戸田建設が風力タービン一括搭載技術の実証試験に成功

戸田建設が風力タービン一括搭載技術の実証試験に成功 洋上風力発電
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戸田建設が風力タービン一括搭載技術の実証試験に成功

1/3スケールモデル公開実証試験の様子
出典:TODA CORPORATION

2025年8月29日、戸田建設はコストミニマムを実現する風車一括搭載技術の開発の一環として1/3スケールモデルの実証試験をおこない、日本で初めて大型起重機船による風車一括搭載に成功したことを発表しました。

戸田建設のプレスリリースによると、8月25日に長崎県五島市椛島沖で進めている風車一括搭載実証試験の内容を公開したという。ローター直径約240mという15MW級大型風力タービンの1/3スケールにあたるローター直径約80mの2MW級風力タービンで一括搭載実証試験の公開実証試験をおこなった。2MW級風車を事前に組み立て、大型起重機船にて一括で吊り上げた状態から、浮体へ搭載する作業を実施。

今回の実証試験の成功により、タワー・ナセル・ブレードを事前に組み立てた完成形の風車を、国内で稼働中の大型起重機船(3,700トン吊級)で一括搭載できることを検証し、大型風車の一括搭載技術の開発・実用化に向けて大きく前進したという。

実証試験で風力タービンの一括搭載をおこなった起重機船は、株式会社 吉田組が所有する3,700トン吊り起重機船「第50吉田号」。

洋上作業日数を短縮する「風車一括搭載技術」

浮体式洋上風力の導入拡大において、浮体構造物の製造コストと施工コストを合わせたトータルコストの低減が必要不可欠だという。

戸田建設が開発しているハイブリッドスパー型浮体は、構造が単純で製作が容易かつ低コストであることから、地元企業と協働した浮体製造の量産化を実現することができる一方で陸上に比べて稼働率が低い沖合の洋上で風車を組み立てる必要があり、作業が長期化しやすいといった課題があった。

風車一括搭載技術の開発は、施工コスト低減を図るための洋上作業日数を短縮する施工方法として開発。タワー・ナセル・ブレードを陸上もしくは台船上で事前に組み立て、国内で調達可能な稼働中の大型起重機船(3700トン吊級)にて完成形の風車を一括で吊り上げ、浮体まで吊曳航して一括搭載。

大型起重機船で吊り上げるのはタワー下端の接続部材。転倒防止枠でタワーを把持し、2本のクレーンジブの間にタワーを通した状態で吊るため、風車の大きさに制限されることなく、起重機船の吊能力を最大限に活用できる。

戸田建設の「風車一括搭載技術」は、着床式ではなく浮体式洋上風力に焦点をあてた技術であるということがポイント。着床式の風力タービン設置では、自船レグで船体を海面上へ昇降させて波浪による動揺が無い状態で施工出来るSEP起重機船の方がメリットは多い。しかし、戸田建設が開発しているハイブリッドスパー型浮体は風力タービンを設置する状態に建て起こすと喫水が大きくなるため、SEP起重機船では施工が出来ない。「五島洋上ウィンドファーム」で設置しているハイブリッドスパー型浮体の形状は直径7.8m、全長130m、重量2,600トン、建て起こした状態で喫水は76m。

ノルウェーの浮体式洋上風力「Hywind Tampen」では、同様のハイブリットスパー型浮体へ風力タービン設置を港内で陸上のクレーンを使用しておこなっていますが、日本国内に同じ施工方法で作業できる水深70m以上の港は無い。日本国内での施工を考えると「風車一括搭載技術」は、有効な施工方法のひとつと言えそう。

さらに、浮体式洋上風力で「風車一括搭載技術」のメリットとして、接続作業中の潮汐が施工に影響しないという点が挙げられる。着床式の風力タービンへ起重機船で搭載作業をする場合、干満で上下する船体に合わせて起重機船側のフックを巻き上げ・巻き下げして調整する必要があり、一定の時間を要する接続作業時に起重機船側の荷重保持で潮汐による干満の影響が無いことはメリット。

しかしながら、大型起重機船で浮体に風力タービンを一括搭載する作業は難易度の高い作業といえる。浮体と風力タービンを接続する部分にも何らかの対策や工夫が施されていると思いますが、その点については記載されていないので不明。

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