世界最大の3,500トン吊りSEP起重機船「正力3500」進水
2025年4月30日、上海振华重工(ZPMC)が自主開発したとされる3,500トン吊りSEP起重機船「正力3500」(Zheng Li 3500)の進水式がおこなわれました。
正力海洋工程有限公司が上海振華重工(ZPMC)とSEP起重機船の建造契約を締結したのは、2023年1月12日。建造契約締結時の完成・引き渡し予定は2024年末でしたが、2023年8月に建造開始が発表されて以降は建造進捗に関する情報が出ていない状態でした。
進水を報じるメディア情報では、引き渡し時期について記載されているものはありません。メインクレーンの搭載やレグの延長、ヘリパッド設置といった甲板上の設備を搭載する作業に加えて、海上公試などの建造工程も考えると2025年末から2026年初頭の引き渡しになると予想されます。当初予定からおよそ1年の遅れ。
メインフックは左右非対称のダブルフック仕様

出典:正力海洋工程有限公司
SEP起重機船「正力3500」の船体寸法は長さ143.8m、幅56.6m、深さ13m。レグ長さは136mで最大作業水深は70m。
SEP起重機船「正力3500」には、右舷船尾側のレグがある位置に最大3,500トン吊りのメインクレーン、右舷船首側のレグ付近に350トン吊りの補助クレーンという主要クレーン2基が設置される予定。メインクレーン先端にはメインフックと別に1,200トン吊りの補助フックを搭載。甲板上からの揚程は、メインフック160m、補助フック180m。高い揚程により20MW以上の風力タービン設置が可能。
メインクレーンに搭載されているメインフックはダブルフック仕様となっており、正力海工の掲載情報(2024年3月22日掲載)によるとメインフック2基の容量は3,500トンと1,200トン。メインフックのフックブロックが左右非対称というのは、これまでに4,000トン吊りクレーン船「巨杰4000」でも見られました。しかし、「巨杰4000」の場合は、2,800トンと2,500トンでその差は300トン。「正力3500」の3,500トンと1,200トンのように2,000トン以上も差があるのは珍しい仕様。
左右非対称のフックブロックを採用している理由は、長尺で非常に重たいモノパイルなどの基礎杭を自船のクレーンのみで建て起こすため。
船名 | 正力3500 |
クレーン能力 | (メイン) 3,500トン (補助) 350トン |
揚程 (メインクレーン) | メインフック:160m 補助フック:180m |
長さ | 143.8m |
幅 | 56.6m |
深さ | 13m |
レグ長さ | 136m |
最大作業水深 | 70m |
定員 | 150人 |
アジマススラスター | (船尾)3,500kW×3 |
バウスラスター | (船首)3,000kW×2 |
格納式スラスター | (船首)3,000kW×1 |
DPS | DP2 |
航行速力 | 8ノット |
SEP起重機船として世界最大のクレーン能力
2025年5月時点で竣工しているSEP起重機船のうち3,000トン以上のクレーン能力を持つものは世界でも「Boreas」と「Voltaire」の2隻のみ。そして、現在建造中なのは「正力3500」「Norse Wind」「Norse Energi」「Wind Ace」「Wind Apex」の5隻。
そして、3,500トン吊りのクレーンを搭載する「正力3500」は完成すると世界最大のSEP起重機船となる。
船名 | クレーン能力 | 長さ | 幅 | 深さ | レグ長さ | 建造年 |
---|---|---|---|---|---|---|
Voltaire | 3,200トン | 169.3m | 60m | 14.6m | 130m | 2022年12月 |
Boreas | 3,200トン | 175.1m | 63m | 13.2m | 126m | 2025年1月 |
Norse Wind | 3,200トン | 151.1m | 58.0m | 不明 | 120m | 2025年第4四半期(予定) |
Norse Energi | 3,200トン | 151.1m | 58.0m | 不明 | 120m | 2026年初頭(予定) |
Wind Ace | 3,000トン以上 | 162.0m | 60m | 不明 | 119m | 2026年第3四半期(予定) |
正力3500 | 3,500トン | 143.8m | 56.6m | 13m | 136m | ? |
よく読まれている記事