多機能飽和潜水支援船「Wadad Aletheia」引き渡し

多機能飽和潜水支援船「Wadad Aletheia」引き渡し 船舶
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多機能飽和潜水支援船「Wadad Aletheia」引き渡し

多機能飽和潜水支援船「Wadad Aletheia」
出典:Consolidated Contractors Company Underwater Engineering

2024年9月6日、上海振華重工の長興基地でConsolidated Contractors Company Underwater Engineering(CCCUWE)向けとなる多機能飽和潜水支援船「Wadad Aletheia」の引き渡しがおこなわれました。

CCCUWEの掲載情報によると、多機能飽和潜水支援船「Wadad Aletheia」は全長149.5m、DP3の自動船位保持装置や200人分の宿泊設備に加え、400トン吊りと25トン吊りの動作補償機能が付いたナックルブームクレーンを搭載。

飽和潜水を支援する設備には、DRASS i100と呼ばれる24人乗り完全自動ツインベル飽和潜水システムが装備されており、潜水士が減圧をおこなう再圧室から海底への往復に使用する3人乗りダイビングベルを2台搭載し、作業効率を大幅に向上。潜水深度300MSWまで対応。(MSWは、Meter Solt Waterのことで海水での水深という意味)

船尾側の甲板エリア1,850m2には7.2m×7.2mのムーンプールがあり、甲板強度は標準部15トン/m2ですが補強甲板エリアは50トン/m2あり、重機や特殊機械の輸送とレイアウトを効果的にサポート。

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飽和潜水とは?

飽和潜水(Saturation Diving)を理解する上で重要となる減圧症が起こるメカニズムから。

水中にいる潜水士には、潜水深度に応じた水圧がかかっている。地上での気圧は1気圧ですが、水中では水深10mに対しておよそ1気圧ずつ上昇していく。高気圧下の環境では、呼吸するガスの中に含まれる窒素などが生体の組織内に多く溶け込むという現象が起き、潜水士が水面に向かって浮上する際は逆に生体に溶け込んでいた窒素などが過飽和状態となり、気泡として生体の組織内や血管内にあらわれることで減圧症を引き起こす。

潜水時に起きる減圧症の対策として、減圧表を基に潜水深度に応じた減圧をおこなうことで生体に溶け込んでいた窒素などがゆっくりと体外へ自然排出され、予防することができる。適切な減圧を実施していても減圧症が起こる場合があり、潜水士の体調によっても大きく影響を受けるため、減圧管理に加えて潜水士の体調管理も重要。

潜水効率向上、より安全に大深度潜水を可能にする飽和潜水

潜水深度が深くなると、目的の深度に滞在する時間に比べて減圧しながら浮上する時間が長くなるため潜水効率が低下する。この潜水効率を向上させ、大深度での潜水をより安全におこなう技術が飽和潜水。

飽和潜水では、船上などに設置した再圧タンク(DDC,Deck Decompression Chamber)に潜水士が入り、目的深度の高圧環境を再現。潜水士は、リスクのある水中ではなく完全に制御された再圧タンク内で目的深度の高圧環境に体を慣らすことができる。そして、高圧環境を維持したまま再圧タンクから作業する海底までの往復には、ベル(PTC,Personnel Transfer Capsule)を使用。

再圧タンクおよびベルを使用した飽和潜水によって潜水士が水中に出るのは作業する時だけとなり、リスクの高い水中での滞在時間が減少。さらに、再圧タンクと作業場所の移動にベルを使用することで潜行・浮上といった水圧変化の影響を受けることなく高気圧環境を維持したまま作業を遂行できるため、作業間の減圧時間が無くなり潜水効率が向上する。

水深450mで作業を開始するまでの加圧に4日間

再圧タンクを使用した飽和潜水でも大深度潜水となると減圧時間にはかなりの時間を要する。

2008年5月21日に潜水艦救難艦「ちはや」 の潜水員が450メートルという日本新記録・世界第2位(当時)を達成した時の実際に飽和潜水をおこなう手順がWikipediaで紹介されていました。

出典:Wikipedia | 飽和潜水 – 具体的な手法

3名または6名の潜水チームで再圧タンクに入り、まず2気圧まで加圧。ここで点検を実施した後、呼吸ガスをヘリウム・酸素混合ガス(Heliox)に切り替えて、所定の深度に相当する圧力まで加圧。加圧速度について、海上自衛隊では毎分1m前後の速度を保っているとされており、目標深度が200メートルより深い場合はここからさらに加圧速度を遅くしているという。水深450mの潜水時、タンクで加圧を開始してから実際にエクスカーション(作業潜水)をおこなうまでに4日間かかったそうです。

”450m分の加圧を4日間” という数値を基に計算すると、加圧速度は毎分0.078mになり1m分の加圧におよそ12分かけていることが分かります。

 4日×24時間×60分=5,760分

 450m÷5,760分=0.078m/分

 1m÷0.078m/分=12.8分

上記の加圧速度は潜行時のもので、浮上時の減圧速度の方がさらにゆっくりとなり、作業深度100mの場合は5日間、300mの場合は11日間を要するという。

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