。輸送量の増加にも期待が持たれている
鉄道橋の改修方法
鉄道橋の撤去・新設には橋の揚重にクレーン船は使用されておらず、橋脚を利用した門型クレーンのようなものを現地に設置して作業が行われた。橋の重量は撤去時で1スパン約1,800トン、新設時は倍以上の1スパン4,082トン。
橋の揚重に使用されているのはウインチではなくジャッキ。MAMMOETの900トンのストランドジャッキ(STRAND JACK)で行い、撤去時は4つ、新設時は8つ使用されている。
撤去時は橋を吊上げた後、横にスライドさせて河川上に浮かべた台船に搭載、新設時はその逆で台船で運搬してきた橋を吊り上げた後に横スライドさせて橋脚に設置。
この横スライドを可能にするため、門型クレーンの脚の一方は橋脚の上にあり、もう一方は河川内に基礎を設置して幅広になるように設置されている。これによって橋を吊り上げた後に横行させることが可能になる。この発想がすごいですね。なかなか思いつかないと思う。
1スパンの撤去と新設が終わると、次の橋脚へ片側の門型クレーンを設置替えして2スパン目の撤去・新設を行うといった具合に施工は進められた。
再開式典の様子
2022年9月15日に行われた鉄道橋「Merchants Bridge」の再開式典の様子。
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