船名変更した「フリーマントル・ハイウェイ」再起のため中国へ
2023年7月にオランダ沖を航行中、船倉から発生した火災により損傷した自動車運搬船「フリーマントル・ハイウェイ」(FREMANTLE HIGHWAY)が再起のため中国へ輸送されるという。
自動車運搬船「フリーマントル・ハイウェイ」で火災が起きたのは、2023年7月25日夜。火災は6日間以上続き、8月1日に鎮火が確認され、オランダのエームスハーヴェンに入港。そこで貨物として積まれていた車両の搬出や事故調査がおこなわれた後、2023年9月21日にエームスハーヴェンを出港し、ロッテルダムへ。オランダのロッテルダムにある造船所Damen Verolme Rotterdamではドックに入渠し、損傷した部分の船体撤去や清掃、検査などがおこなわれていました。
修理可能と判断、損傷部分を撤去した船体は驚くほど変貌
火災により広範囲に渡って船体が損傷した自動車運搬船「フリーマントル・ハイウェイ」について、修繕した上で再び航行可能なのか、それともスクラップとするのか検討がおこなわれた結果、修理可能と判断。検討時の判断材料として、デッキ1~5およびエンジンルームを含む重要な船体部分が損傷していなかったため、経済的に修理可能だと判断されたようです。
ロッテルダムのDamen Verolme Rotterdamでは火災により損傷した部分の撤去がおこなわれ、作業を終えた船体はまるで別の船のように変貌していました。
船名を「FLOOR」に変更
2023年9月に「フリーマントル・ハイウェイ」は、オランダのKoole Contractorsにより買収され、日本海事協会(ClassNK)に登録されているRegister of Shipの情報を確認すると、所有者はKoole Contractorsの子会社にあたるKMS B.V.に変更されていました。さらに、船名は「FREMANTLE HIGHWAY」から「FLOOR」に変更。
船体を中国に曳航した上で再建作業を実施することが明らかにされましたが、欧州廃棄物輸送規制(European Waste Shipment Regulation)の対象に該当することからオランダ当局は当初、中国への輸出を禁止していたという。最終的には輸出許可がおりて船体を中国へ輸送する準備が進められているそうですが、いつ輸送を開始するのかは不明。既に輸送開始している可能性もあります。報じられている情報では、船体を半潜水式運搬船に搭載して輸送をおこなうという。「フリーマントル・ハイウェイ」の船体長さは約200mなので搭載可能船は多く存在する。
さらに、報道情報では中国の青山船廠(Qingshan Shipyard)が船体を買収して新たな所有者となっており、輸送先の福建省廈門市で再建作業をおこなう予定だと報じられています。
世界的に自動車運搬船は需要に対して不足している状態となっており、短期間・低コストで再建可能と判断された「フリーマントル・ハイウェイ」の再建は費用対効果が高いと考えられているようです。ただ、過酷な大自然を相手にしている海運業界では ”験を担ぐ” ことが多いだけに、大きな事故を起こした上、1人の方が亡くなっている船というのは簡単に受け入れられないような気も・・。
火災原因は未だ不明のまま
事故発生から1年以上が経過しましたが、事故に関する最終報告書はまだ公表されておらず、事故原因についても公式な見解は示されていない状態。
火災による船体損傷は上半分に集中しており、上層の貨物エリアに積まれていた車両に火災が集中。下層エリアの車両はほぼ無傷で、下層エリアに積まれていたのは大部分がEV車(Electric Vehicle、電気自動車)だったという。
火災の発生元だけを考えるとEV車が原因ではない可能性は高そうですが、何らかの原因で火災が発生した場合、EV車に搭載されているリチウムイオン電池が起因して鎮火が困難であることや、再発火のリスクが指摘されているのは事実。そのため、火災発生後にEV車が延焼したことで火災の規模が大きくなった可能性は高い。
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