米国初ジョーンズ法準拠のSEP船「Charybdis」進水
2024年4月15日、Dominion Energyはアメリカ テキサス州南部にあるブラウンズビルのSeatrium AmFELSで建造しているSEP起重機船「Charybdis」が進水したことを発表しました。
「Charybdis」はアメリカ初のジョーンズ法に準拠した洋上風力向けSEP船として2020年12月に建造を開始。当初は、2023年第4四半期に完成予定でしたが、2024年後半から2025年初めにズレ込み、1年以上遅延しています。進水を発表した掲載文では完成・引き渡し時期について言明していませんが、完成後に施工する「Coastal Virginia Offshore Wind Farm」の建設スケジュールに変更はないとしている。
「Charybdis」進水には半潜水式バージ3隻を使用
ドックではないヤード上で建造が進められた「Charybdis」の進水はユニークな方法でおこなわれていました。
進水時の船体重量は23,000トンという情報もありますが、建造位置から進水をおこなう半潜水式バージまでの移動にはSPMT(自走式多軸台車)を使用。運搬には、前・中央・後の3カ所にSPMTを配置して船体をリフトアップするため、船体の前側と後側のカットアップ部分にSPMT運搬用の架台を設置。
船体を運搬するSPMTが配置された3列に合わせて、岸壁では3隻の半潜水式バージが縦着けで待ち構える。SPMTは前進し、それぞれが半潜水式バージの甲板上へ移動。
その後、「Charybdis」のレグを降下させてジャッキアップし、自立したところで半潜水式バージは離脱。「Charybdis」はレグをジャッキダウンして無事に進水完了。
想像の上をいく進水方法だったので、少し驚きました。Dominion EnergyがVimeoで公開している「Charybdis」の進水動画がXでシェアされていたので添付してます。動画で見ると一目瞭然、分かり易い。
「Charybdis」進水作業の動画
SEP起重機船「Charybdis」の概要
船名 | Charybdis |
クレーン能力 | 2,200トン(ジャッキアップ時) 1,700トン(フローティング時) |
ブーム長さ | 130m |
長さ | 144m |
幅 | 56m |
深さ | 11.5m |
喫水 | 7.5m |
DPS | DP2 |
搭載可能重量 | 11,500トン |
デッキ強度 | 10t/m2 |
デッキスペース | 5,400m2 |
レグ長さ | 109m |
スパッドカン | 182m2 |
プロペラ | 3,700kw×3(格納式) 3,200kw×4(固定) |
最大乗船人数 | 119名 |
SEP起重機船「Charybdis」の船体寸法は長さ144m、幅56m、深さ11.5m、レグ長さ109m。船体設計は、GustoMSC。当然ながら自航式、DP2のダイナミックポジショニングシステムを搭載。メインクレーンはHuisman製で最大吊り上げ能力2,200トン。
完成後は「Coastal Virginia Offshore Wind Farm」で施工予定
SEP起重機船「Charybdis」は完成後、「Coastal Virginia Offshore Wind Farm」で施工する予定。唯一のジョーンズ法に準拠した「Charybdis」は、アメリカ国内での洋上風力建設を考えると安全面、施工効率、工程、コストなど様々な面で有利なことから、引っ張りだこになることが予想される。
Dominion Energy が開発を進める「Coastal Virginia Offshore Wind Farm」は、アメリカ東海岸のバージニア州にあるバージニアビーチから東へ27マイル(約43km)で建設が計画されている。Siemens Gamesaの風力タービン「SG 14-222 DD」を176基設置する計画で、総発電容量は2.6GW。
最近「Moray West offshore wind farm」で29基のモノパイル設置を完了させた5,000トン吊りクレーン船「Orion」がバージニア州へ向かっており、モノパイル設置作業は5月に始まる予定。
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