中国の大連中遠海運重工で台船を改造したケーブル設置船が完成。改造前の台船は、今治造船グループの株式会社スチールハブが運航していた「STEEL HUB 3」のようです。運用目的は洋上風力発電プロジェクト。
中国で台船を改造したケーブル設置船が完成
2022年12月1日、中国の大連中遠海運重工で台船を改造したケーブル設置船「今海龙3」(Jin Hai Long 3)が完成。かなり強引な手法による改造のように見えますが、施工性能は大丈夫なのでしょうか。
改造前の台船は、今治造船グループの株式会社スチールハブが運航していた「STEEL HUB 3」のようです。
中国の記事によると、新しく台船に搭載されたのは居住設備や8つのアンカーによる係留設備、ケーブルを貯蔵するターンテーブル、揚重設備などケーブル敷設に必要な機器。
スラスターなどは搭載されていないようで、DPS(自動船位保持装置)の機能は無い。
DPS非搭載でアンカーによる施工
完成したケーブル設置船は洋上風力プロジェクトで発電した電力を送電するケーブル設置作業に使用される予定。中国の周囲にある東シナ海は、ほとんどが水深200mよりも浅い大陸棚。洋上風力発電所が建設されているのは、着床式と呼ばれる水深50m以下の海域。アンカーによる係留設備が8つ搭載されているので、ケーブル設置に合わせてアンカーの打ち替えを行い、4点係留の状態で作業するものと思われる。
一般的に、水深が深くなるとアンカーと自船を繋ぐワイヤーの必要長さが長くなる。アンカーの把駐力と呼ばれる海底面とアンカーとの抵抗力は海底の土質によっても変化しますが、同じ距離の位置にアンカーを投錨した場合、水深が深くなるにつれて把駐力は低下する。北海道・知床半島沖で起きた観光船「KAZU Ⅰ(カズワン)」沈没事故の時も水面際まで引き揚げられた船体をウトロ沖の水深が浅い場所へ曳航、アンカー係留して船上への引き揚げを行ったのは把駐力を確保するため。
今回のケーブル設置船は水深の浅い場所での運用は可能ですが、逆に水深が深い場所ではDPS非搭載なので作業することが出来ない。さらに、ケーブル設置船「今海龙3」(Jin Hai Long 3)だけで作業することは出来ず、揚錨船などの付属船が必要になる。中国国内でも、DPSを搭載したケーブル設置船の建造が行われていますが、一方で台船に必要な設備だけを搭載して応急的に不足する作業船を補おうとする傾向が見られる。
中国と欧米で決定的に違うところ
発想は良いのかもしれませんが、なぜ中国ではこのように応急的な方法が考えられ、実行に移されているのでしょう。
客観的に見ると、中国は洋上風力などの設備を建設することに焦点を当てているのに対し、欧米では洋上風力による再生可能エネルギーを使用することで地球環境に対する負荷を低減するという一歩先に焦点を合わせているという違いがあるように見える。
日本も中国のようにならない為には目的を念頭に置いて洋上風力事業に取り組む必要がありそう。
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