障害物の多い道を通って巨大な風車ブレードを運ぶ方法
風力タービン部材のなかでも構造的に分割することが難しいブレード。
風力タービンの大型化に伴い、必然的にブレードの長さは長くなってきています。洋上風力では大型貨物の運搬が可能な船舶という輸送方法で大きな部材も運ぶことが出来ますが、陸上ではそうもいかない。
舗装された広い道路が設置場所まで続いているということはなく、道路周辺の建物や電柱、架線、樹木など運搬経路上にはいろいろな障害物があり、そもそも道路が無い場所へ道をつくることから工事が始まることもあるようです。
ブレード起立輸送車両
困難な輸送を可能にするため、特に延長の長いブレードは専用車両を使用して運搬。車両に搭載した起立装置にブレード端部を固定することでブレードを立て起こす動作が可能になるというもの。これによって長いブレードの平面的な長さが短くなり、運搬通路周辺にある支障物上空をブレードが通過するといった輸送方法が出来るようになるという。
一方で、ブレードを起立させることによって重心位置が前寄りかつ高い位置になるため、トレーラー上にウェイトが置かれるそうです。確かに、重心位置を低くする措置を取っていない状態でブレードを起立させると路面の傾きや風の影響で転倒しやすいので不安定になる。しっかり対策が施されているようです。
ギリシャで80mのブレードを陸送、6.2MW風力タービン設置
出典:YouTube | Vestas
風力タービンメーカのVestasは、昨年おこなわれたギリシャの「Rokani wind park」でブレード運搬から風力タービンを設置する動画をYouTubeで公開しました。
設置した風力タービンは、出力6.2MWの「V162-6.2MW」3基。ローター直径は162m、全体の高さは205mにもなり、ブレードの長さは80m。
動画は舗装された広い直線道路をポールトレーラーにブレードを積んで運ぶ場面から始まりますが、次の瞬間には、道幅の狭い郊外の小さな街中を走行しているシーンへ。輸送車両もポールトレーラーから牽引式のブレード起立輸送車両へ変わり、運搬する速度も一気にゆっくりになります。
狭い街中を通り抜ける80mのブレード
設置場所に近づくと道路周辺に建物などの障害物は無くなりますが木々が増え、さらに坂道が増えていきます。幸い通る道の近くには高い木が無いので、比較的通り易そうに見えます。ただ、最後の坂道では勾配がきついからなのか、牽引車を追加して運搬する様子が映されていました。
ブレード起立輸送車両「FTV 850」
動画内で使用されている運搬車両に書かれている会社名から作業をおこなっている車両はギリシャのAnipsotikiという会社。Anipsotikiのウェブサイトを確認すると、所有しているブレード起立輸送車両はすべてドイツの重量物輸送用車輛を製造するGOLDHOFERのものでした。
動画で使われていたブレード起立輸送車両の型式は不明ですが、運搬していたブレードが長さ80mという点から恐らく「FTV 850」。
型式 | FTV 850 |
自重 | 19トン |
バラスト重量 | 18トン |
モーメント荷重 | 850tm |
最大起立角度 | 60度 |
ピッチ角度 | エンドレス |
出典:GOLDHOFER
日本にもブレード起立輸送車両「FTV 850」は納入されている
At the beginning of 2018 Denzai made further additions to its Goldhofer fleet and became the first company in Japan to have both an »ADDRIVE« and the FTV 500 blade transport device from the Memmingen-based world market leader for heavy-duty and special transport solutions.
(2018年の初めに、Denzaiはゴールドホーファー社のフリートをさらに追加し、メミンゲンに拠点を置く重量物および特殊輸送ソリューションの世界市場リーダーの「ADDRIVE」とFTV 500ブレード輸送装置の両方を導入した日本初の企業となりました。)
https://www.goldhofer.com/en/news-archive/news-archive-2018/denzai-group-continues-to-expand-its-technology-leadership-in-japan-with-the-help-of-goldhofer#c2809
GOLDHOFERのウェブサイトに掲載されているブレード起立輸送車両は「FTV 550」と「FTV 850」の2種類。そして、2018年初頭に「ADDRIVE」とブレード搬送装置「FTV 500」の両方を始めて納入した日本の企業は、DENZAI であるという記事が掲載されていました。
さらに、DENZAIのウェブサイトを見ると、2023年に「FTV 850」を導入。DENZAIのウェブサイトで紹介されている保有機械には1,350トン吊りのクローラークレーンや1,200トン吊りのオールテレーンクレーンがあり、風力発電設備建設に必要な設備を一式保有。
リンク先 株式会社電材ホールディングス
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