世界で7番目に大きなクレーン船「Hermod」は廃船になっていた

世界で7番目に大きなクレーン船「Hermod」は廃船になっていた 起重機船、クレーン船

 知ってる方はご存知かと思いますが、オランダのHeerema Marine Contractorsが所有する8,100トン吊り半潜水式起重機船「Hermod」は廃船になり、2018年11月に中国の浙江省 舟山市で解体されました。

 私は、つい先日まで知らなかったです。なので、知らずにランキングにも入れていたので次回作成分からは除外しなければ。

 約40年間、「Hermod」が刻んだこれまでの活躍と廃船までの歴史を振り返ってみます。

スポンサーリンク

「Hermod」が誕生したのは日本

 驚きの事実ですが、「Hermod」を建造したのは日本の三井造船。こういうことを知るたびに先人の偉大さを感じます。

 1970年代に設計・建造された「Hermod」と姉妹船「Balder」は、オフショア建設業界でこの種の最初の半潜水クレーン船。半潜水式クレーン船のコンセプトは、過酷な北海環境での操作性を高め、さらに優れた持ち上げ能力を提供することを目的として開発されました。これにより、従来のクレーン船よりも速く、より多くの期間作業することが可能となった。

Wikipedia

Semi submersible crane vessel (SSCV) Hermod was constructed in 1979 by Mitsui Engineering & Shipbuilding Co., Ltd.

(半潜水型クレーン船 (SSCV) Hermod は、1979 年に三井造船株式会社によって建造されました。)

Hermod (ship) – Wikipedia
Heeremaのウェブサイト

After delivery by the Japanese Mitsui yard in 1978, Hermod’s first job was the installation of the Piper A platform on the United Kingdom Continental Shelf.

(1978 年に日本の三井造船によって引き渡された後、Hermod の最初の仕事は、英国大陸棚にパイパー A プラットフォームを設置することでした。)

Well-deserved retirement of Hermod (heerema.com)
スポンサーリンク

最初の仕事はパイパーAプラットフォームの設置

 1978年に三井造船で建造された「Hermod」の初陣はスコットランドのアバディーンから沖合約180kmのパイパーAプラットフォームの設置。

「Hermod」パイパーAプラットフォームの設置
出典:Heerema
パイパーAプラットフォームの位置
後に爆発と火災により壊滅

「Hermod」は事故との関係はありませんが、情報として。

 1988年7月6日、パイパーAプラットフォーム爆発と火災が発生。事故当時プラットフォーム上にいた226人のうち165人と救助作業にあたっていた2人が死亡するという大惨事が起きた。

スポンサーリンク

作業した国は25カ国以上

1986年 タンデムリフトによる北海のL-13プラットフォーム設置
出典:Heerema
設置完了後のL-13プラットフォーム

 「Hermod」は80年代半ばにブラジルでのプロジェクトを皮切りに北海以外の場所でも作業を実施。メキシコ湾、東南アジア、アフリカでプロジェクトを行い、その実績は25カ国以上にものぼる。そして作業当時、初となる数々のプロジェクトに携わった。

「Hermod」による初の冠詞がつく実績
  • 1984年 「Balder」と共同で最初の北海Tension Leg Platform(Hutton)を設置
  • 1992年 メキシコ湾(Auger)初のTLP、深海基礎杭を水深870メートルに設置。
  • 2008年 アンゴラに世界最大のシングルピース基礎杭(直径2.7m、長さ190m、重量850トン)からなるTombua Landana準拠タワー基礎を設置。
  • 英国初の大型プラットフォーム、North West Huttonを2008/09年に撤去。
スポンサーリンク

吊り上げ記録は6,287トン

Peregrinoトップサイド設置(重量:6,287トン)

 「Hermod」が携わった数々のプロジェクトの中で最大重量は、6,287トン。

 2010年にブラジルで設置したPeregrinoトップサイド。

搭載されている2基のクレーンは同じではない
(左)姉妹船の6,300トン吊り「Balder」と(右)8,100トン吊り「Hermod」
出典:Heerema

 画像をよく見ると分かりますが、搭載されている2基のクレーンは大きさが異なる。建造当時は2,700トン吊り、1,800トン吊りのクレーンが設置されていましたが、1984年にアップグレード。それぞれ、4,500トン吊りと3,600トン吊りのクレーンが搭載されました。

 ちなみに、画像左に写る姉妹船の6,300トン吊り「Balder」は、3,600トン吊りと2,700トン吊りのクレーンが搭載されています。

スポンサーリンク

「Hermod」引退の記事

BORKUM RIFFGRUND 2の洋上変電所ジャケット設置(重量:1,700トン)
出典:Heerema

 2017年9月7日に発表されたHeerema Marine Contractorsの記事。

Well-deserved retirement of Hermod | Published on September 7, 2017

(Hermodの享受されるべき引退 | 2017 年 9 月 7 日公開)

Well-deserved retirement of Hermod (heerema.com)
スポンサーリンク

重量55,000トンの「Hermod」を運ぶ

半潜水式運搬船「BOKA VANGUARD」に搭載された「Hermod」
出典:Heerema

 オランダから解体される中国への運搬は、半潜水式運搬船「BOKA VANGUARD」に搭載して行われました。

 「Hermod」の重量にあたる排水トン数は55,000トン。それに対して半潜水式運搬船「BOKA VANGUARD」の載貨重量トン数は116,175トンなので問題なく運搬可能。

「Hermod」を半潜水式運搬船に積み込む動画
スポンサーリンク

そして解体へ

 「Hermod」の解体場所として選ばれたのは中国の浙江省 舟山市 定海区にある舟山長宏国際船舶再生利用有限公司(Zhoushan Changhong International Shipping Recycle)。

 解体される「Hermod」の約98%がリサイクルされ、再利用されるそうです。

 2009年5月に採択された「2009年の船舶の安全かつ環境上適正な再生利用のための香港国際条約」、通称シップリサイクル条約や「シップリサイクルに関する欧州規則(EU-SRR)」に従い、安全かつ責任ある方法で解体。

理想的な生き方

 新造船として誕生する船がいる裏には、こうして廃船となり現役を引退する船もいる。

 廃船というと少し悲しく暗いイメージがありますが、「Hermod」はそんな感じがしないですね。約40年もの長きに渡り活躍した後、廃船となり解体されリサイクルされる。持てる力を全て出し切って人生を全うし、悔いは無いみたいな。言わば船として理想的な生き方みたいな感じがします。

姉妹船「Balder」、まだ現役

 「Hermod」と同時期に建造された姉妹船「Balder」は、まだまだ現役。

6,300トン吊り「Balder」
出典:Heerema
スポンサーリンク
興味深い海の世界

あらゆるものが巨大な海の世界。
なかでもインパクトの強い画像を中心に海の世界を紹介。

スポンサーリンク
世界のサルベージ オペレーション

来島海峡で水深60mの海底に沈んだ全長約170mの「白虎」引き揚げをはじめ、日本国内でも多くのサルベージオペレーションがおこなわれています。
世界各地で実施されている困難なサルベージの数々を紹介。

Crane1000をもっと見る

今すぐ購読し、続きを読んで、すべてのアーカイブにアクセスしましょう。

続きを読む

タイトルとURLをコピーしました