福島第一原子力発電所で建設を進めているトリチウムなどの放射性物質を含む処理水を海に放出する施設のうち、海底トンネルの出口にあたる放水口ケーソン設置が完了。沖合1kmで設置作業を行ったのは寄神建設㈱が所有する1,600トン吊りクレーン船「神翔-1600」。
福島第一原発で処理水放水トンネルの放水口ケーソン設置完了
2022年11月18日、福島第一原子力発電所で建設を進めているトリチウムなどの放射性物質を含む処理水を海に放出する施設のうち、海底トンネルの出口にあたる放水口ケーソン設置が完了した。沖合1kmの海中に沈めて設置した放水口ケーソンの大きさは、□9m×12m、高さ10mのコンクリート製で重量は約800トン。放水口ケーソン上部には高さ約15mの測量櫓が取り付けられていて、陸上から測量するために据え付ける高さまでケーソンを沈めても水面上に3m程度飛び出る仕組みになっている。
東京電力によると、海底トンネルは陸側からおよそ600mまで掘り進められていて、東京電力は来年春ごろからの処理水の放出開始を目指していますが、気象条件によっては、工事の完了が来年夏ごろにずれ込む可能性があるそうです。
その前に処理水を放出することへの理解を得る努力をもっと積極的におこなうべきかもしれません。
放水口ケーソン設置作業を行ったクレーン船「神翔-1600」
約800トンの放水口ケーソン設置を行ったクレーン船は1,600トン吊りの「神翔-1600」。1993年に建造され、旋回式のクレーン船では2,500トン吊り「Blue Wind」、1,800トン吊り「第一豊号」に次いで国内3番目の大きさ。
船名 | 神翔-1600 |
クレーン能力 | 1,600トン |
長さ | 95m |
幅 | 45m |
深さ | 7m |
建造年 | 1993年 |
海底トンネル工事 今後の予定
東京電力ホールディングス(TEPCO)のホームページに記載されている情報によると、放水口ケーソン据付終了後にケーソン周囲の埋め戻しを行うそうです。埋め戻し材に使われるのはモルタルとコンクリート。埋め戻しを行う高さ約10mのうち、下層約6mはモルタル、上層約4mはコンクリートを打設。
それぞれ特殊な水中不分離性のモルタルとコンクリートで、水中に打設した時の分離抵抗性が高く自己充填する特性から締固めが不要。参考図に記載されている寸法から打設数量を計算すると
打設数量 8,320m3 – 990m3(ケーソン体積) = 7,330m3
結構なボリュームですね。ただ、浚渫船で岩盤掘削した場所の埋め戻しなので、かなり食い込む可能性がある。1割食い込むだけで8,000m3は超えてしまいます。
参考図に記載されている図面で打設しているコンクリートミキサー船は「関栄」。AIS情報を調べてみると近くの小名浜港にいるので間違いなさそう。小名浜港から福島第一原子力発電所までは約63km(約34マイル)。
コンクリートミキサー船「関栄」
山口県下関市に本社を置く関門港湾建設株式会社が所有する「関栄」は、2018年に建造された最新のコンクリートミキサー船。骨材の搬送はベルコン方式で、船体画像に映る黄色の供給ホッパーから骨材受け入れを行う。練り混ぜを行うミキサー容量は大容量の3m3/B。掲載されている型式からメーカーサイトで調べるとミキサーの練り混ぜるシャフトは2軸ではなく1軸かも。練り混ぜるブレードの形状と配置が特殊で高性能。少し前の強制2軸練りミキサーより練り時間が短いようです。
最新のプラント設備以外にも大型ミキサー車やポンプ車を直接乗り入れ可能なランプウェイが搭載されていたり、自動で船体の傾きを調整するバラスト自動調整装置、□1.3m×1.3m・長さ25mのスパッドも搭載されている。なかでも特徴的なのは、海水から練り混ぜ用の淡水を製造する海水淡水化装置。1日で100トンの淡水を製造可能。
船名 | 関栄 |
長さ | 66m |
幅 | 24m |
深さ | 6m |
建造年 | 2018年 |
ミキサー容量 | 3.0m3/B |
打設ブーム長 | 30m |
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