英国にある洋上風力発電所の風力タービンで火災発生
2023年8月15日の朝、イングランド東部のグレート・ヤーマス(Great Yarmouth)沖にある「Scroby Sands offshore wind farm」に設置された風力タービンから火災が発生。風力タービンのナセルから出火したとみられており、燃え広がった火によってハブと風下側のブレード1枚がひどく損傷。
出火当時、風力タービンで作業している人はいなかったため負傷者などは報告されていない。火災はその日のうちに自然に消えており、現在原因の調査がおこなわれている。ハンバー沿岸警備隊によって火災が起きた風力タービンの周囲500mが立ち入り禁止区域に設定されたそうです。
火災による損傷が激しいブレードは1枚だけのようですが、接続しているハブのほうが大きく損傷しているように見える。強風などの影響によっては、ブレードが落下する可能性がありそうです。
日本国内でも建設が進められている洋上風力発電ですが、同様の現象が起きないとも限らない。火災が起きた「Scroby Sands offshore wind farm」に設置されている風力タービンは、Vestas社製の「V80-2.0 MW」。日本国内で運転開始または建設中の洋上風力発電所でVestas社の風力タービンを採用しているのは「秋⽥・能代港洋上⾵⼒発電所」と「北九州響灘洋上ウインドファーム」。
堆積土によってアクセス困難な風力タービンが存在していた
「Scroby Sands offshore wind farm」は、イギリス東部にあるノーフォーク州グレート・ヤーマスの海岸から沖合2.5kmに位置し、2004年3月に運転を開始。出力2MWの「V80-2.0 MW」30基が設置されており、総発電容量は60MW。
風力タービンが設置されている場所は海岸線から近い場所で、もともと水深の浅い海域だったそうです。発電所の完成は2004年、商用規模の洋上風力としてはイギリスでも初期段階に建設され、20年近くが経過しています。必要なメンテナンスはおこなわれていると思いますが、この辺りも出火原因のひとつの要因なのかもしれません。
長い年月で堆積した砂によって水深が減少
Scroby Sands offshore wind farm
(抜粋)because of natural changes in the marine environment and coastal erosion, this has risen over time effectively isolating four turbines from being accessed by service vessels.
(海洋環境の自然変化と海岸侵食のため、時間の経過とともにこの値は上昇し、4 基のタービンが業務用船舶によるアクセスから事実上隔離されています。)
https://uk-ireland.rwe.com/locations/scroby-sands-offshore-wind-farm/
「Scroby Sands offshore wind farm」では、長い年月が経過するなかで風力タービン設置エリアに砂が堆積し、水深が浅くなるという現象が起きている。RWEに掲載されている情報では、4基の風力タービンが船舶でのアクセスが困難になっているという。
火災が起きた風力タービンの足元は砂浜のようになっており、堆積土による影響で水深が大きく減少した風力タービンのうちの1つであることが分かる。
潮位によってアクセスできる時があるのかもしれませんが、点検・整備を考えると十分なメンテナンスがおこなえていたのか疑問。行きたいときに行けないというのは結構な問題ですね。ただ、問題は放置されていた訳ではなく、ちゃんと対策が考えられています。
水陸両用乗組員輸送船「CRC Walrus」
RWEがCommercial Rib Charters(CRC)と提携して建造した水陸両用乗組員輸送船「CRC Walrus」。完成後は、「Scroby Sands offshore wind farm」でメンテナンス技術者などの人員輸送として活躍しているようですが、建造されたのが2023年なのでつい最近。
船名 | CRC WALRUS |
長さ | 12.8m |
幅 | 4.0m |
喫水 | 0.9m |
搭乗定員 | 乗客8人+乗組員2人 |
最大速力 | 24ノット(海上) 4ノット(陸上) |
出典:Commercial Rib Charter
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