波浪警報発令中の防波堤上で作業員が高波にさらわれ転落、死亡事故
2024年2月28日夕方、八戸港の防波堤上で作業していた作業員が高波にさらわれて海に転落し、死亡する事故が発生。
報道されている情報によると、事故当時は高波で流された排砂管を八戸港の八太郎北防波堤に固定する作業をおこなっていたようです。排砂管の固定には揚錨船「第58青木丸」を使用し、船側と防波堤側に分かれて12人で作業を実施していたという。しかし、事故が起きた時の八戸港には波浪警報が発令されていました。
排砂管を固定するため防波堤上で作業をおこなっていた作業員の1人が高波に足をとられ、防波堤上から海に転落。他の作業員に引き揚げられて八戸市内の病院に運ばれましたが、死亡が確認されたという。ほかにも防波堤にいた別の1人と船上にいた5人の作業員もけがをしましたが、命に別状はないそうです。
揚錨船「第58青木丸」
船名 | 第58青木丸 |
総トン数 | 74トン |
揚錨定格荷重 | 12.9トン |
長さ | 21.5m |
幅 | 9m |
深さ | 2.7m |
事故当時の波高は6m
事故発生時、八戸市には波浪警報が発令されていました。気象庁(各気象台)が発表する警報・注意報の基準は地域によって異なります。波浪警報は、高波による遭難や沿岸施設の被害など重大な災害が発生するおそれがあり、八戸市の基準では有義波高6m以上が予想される時に発表される。
国土交通省港湾局 全国港湾海洋波浪情報網 ナウファスで閲覧できる波浪実況データを見ると、事故前日の2月27日から事故が起きた28日まで、ずっと有義波高は約6mの状態であったことが確認できる。
事故の引き金となった排砂管とは?
事故は排砂管を防波堤に固定する作業中に発生したようですが、一体「排砂管」とは何なのか?
国土交通省 東北地方整備局 秋田港湾事務所のホームページの概要図によると、ポンプ浚渫船で吸い上げた土砂を排土する場所へ運ぶための配管。そして、海上部分に設置する排砂管の下には海面上に浮かべるためのフローターが取り付けられている。
Googleマップの航空写真で八戸港の八郎太北防波堤を見ると、停泊しているポンプ浚渫船「第三拓洋丸」の近くには長さ約200mの状態で連結した排砂管が2本確認できます。Googleマップ航空写真の画像と事故が起きた時の状態は異なると思いますが、恐らく似たような状態で防波堤内側に係留・仮置きしていたのではないでしょうか。
フローターが防波堤に接触していると波の動揺で破損するため、防波堤から少し離した状態で方塊ブロックや小さなアンカーを反力にして係留していたところ、想像以上の波浪によってブロックやアンカーがひけた又は係留索が破断したため排砂管が流されたと想像出来る。
2月29日に東北地方整備局は事故調査委員会を設置
事故については、八戸海上保安部が事故の原因などを調べているほか、東北地方整備局も2月29日に事故調査委員会を設置しています。
今回の事故が起きた状況として、急な天候悪化という訳ではなく、悪天候によって破損した設備を復旧する作業の中で事故が発生している。荒天により排砂管が流れ始めたことを確認した後、作業員の方が勝手に作業をおこなったとは考えにくい。誰のどのような指示を受けて作業がおこなわれたのか、真相を究明し原因を明らかにする必要がある。
【報道情報】フェリー航路をふさぐ恐れ、作業できると判断
【詳報】工事受注の会社「港内に『うねり』なく『作業ができる』と判断」 波浪警報発令中の海で作業中の男性(40)が波にさらわれて死亡の事故 八戸港(2024年2月29日(木) 18:00)
(抜粋)
現場は八戸港フェリーターミナルの北側の防波堤で、フェリーの航路にもなっていて、配管が海に漂って航路をふさぐ恐れがあったため、作業が行われたということです。
当時、八戸市には波浪警報が出されていて、八戸海上保安部などによりますと、工事を受注した会社には作業を中止する基準はありましたが、港内にはうねりがなく、作業ができると判断したということです。
ATV青森テレビ | https://newsdig.tbs.co.jp/articles/atv/1027234?display=1
ATV青森テレビの報道記事には目を疑うような内容が書かれていました。
排砂管が流れたことによってフェリー航路をふさぐ可能性が考えられたため作業をおこなう必要があった、という部分は理解できます。しかし、港内にうねりがなく作業できると判断した、というのは考えられない。単に自身の保身から出た言葉としか思えない。排砂管の漂流を防ぐという目的を達成するためには他の手段もあっただろうに。結果的に波が越波している状況のなか、作業員の方を防波堤上で作業させるというリスクの高い作業方法を選んだ責任は重い。
よく読まれている記事