粵電陽江青洲一、二 洋上風力プロジェクト
2023年6月27日、広東省 陽江市 陽西県 沙扒鎮沖で建設中の粵電陽江青洲一、二(YUEDIAN YANGJIANG QINGZHOU 1,2)洋上風力プロジェクトで洋上変電所のトップサイド設置が完了。作業したのは、アジア最大の12,000トン吊りクレーン船「振華30」(Zhen Hua 30)。ただ、ちょっと変わった作業方法で実施されていたようです。
中国南部の広東省沖で建設が進められている粵電陽江青洲一、二洋上風力プロジェクトでは、明陽智能(MingYang Smart Energy)の11MW風力タービン「MySE11-230」92基を設置する予定で、総発電容量は1,000MW。
2022年7月に台風による荒天で走錨し、船体が折れて沈没したクレーン船「福景001」が事故前まで作業していた現場。いわく付きの現場ですね。
アジア最大のクレーン船「振華30」による洋上変電所設置
設置した洋上変電所トップサイドの形状は長さ60m、幅50m、高さ25.7m、重量約6,450トン。3層構造になっており、その高さは9階建てのビルに相当する。
かなり巨大ですが、12,000トン吊りのクレーンを搭載した「振華30」にしてみれば、重量約6,450トンの設置作業は問題なく可能。と思いましたが、そうではなかったのかもしれません。
甲板上からAフレームにのびるワイヤーの存在
活躍するニュースを見る機会が少ないクレーン船「振華30」。今回の作業で久しぶりに拝見しましたが、何やら得体のしれないワイヤーが甲板上からクレーンAフレームまでのびていることに気が付きました。どのような目的で取り付けているのか、実際のところは分かりません。なので、わかる範囲の事実から推測してみることに。
クレーン船「振華30」の最大吊り上げ能力は12,000トンですが、その能力を発揮するためにはクレーンが正面を向いていなければならず、旋回することは出来ない。クレーンが旋回出来るのは7,000トンまで。
船名 | Zhen Hua 30 (振华30) |
---|---|
吊り上げ能力 | (固定)12,000トン (旋回)7,000トン |
長さ | 297.55m |
幅 | 58.0m |
深さ | 28.8m |
建造年 | 2016年 |
船籍 | 香港 |
今回の「粵電陽江青洲一、二」で設置した洋上変電所トップサイドの重量は6,450トン。吊具の重量が不明ですが、旋回できる7,000トンの能力では少し設置は厳しそう。実際、作業はクレーンを正面に固定した状態でおこなっています。この状態だと最大吊り上げ能力12,000トンを発揮できますが、アウトリーチと呼ばれる作業半径によって能力は変化します。
設置するトップサイドの長辺方向(60m)がクレーン船の前後方向の向きになっているので、重心位置が中央付近にある場合、最低でもアウトリーチ59mが必要。あとは吊荷と船首部分の余裕をどれだけ見るかになりますが、余裕を10mにすると、アウトリーチ69m。
そして、ウェブ上で確認できる「振華30」の荷重曲線を見ると12,000トンの吊り上げ能力はアウトリーチ54mまで。アウトリーチ69mで固定吊りの最大吊り上げ能力は7,000トンまで落ちる。据え付け後の画像を見るとベタベタに寄り付いた状態で作業しているので、実際のアウトリーチはもう少し小さかったかもしれません。
能力的に限界近い重量になるので、ブームの強度が問題ないという前提で起伏の補助的な役割を担っていたのかもしれません。あくまでも推測ですが。
ちなみに、2021年9月に設置した「華電陽江青州三」の洋上変電所トップサイドでは甲板上とAフレームをつなぐワイヤーはありませんでした。この時に設置したトップサイド重量は4,285トン。
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