米国で近日開始の風力タービン設置、注目のジョーンズ法対策は?

アメリカ初の商用大規模洋上風力として建設が進められている「Vineyard Wind 1」ですが、間もなく風力タービン設置作業を開始する予定となっており、大きな節目を迎えようとしている。
出力13MWのGE製風力タービン「Haliade-X」を設置するのはベルギーに本部を置くDEME所有のSEP起重機船「Sea Installer」。ヨーロッパから回航し、マサチューセッツ州セーレムの港に現在停泊しています。クレーン能力を900トンから1,600トンに増強し、レグを延長するアップグレードをおこない満を持してアメリカに到着。
しかしながら、アメリカ国内の港に荷揚げされた風力タービン部材を自船の甲板上に積んで設置エリアに向かうという一般的な施工方法で作業することは出来ない。それは、アメリカ国内の地点間における物品輸送をおこなう船舶について限定しているジョーンズ法が存在するため。モノパイル設置時は、設置エリアがまだ ”米国の地点” ではないという解釈から除外されていたようですが、モノパイルの上に設置する風力タービンはジョーンズ法の適用範囲となるようです。
これまでに明らかにされているジョーンズ法対策は2つありますが、実際にどのような方法で施工がおこなわれるのかは不明。今後、実際の作業がおこなわれたら紹介しようと思います。圧倒的に安全で効率的な方法は港内の岸壁で自船甲板に積み込む方法なので参考にはなりませんが、この理不尽な問題をどんな方法で乗り越えるのか注目。
- 2023年
5月24日最初のGE製「Haliade-X」風力タービン部材(タワー)搬入開始マサチューセッツ州ニューベッドフォードに荷揚げ
- 6月6日クレーン船「Orion」によるモノパイル設置開始
- 6月7日風力タービン部材(ブレード)搬入開始
- 7月25日クレーン船「Orion」による洋上変電所設置
ジョーンズ法対策
これまでにDEME Offshore USが他社と進めているジョーンズ法対策として2つの対策が検討・開発されています。実際に2つとも採用されるのか、別の方法で施工するのか、全く分かりませんが、2つの対策について紹介。その前にジョーンズ法があることで問題になる点を確認。
SEP船の甲板上に風力タービン部材を積めないことの問題点
現時点でジョーンズ法に準拠したSEP船が存在しないので、準拠船以外のSEP船を使用すると自船の甲板上に風力タービンの部材を積むことは出来ない。したがって、港からSEP船までの運搬をジョーンズ法に準拠したアメリカの船舶を使用しなければならない。
風力タービン設置エリアで運搬船からSEP船へ部材の受け渡しをするとなると、沖合の波浪で揺れる運搬船から部材を吊り取るという状態になる。SEP船はジャッキアップすると波浪による船体の動揺は無くなるので、部材を運ぶ運搬船の揺れをいかに抑えるかという点が重要。
紹介する2つの対策は、簡単に言うと吊る側の対策と吊られる側の対策になっています。
Barge Master 動作補償プラットフォーム「BM-T700」
名称 | BM-T700 |
ペイロード容量 | 700トン |
作業条件 | 波高 0~2.5m 周期 4~18秒 |
基礎部分の形状 | 18.3×15.1m |
プラットフォーム 作業エリア | 12×12m |
重量 | 270トン |

Barge Masterと共同で開発を進めている動作補償プラットフォーム「BM-T700」。部材を運ぶ運搬船側に「BM-T700」を設置して、波高2.5m以下、周期18秒以下という作業条件下でプラットフォーム上に置かれた部材の揺れを低減するというもの。
Seaqualize 洋上リフティングデバイス「Heave Chief 1100」

出典:SEAQUALIZE
洋上リフティングデバイス「Heave Chief 1100」は、Seaqualizeが開発したものでDEME Offshore USが使用契約をおこなっている。こちらはクレーンのフックに吊り下げて吊荷の揺れを低減する装置。最大吊り上げ重量は1,100トン。


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