商船三井ドライバルク運航船7隻に風力推進補助装置を搭載
2024年5月27日、商船三井とグループ会社である商船三井ドライバルクは新造ばら積み船および多目的船 計7隻へウインドチャレンジャー(硬翼帆式風力推進装置)を含む風力推進補助装置を搭載する方針を決定したと発表。
風力推進補助装置の搭載を決めた商船三井ドライバルク運航船7隻のうち、新造ばら積み船6隻にウインドチャレンジャーを1本ずつ搭載する方針を決定。新造船6隻のうち3隻については大島造船所と建造契約を締結し、残りの3隻についても、建造契約締結に向けた準備をおこなっているという。加えて、商船三井ドライバルクが定期用船を予定している2025年竣工予定の新造多目的船1隻に対して、EconoWind B.V.製の風力推進補助装置「ヴェントフォイル」(VentoFoil)2本の搭載を決定。
2022年10月に竣工した石炭輸送船「松風丸」、大島造船所で建造している2024年6月竣工予定のばら積み貨物船、石炭輸送船「KUROTAKISAN MARU Ⅲ」の3隻に加えて、今回発表の新造船6隻を合わせると商船三井グループでウインドチャレンジャー搭載船は9隻。ローターセイル、ヴェントフォイル搭載船を含む風力推進補助装置搭載船は11隻となる。
商船三井は、2050年までのネットゼロ・エミッション達成を目標に定めており、ウインドチャレンジャー搭載船を2030年までに25隻、2035年までに80隻投入することを計画。
船種など | 隻数 | 竣工年 | 風力推進補助装置 |
---|---|---|---|
100型石炭輸送船「松風丸」 | 1 | 2022年10月 | ウインドチャレンジャー |
64型ウルトラマックスばら積み船 | 1 | 2024年6月 予定 | ウインドチャレンジャー |
90型石炭輸送船(既存船)「黒滝山丸Ⅲ」 | 1 | 2025年 改造完了予定 | ウインドチャレンジャー |
42型ハンディサイズばら積み船 | 3 | 不明 | ウインドチャレンジャー |
58型ハンディマックスばら積み船 | 3 | 不明 | ウインドチャレンジャー |
200型鉄鉱石輸送船(既存船) | 1 | 2024年 改造完了予定 | ローターセイル |
17.5型多目的船 | 1 | 2025年 予定 | ヴェントフォイル |
既存船へのウインドチャレンジャー搭載は2025年後半を予定
2024年5月24日、商船三井と電源開発は石炭輸送船「KUROTAKISAN MARU Ⅲ(黒滝山丸Ⅲ)」に対して、風力を推進力として活用するウインドチャレンジャー(硬翼帆式推進装置)を搭載することに合意したと発表。搭載は、2025年後半を予定している。
「KUROTAKISAN MARU Ⅲ」は電源開発の発電用石炭輸送に従事しており、既存船を改造してウインドチャレンジャーを搭載するのは世界初の事例。ウインドチャレンジャー導入による燃料節減および温室効果ガス削減効果は、従来の同型船と比較して日本-豪州航路で約5%、日本-北米西岸航路で約8%を見込んでいるそうです。
ウインドチャレンジャーを初めて搭載したのは、2022年10月に竣工した石炭輸送船「松風丸」。そして、新造船への搭載2隻目となるばら積み貨物船を大島造船所で現在建造しており、2024年6月に竣工予定。
石炭輸送船「KUROTAKISAN MARU Ⅲ」(黒滝山丸Ⅲ)
船名 | 黒滝山丸Ⅲ |
総トン数 | 51,793トン |
載貨重量トン | 89,999トン |
長さ | 234.96m |
幅 | 38m |
深さ | 20m |
建造場所 | 大島造船所 |
船籍 | パナマ |
建造年 | 2021年12月 |
出典:MarineTraffic | Max Wei
軽量化を追求したウインドチャレンジャーはGFRP製
出典:Mitsui O.S.K.Lines
ウインドチャレンジャーは、商船三井と大島造船所が中心となり開発した、伸縮可能な帆(硬翼帆)によって風力エネルギーを船の推進力に変換する装置。
商船に積載できる貨物量に影響を及ぼさないためには、帆をいかに軽量化できるかが重要であることから硬翼帆の材質はGFRP(Glass Fiber Reinforced Plastic:ガラス製繊維強化プラスチック)を採用。軽量化により、帆全体の面積を大きくすることが可能となり、推力への利用を最大化することができることに加え、ウインドチャレンジャーを設置することによる船のバランスへの影響を最小化し、運用上の安全性を飛躍的に高めている。
ウインドチャレンジャーは4段式の伸縮構造になっており、幅は15mで断面は三日月形。縮めた状態で高さ約23m、伸ばすと最大で高さ53mに達する。全展開時の表面積は約800m2。
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