2,600トン吊りのユニークな岸壁クレーン「Skyhook」
中国南東部の福建省漳州市にある Huisman China に設置されている岸壁クレーン「Skyhook」。延長380m、水深17mの岸壁では各種Huisman製品の荷役やクレーン搭載作業などが「Skyhook」によっておこなわれている。
「Skyhook」の最大吊り上げ能力は2,600トン。特徴的なのは、背面側にぶら下げているスーパーバラスト(SB)と呼ばれる円筒形の巨大なカウンターウェイト。このSBは着脱が可能で、SBを付けていない状態だと最大吊り上げ能力は1,200トン。吊り上げる吊荷の重量によって切り替えが出来るので作業性が向上し、効率アップにつながる。岸壁上に敷かれたレールを走行する「Skyhook」は、最大負荷の2,600トンを吊り上げた状態でも走行が出来るそうです。
SB | クレーン能力 | 作業半径 |
有り | 2,600トン | 30m |
無し | 1,200トン | 23m |
2012年12月に設置完了
「Skyhook」の設置が完了したのは、2012年12月。Huismanの掲載記事によると、完成時の最大吊り上げ能力は2,600トンではなく2,400トンでした。いつアップグレードされたのかは不明。
設置に向けた埋立や岸壁補強の設計と申請は、2009年に開始。10万m2の埋立を含む建設作業は2011年1月23日にスタートし、延長380mの岸壁は耐荷重40トン/m2に補強されているという。
クレーンポストに書かれている「擎天吊」の意味
何となく漢字から伝わってくるニュアンスで意味は想像できますが、”擎”(敬の下に手)は、ささげるとか高く持ち上げるという意味があり、「擎天吊」を直訳するとスカイクレーン。なので「Skyhook」を中国語で表記しているものと思われる。
世界最大のクレーン船「Sleipnir」のクレーン部材を出荷
これまでに Huisman China では、「Skyhook」によって数々のクレーン船へHuisman製クレーンの搭載や製品の出荷をおこなっています。その中には、2019年にシンガポールのSembcorp Marineで建造された世界最大の20,000トン吊りクレーン船「Sleipnir」のメインクレーンも含まれています。
「Bokalift 1」「Bokalift 2」のクレーンを搭載
「Skyhook」で直接クレーンを設置した実績も数多くありますが、中でもクレーン能力の大きなものに3,000トン吊りの「Bokalift 1」と4,000トン吊りの「Bokalift 2」があります。
出典:Huisman(LinkedIn)
4,000トン吊りの「Bokalift 2」のメインクレーン搭載に関しては、つい1週間ほど前にHuismanのLinkedInに作業の様子が投稿されています。もともとTransoceanが所有していた掘削船「GSF JACK RYAN」を自航式のクレーン船に改造した「Bokalift 2」は、ドバイに本拠を置くDrydocks Worldで主要な船体改造がおこなわれましたが、メインクレーン搭載の為に中東のドバイから中国へ移動して2022年に「Skyhook」でクレーン設置をおこなっています。
現在、「Bokalift 2」はアメリカの「South Fork Wind」で風力タービン基礎のモノパイル設置作業中。
出典:YouTube | Huisman
「Bokalift 2」のクレーン搭載作業ではクレーンポストとブームを別で設置していましたが、「Bokalift 1」の3,000トン吊りクレーンは、驚くべきことにブームやフックなどすべてを一体化した状態で搭載作業がおこなわれました。いろんな工夫が施された上で実現しているんでしょうけど、施工・工程・安全などメリットは大きい。
Huisman製のクレーンを搭載した「Bokalift 1」は、台湾の「Changfang & Xidao(彰芳暨西島) offshore wind farms」で風力タービン基礎のジャケット設置作業をおこなっています。
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