自航式5,000トン吊りクレーン船「中天39」吊り上げ試験完了
2024年4月6日、上海振華重工(ZPMC)が立洋海工向けに建造している自航式5,000トン吊りクレーン船「中天39」(Zhong Tian 39)の吊り上げ試験が実施され、無事に完了。
クレーン船「中天39」は、2024年1月に海上公試(SEA TRIAL)を終えて完成に向けて最終段階に入っていることが報じられていましたが、まだ引き渡しされていないようです。当初、2月に引き渡し予定だったのが遅れている理由は、ユーザーからクレーン能力を向上させる要求があったためだという。
間もなく引き渡しという段階での仕様変更。聞いただけでも大変そうだというのが分かりますが、最短の工程で尚且つ最小限の修正コストにより要求を満足した上でクレーン試験を通過。急な変更なので安全面に不安な点もありますが、中国船級協会立ち合いのもと様々な条件で吊り上げ試験がおこなわれたそうです。
船尾固定吊りの最大作業半径を40m→45mへ
クレーンの仕様変更内容は、5,000トンの吊り上げ能力を発揮する船尾固定吊りの状態で作業半径を40mから45mへ増加させるというもの。
中国の報道記事によると、ユーザーから変更の要求があったのは2024年1月だという。クレーン船「中天39」は2022年11月に建造開始、2023年10月末に進水、11月にクレーン搭載、そして2024年1月に海上公試を完了。変更要求があった時点で既にクレーンの搭載は完了しており、引き渡し間近という段階。
上海振華重工の設計チームは、すべてのパラメータを包括的に検討し、新しい作業条件の要件に従って既存構造を基に全体性能を向上させる設計計画を作成。さらに、修正期間中も設計チームは船級協会との効率的なコミュニケーションを維持。より短い時間と最小限の修正コストで能力増強工程を完了させて中国船級協会の承認を取得したという。
最大吊り上げ重量は増えていませんが、作業半径が増加しているためモーメント荷重が増加。それに伴いクレーン構造の補強や船体補強など多岐にわたる修正・検証が必要になる複雑な作業。
クレーン船「中天39」は韓国企業が長期傭船予定
韓国のKOCECOは、中国の江蘇中天科技股份有限公司と洋上風力向け設置船5隻の傭船に関する覚書(MOU)を締結しています。その5隻の中には、5,000トン吊りクレーン船「中天39」も含まれており、今回の作業半径増加の要求をおこなったユーザーというのは韓国企業だったのかもしれません。
自航式5,000トン吊りクレーン船「中天39」の概要
クレーン船「中天39」は、長さ215m、幅51.8m、深さ19m、最大喫水14m。固定吊りで最大5,000トン、旋回で3,500吊りのクレーンを搭載し、自航式で設計速力は9ノット。3,000kWのアジマススラスター×3基、3,000kWのトンネルスラスター×3基が備えられ、DP1の自動船位保持装置を搭載。
完成後は、主に洋上風力建設プロジェクトでの作業が想定されている。なかでもモノパイルやジャケットなど15MW以上の風力タービン基礎や洋上変電所の設置が期待されているそうです。
船名 | 中天39 |
クレーン能力 | 固定:5,000トン 旋回:3,500トン |
揚程 | 甲板上120m |
長さ | 215m |
幅 | 51.8m |
深さ | 19m |
甲板スペース | 4,000m2 |
甲板強度 | 15トン/m2 |
設計速力 | 9ノット |
DPS | DP1 |
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