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東亜建設工業などによる中型SEP船の改造設計に基本設計承認

洋上風力発電
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東亜建設工業などによる中型SEP船の改造設計に基本設計承認を発行

 2023年4月14日、東亜建設工業、ジャパン マリンユナイテッド、日本シップヤードは、共同で研究・開発した「基地港における浮体基礎への大型風車搭載の為の改造」に関する基本設計承認(AIP,Approval in Principle)を日本海事協会(ClassNK)より取得したことを発表。

 浮体式洋上風力の浮体基礎に風力タービンの搭載作業を陸上クレーンでおこなう場合、港内にある岸壁の地耐圧が問題となる。洋上風力設置海域に近い拠点港となる港のインフラが整っていない時にSEP船のクレーンを使用して風力タービン搭載作業をおこなうという。岸壁に大型クレーンを据えて搭載作業をおこなう諸条件がクリアされていない場合、有効な手段のひとつになるかもしれない。

 もともとSEP起重機船は、着床式洋上風車設置に特化したクレーン船なので、浮いている浮体に風力タービンを設置するという作業に使用するのは勿体ない気もしますが、現状、国内の港湾インフラ状況を考慮すると拠点港として使用できる港の選択肢が広がるとのこと。平穏な港内作業なので、既存のクレーン船や大型のクローラークレーンを搭載したクレーン付き台船でも代替えは可能かもしれません。

低喫水のセミサブ型浮体基礎との組み合わせ

 搭載作業を考えている浮体基礎は、ジャパン マリンユナイテッドが開発したセミサブ型浮体基礎。曳航喫水が非常に浅いという特徴があるそうです。なのでドックや工場で製作した浮体基礎を設置海域に近い港へ曳航する時、港を選定する上で水深による制限が緩和されるというメリットがある。これによって浮体基礎の水深はクリア出来ているけど、搭載作業のクレーンを岸壁に設置することが出来ないために選定から除外される港が出てくる。この問題を解消するためにSEP船を使用。

 岸壁補強などの工事が不要で、最寄の港を拠点港に出来る可能性を高めるというのは効率的な方法なのかもしれない。ただ、岸壁の地耐圧がクリアできていないような場所に巨大な浮体式洋上風車を一時的とはいえ係留しておくのは少し不安な気もする。

SEP船をどのように改造するのかは不明

 ひとつ疑問に感じたのが、「基地港における浮体基礎への大型風車搭載の為の改造」の改造という点。港内でSEP船を使用して浮体基礎へタービン搭載をおこなう時に必要な改造とは何でしょう?そのままの状態でも作業は出来るはずなので、特に改造する必要は無さそうな気がします。どのような改造を行うのかについて詳細は記載されていないので不明ですが、少し考えてみることに。

 作業をおこなう上で支障になりそうな部分を挙げるとすればレグ

 港内の浅い水深でレグを使用した場合、大部分が甲板上に飛び出た状態になる。建造中のSEP起重機船はLEC(Leg Encircling Crane)と呼ばれるレグの位置にクレーンを搭載する仕様ではなく、レグの横にクレーンが搭載されているので、作業をする上でかなり邪魔になることは間違いない。ブレードのような長尺物の搭載時は製品がレグに接触して破損させる恐れもある。もしかするとレグを任意の高さで着脱できるような仕様にするのかもしれない。あくまでも想像ですが。

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浮体式風力タービンの搭載方法

 浮体式風力タービンの浮体基礎への搭載方法として多いのは、やはり港内の岸壁で陸上クレーンを使用する方法。搭載する風力タービンの大きさによって使用するクレーンの規模は様々ですが、大型化するタービン出力に対応できる国内の港湾施設は多くないのかもしれません。今回のSEP船を使用する方法の他にも実際施工されている現場では創意工夫により考えられた方法で作業が行われている。

 事例として国内初の浮体式洋上風力発電所となる「五島市沖洋上風力発電事業」とノルウェーで建設中の世界最大規模「Hywind Tampen」を紹介。

国内初の浮体式洋上風力「五島市沖洋上風力発電事業」

五島市沖洋上風力発電事業の概要
  • 設置位置:長崎県五島市崎山漁港から東へ約7~11km、水深120~135m
  • 発電容量:16.8MW
  • 風力タービン:日立製作所 HTW2.1-80A、2.1MW、8基
  • 風車基礎:浮体式、ハイブリッドスパー型(上部=鋼製、下部=コンクリート製、直径7.8m)
  • 風車形状:ダウンウィンド型、ローター直径 80m、全高 176.5m(水面上100.5m、喫水76m)、ハブ高さ 60.5m
  • 完成予定:2024年1月1日

 現在、長崎県五島市沖で建設が進められている浮体式洋上風力では浮体基礎にハイブリッドスパー型を採用しているため、浮体の喫水は70m以上ある。水深という点から港内の岸壁で風力タービン搭載作業をおこなうことは難しいため、比較的平穏な椛島の島影で浮体の進水と風力タービン搭載作業をおこなっている。

 風力タービンの搭載をおこなったのは、㈱吉田組所有の3,700トン吊り起重機船「第50吉田号」。見た感じ効率的な方法とは思えませんが。

 スパー型の浮体基礎進水では、半潜水型スパッド台船「フロートレイザー」を使用した興味深い施工方法を採用している。

「第50吉田号」のタービン搭載作業
出典:Twitter | @Ura_Tamaki
半潜水型スパッド台船「フロートレイザー」に浮体積込
出典:TODA CORPORATION

世界最大規模の浮体式洋上風力「Hywind Tampen」

Hywind Tampenの概要
  • 設置位置:ノルウェー西部の沖合140km、水深260m~300m
  • 発電容量:94.6MW
  • 風力タービン:Siemens Gamesa 8.6 MW、11基
  • 風車基礎:浮体式、コンクリートスパー型
  • 風車形状:ローター直径 167m、ブレード長さ 81.5m
  • 電力供給先:スノーレ(Snorre)油田とガルファクス(Gullfaks)油田

 ノルウェー西部の沖合140km、北海に建設中の浮体式洋上風力「Hywind Tampen」。こちらの浮体基礎への風力タービン搭載方法は、港内の岸壁で陸上クレーンを使用するという方法。

「PTC 200-DS」による浮体基礎への風力タービン搭載

 ただ、設置する風力タービンは8.6MWという規模の大きなもので、尚且つスパー型浮体基礎の喫水が70m近くあり、岸壁から離した位置で係留するため間にスペーサー台船を入れた状態での搭載作業。設置時の揚程とアウトリーチを確保するためにmammoetの「PTC 200-DS」という型式の大型リングクレーンを使用。クレーンの最大吊り上げ能力は5,000トン、ブームの先にラッフィングジブを取り付けた状態だと、作業半径102mで600トン程度の吊り上げ能力がある。

 さすがにこの大型リングクレーンをそのまま岸壁に設置することは出来なかったようで、岸壁を補強する支持杭を含めた基礎工事から整備した上でクレーン設置を行っている。

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世界的な再生可能エネルギーへの転換に伴い、洋上風力発電の建設は勢いを増すばかり。
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