海という大いなる自然の中で活躍する船。
色んな場面で”験(げん)を担ぐ”風習が世界的に伝統として残っています。
船の進水式もその一つ。イメージするのは、華やかな飾りと紙吹雪の舞う中でシャンパンボトルが割られ、ゆっくりとドックを滑走して進水する瞬間ではないでしょうか。
そんなハレの日を祝う進水式ですが、過去をさかのぼりその伝統の由来をみると、現代のそれとは少し違ったものだったようです。
進水式でシャンパンを割る理由
進水式でよく見られるシャンパンボトルを船体に叩きつけて割る儀式。特に決まりがあるわけでは無いので、シャンパン以外にワインやウイスキーなど他の酒類が使われることもある。
アメリカで禁酒法によりアルコールの製造・販売・輸送が全面的に禁止されていた1920年~1933年の間に進水されたペンサコーラ (重巡洋艦)やヒューストン (重巡洋艦)などでは水が使用された。
さらに遡ると、西暦800年~1050年の西ヨーロッパ沿海部を侵略したヴァイキングは、進水式で人間を生贄として捧げていたとされている。これが後に、生贄ではなく血を連想させる赤ワインを使う風習となり、さらに白ワインからシャンパンに変化したのが通説とされる。
支綱切断の儀式
進水式の中に支綱切断の儀式というものがある。
これは新たに建造された船を造船所に最後まで繋げている「支綱」を切断する儀式。日本では支綱切断に銀の斧を用いる。
銀の斧は古くから悪魔を振り払うといわれている縁起物。
銀の斧が最初に用いられたのは、1907年 佐世保海軍工廠における防護巡洋艦・利根の進水式。
当時工廠の造船部長であった小山吉郎が、日本の軍艦の進水式なのだから西洋式の槌とのみではなく、日本古来の長柄武器である「まさかり」様の器具を支綱切断に用いるべきとして、新たな斧を発案したのがはじまり。
支綱切断の時に使われる斧(ハンマーや小刀、はさみの場合もある)は船ごとに新しく作られる。日本独自の特徴として、刃の左側に3本、右側に4本の溝が彫られている。
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