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大林組と東亜建設工業のSEP船「柏鶴」完成 船体仕様など公開

大林組と東亜建設工業のSEP船「柏鶴」完成 船体仕様など公開 起重機船、クレーン船
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大林組と東亜建設工業のSEP船「柏鶴」完成 船体仕様など公開

 2023年5月12日、大林組と東亜建設工業は共同で建造を行っていたSEP起重機船が、2023年4月に完成したと発表。両社は2018年9月に建造を発表し、当初は1,000トン吊りクレーンへ増強が可能な800トン吊りクレーンを搭載したSEP船を2020年10月に完成・引き渡し予定で建造する計画でしたが、2020年9月に計画変更を発表。搭載するクレーンを1,250トン吊りに増強しそれに伴う船体の補強を行った上で2023年4月に完成・引き渡しを延期していた。

SEP起重機船「柏鶴」の建造経緯
  • 2018年9月
    建造を発表

    搭載クレーンは1,000トンへ増強可能な800トンを搭載、2020年10月完成予定

  • 2020年9月
    計画変更を発表

    搭載するクレーンを1,250トン吊りに増強、完成予定を2023年4月に延期

  • 2023年4月
    完成

 完成までには紆余曲折あったように見えますが、無事に完成。建造中は船体仕様などの情報が公開されていなかったためベールに包まれていましたが、完成を発表するプレスリリースでは船体仕様が掲載されました。

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SEP起重機船「柏鶴」の概要

 SEP起重機船「柏鶴はっかく」につけられた船名は、大林組創業者の家紋「丸に土佐柏」の「柏」と東亜建設工業の発祥の地「鶴見」および創業者三名を表すシンボルマーク「三羽鶴」の「鶴」に由来するそうです。

 船体設計と建造を行ったのは、ジャパン マリンユナイテッド(JMU)。清水建設のSEP起重機船「BLUE WIND」の建造も手掛けており、国内のSEP起重機船建造については最も実績のある造船所といえる。搭載している1,250トン吊りクレーンはオランダのHuisman製を採用し、完成時に公開された船体画像では確認できませんでしたが、風力タービン基礎のモノパイル設置時に使用するパイルグリッパーもHuismanに発注している。

SEP起重機船「柏鶴」の仕様

船名柏鶴
クレーン能力1,250トン
長さ88m
40m
深さ7m
喫水4.6m
6.6m(スパッド底部)
DPSDP1
搭載可能重量4,800トン
デッキ強度10t/m2(一部20t/m2)
デッキスペース2,000m2
レグ長さ63m(最大70m)
スラスター1,400kw×4
居住設備54名
操船ウインチ50トン×4基

 全長88m、幅40m、深さ7mの船体に搭載されているPedestal Mounted Craneは中国のHuisman Chinaで製造された最大吊り上げ能力1,250トンのクレーン。DPSは搭載されているようですが非自航式で50トン巻きの操船ウインチ4基を搭載している。レグ長さは63mで最大70mまで延長可能。

 ニュース記事に掲載されている情報によれば、10MW級の風力タービン組み立てが可能で2,000m2のデッキスペースには8MW級で2基分、10MW級だと1基分のタービン資材を積載できるという。

 船体寸法は大きくはなく、よく言えばコンパクトな船体ですが、風力タービン資材の積載を考えると不利になる。さらに搭載しているクレーンはLEC(Leg Encircling Crane)ではなく、レグの横のクレーンポストに設置した台座クレーンなので限られた甲板スペースをより狭くしている。

 全体的に際立った特長は無く、清水建設が建造した「BLUE WIND」と比べると見劣りする点が多いので残念な感じが漂っているように思えます。というのも風力タービンの大型化が想像以上のスピードで進んでいることが原因として考えられる。大型船の建造には年単位の時間が必要で、未来の需要を明確にとらえるという先見性が重要。

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SEP起重機船「柏鶴」の施工予定

 完成後に報道公開された時のニュース記事によると、今後10カ月から1年程度の習熟訓練を実施した上で施工に投入する予定とのこと。投入する予定の現場が決まっているのかは不明ですが、公表はされていない。

 プレスリリースでは、SEP起重機船「柏鶴」について ”日本特有の建設条件に幅広く対応したSEPとなっています” という説明。日本特有の建設条件が何なのかは分かりませんが、主な特長に洋上風力発電付帯工事や通常の港湾工事にも対応するとして、風車メンテナンスや地盤調査用の作業台船として使用可能という点を挙げています。どちらもSEP船であれば出来て当たり前のことなので、費用的に地盤調査用の作業台船と同じ価格帯で使用できるという事が言いたいのか。そんな訳は無いと思いますが、建造費用が安く抑えられていて供用単価が低ければ低価格という大きなメリットがある事になる。建造価格も施工単価も不明なので何とも言えませんが。

 先月発表された「基地港における浮体基礎への大型風車搭載の為の改造」に関する基本設計承認もそうですが、SEP起重機船として本来施工するべき着床式風力タービンの輸送・設置という作業から外れた部分で活躍できる場所を模索しているように見えてしょうがない。今後、SEP起重機船「柏鶴」が活躍する姿を見ることができるのだろうか。

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