SEP船からロケット海上発射、デモンストレーション実施
Offshore Spaceport Advances with First-ever Launch in U.S. Waters
(洋上宇宙港が米国海域で初の打ち上げで前進)
https://thespaceportcompany.com/offshore-spaceport-advances-with-first-ever-launch-in-u-s-waters/
The Spaceport Companyが開発を進める既存の陸上ロケット発射施設に代わる移動式海上発射プラットフォームで、2023年5月22日にメキシコ湾に配置したSEP船から複数の小型商用ロケットを打ち上げるデモンストレーションを実施し、テストに成功したそうです。
海上発射のデモンストレーションでは、連邦航空局および米国沿岸警備隊からの規制承認をはじめ、影響範囲内のアクセス制御や監視、遠隔発射など軌道級ロケットの打ち上げに関する必要なすべての手順のテストに成功したという。そして、洋上宇宙港が陸上発射施設の混雑を緩和し、ロケット発射を迅速化できる可能性を証明したと述べています。
移動式海上発射プラットフォームのプロトタイプ(mobile floating spaceport prototype)として使用されているのはSEP船。記事の中では改造船(modified ship)という表現が使われていますが、画像を見る限り特に改造されたような部分は無く、強いて言えばロケット発射時の両側に立てられている衝立くらい。ただ、これは近くにあるクレーンの油圧装置をロケット発射時の噴射炎から防護するため簡易に設置されたものと思われ、改造と呼べるものでは無さそう。
デモンストレーションとは言え、打ち上げられたロケットが想像以上に小さくて発射に関する動作テストというよりも実施する手続きや手順のほうに重きが置かれていたように見えます。
打ち上げに使用したSEP船「Gary Chiasson Elevator」
出典:The Spaceport Company
ロケットの打ち上げに使用したSEP船は、EBI(Elevating Boats)が所有する「Gary Chiasson Elevator」。船体寸法は、長さ28.50m、幅22.86m、レグは3本で長さ45.72m。かなり小さめな船体には50トン吊りと25トン吊りのクレーンが搭載されている。クレーンが設置されている方が船尾側になっており、船底にはプロペラが搭載され、8ノットで航行可能な自航式。
船名 | Gary Chiasson Elevator |
クレーン | 50トン×1 25トン×1 |
長さ | 28.50m |
幅 | 22.86m |
深さ | 2.29m |
レグ長さ | 45.72m、3本 |
最大作業水深 | 36.6m |
航行速力 | 8ノット |
出典:The Spaceport Company
EBIのSEP船を移動式海上発射プラットフォームとして改造
出典:The Spaceport Company
EBIは、The Spaceport Company とEBIが所有するSEP船を使用して移動式海上発射プラットフォームを構築する契約を結んでいるという。今回、デモンストレーションで使用したSEP船「Gary Chiasson Elevator」は、EBIが所有するSEP船のなかでは最大クラス。かなり小さい気がしましたが、完成イメージもそこまで大きくなさそうなので、大幅な改造をおこなえば大丈夫なのかも。
EBIは、自社でクレーンやジャッキシステムの開発・製造もおこなっており、改造を施す発射プラットフォームに搭載するすべてのジャッキシステムを供給する。
創業以来、長きにわたりEBIはメキシコ湾の石油・ガス産業を中心に機器やサービスを提供してきましたが、培ってきた技術を石油産業以外の分野に適応させる取り組みに力を入れており、移動式海上発射プラットフォームへの協力もその一環であるという。他にも、軍事産業や洋上風力産業への進出も試みているそうです。
調べてみると、最近アメリカの洋上風力発電所「Vineyard Wind 1」で設置した洋上変電所トップサイドに搭載しているクレーンをEBIが納入していました。
出典:EBI
出典:Bladt Industries A/S
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