ジョーンズ法対応の風力設置船、輸送船を接続するロックシステムとは?
Maersk Offshore Windは、シンガポールのSeatriumで建造している風力設置船(WIV,Wind Installation Vessel)に専用輸送船をドッキングする画期的なロックシステムが設置されたことを発表しました。
Maersk Offshore Windの風力設置船は、アメリカのジョーンズ法に対応した機能を搭載しているという今までにない珍しい仕様のSEP起重機船。船尾側にコの字型の切り欠きが設けられており、その部分にジョーンズ法に準拠した専用輸送船を係留して必要な部材を輸送。輸送船上のトレイに積まれた風力タービン部材をトレイごとリフトアップして荷受けするという仕組み。
公開された画像には、輸送船をドッキングエリアに誘導するフェンダーや荷受けする時に動揺を低減させるための輸送船を水中に押し込んで固定するピストンが確認できます。専用船で輸送した部材を荷受けするためのトレイ昇降設備は、貨物昇降時の最大重量5,000トン。輸送台船を下に押し込んで船体動揺を低減するジャッキ4基のストロークは2m、押し込み容量は9,200トン(アクティブ)、14,400トン(パッシブ)。
この状態で作業するんでしょうけど、船底から飛び出ている設備を航行時に格納できるのかは不明。波高2.5mという状況下でも安定性を確保できるということですが、毎回の施工が難易度の高い作業になりそうで少し不安。なので実際に施工をおこなう場面を見てみないと、安心して運用できる設備なのか判断できないようにも思います。
風力設置船は、2025年内に引き渡しがおこなわれる予定。アメリカのボリンジャー造船所(Bollinger Shipyards)で建造している専用輸送船は、2026年に引き渡し予定。

- 輸送船をドッキングエリアに誘導するフェンダー
- 輸送船を水中に押し込み、固定するピストン
- スラスター
アメリカのジョーンズ法について
アメリカのジョーンズ法による洋上風力建設への影響
アメリカ国内の地点間における国内輸送(内航)をおこなう船舶を限定するジョーンズ法と呼ばれる法律。その要件には米国船籍、米国人配乗、米国人所有に加えて、他国には無い米国建造という要件が含まれており、洋上風力発電所建設時の大きな障壁となっている。
- 米国船籍
- 米国人配乗
- 米国人所有
- 米国建造
ジョーンズ法の影響を受ける風力タービン設置作業では、SEP船など他国建造の設置船甲板に部材を積み込みして拠点港から設置場所へ運ぶことが出来ないため、ジョーンズ法に準拠した船舶で運搬する方法以外にも様々な対策が考えられている。
風力設置船自体はシンガポールで建造しているため、”米国建造”というジョーンズ法の要件を満たしていません。専用輸送船については、アメリカ国内で建造しているためジョーンズ法に準拠している。
Maersk Offshore Windの風力設置船

船名 | 未発表 |
クレーン能力 | 1,900トン |
揚程 | 180m |
長さ | 143m |
幅 | 83.2m |
深さ | 11m |
レグ長さ | 118m |
スラスター | アジマス 4,300kW×6基 トンネル 900kW×2基 |
DPS | DP2 |
速力 | 7ノット |
甲板面積 | 4,000m2 |
甲板強度 | 7.5トン/m2 |
宿泊設備 | 100人 |
船籍 | デンマーク |
風力設置船の船体寸法は長さ143m、幅83.2m、深さ11m。メインクレーンの最大吊り上げ能力は1,900トンで揚程180m(甲板上)のメインフックに加え、揚程190mの300トン吊り補助フックを備えている。
- 貨物昇降時の最大重量:5,000トン
- バージ押し込み量:2m
- 押し込み容量:9,200トン(アクティブ)、14,400トン(パッシブ)
- ジャッキ数:4基
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