五洋建設が洋上風力向け大型起重機船とケーブル敷設船の建造詳細発表

五洋建設が洋上風力向け大型起重機船とケーブル敷設船の建造詳細発表 洋上風力発電
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五洋建設が洋上風力向け大型起重機船とケーブル敷設船の建造詳細発表

2024年12月10日、五洋建設は開催した取締役会において洋上風力建設に用いる作業船への設備投資として、大型基礎施工船とケーブル敷設船合わせて約790億円の設備投資をおこなうことを決議したと発表。

容量5,000トンのカルーセル2基を搭載する大型自航式ケーブル敷設船については、12月3日にシンガポールのPaxOcean Groupと建造契約を締結したと明らかにしており、2028年2月に完成・引き渡し予定。5,000トン吊りのメインクレーンを搭載する大型基礎施工船(HLV,Heavy Lift Vessel)は、2025年1月にシンガポールのSeatriumと2025年1月に建造契約をおこない、完成・引き渡しは2028年3月の予定。

建造船船体建造建造契約完成・引き渡し
大型基礎施工船(HLV)Seatrium
(シンガポール)
2025年1月(予定)2028年3月(予定)
ケーブル敷設船(CLV)PaxOcean Group
(シンガポール)
2024年12月3日2028年2月(予定)

大型基礎施工船の建造費は1,200億円

五洋建設のプレスリリースによると、建造予定の大型基礎施工船とケーブル敷設船は設立予定の子会社と芙蓉ふよう総合リース株式会社で共同保有するという。ケーブル敷設船に搭載するケーブルトレンチャーおよびワークROVについては、設立予定の子会社と株式会社小島組共同保有し、ケーブル敷設船の運航についても株式会社小島組に運航管理を委託する予定。

建造費用は、大型基礎施工船 約1,200億円、ケーブル敷設船 約310億円、ケーブルトレンチャーおよびワークROV 約55億円。合計約1,565億円のおよそ半分にあたる約790億円を五洋建設が出資。

大型基礎施工船の建造費用1,200億円というと世界最大の20,000トン吊りクレーン船「Sleipnir」と同じなので、少し高いような印象。Huisman製のモノパイル建て起こし装置を搭載することが記載されているので、諸々の装備品や日本への回航費などを含めるとそこまで金額が膨らんでしまうのでしょうか。それにしてもスゴイ金額。

大型基礎施工船(HLV)

5,000トン吊り自航式大型起重機船
出典:PENTA-OCEAN CONSTRUCTION
船籍日本
船級登録ClassNK
クレーン能力5,000トン
DPSDPS2
カーボンニュートラル対応バッテリー蓄電システム
メタノールレディー
基本設計Ulstein(オランダ)
船体建造Seatrium(シンガポール)
メインクレーン
MP立起し装置等
Huisman(オランダ)

大型基礎施工船は最大5,000トン吊りのクレーンを搭載しており、風力タービン大型化に伴って重量が増加する基礎のモノパイル施工に対応。重量3,000トンクラスのモノパイル設置を想定し、15MW~20MWクラスの風力タービン基礎(モノパイル)を安全かつ効率的に施工することが出来るという。

個人的な感想として大きなクレーンよりも魅力的に見えたのは、公表された完成イメージを見た瞬間に船体設計がUlsteinであると判別できるくらい特徴的な船首形状。これは「ULSTEIN X-BOW」という船首形状で波による速度損失が低減され、速力の向上や燃料消費の削減につながる効果があるとされています。

これまでに「ULSTEIN X-BOW」を採用し、引き渡された大型クレーン船は見たことがないので五洋建設が建造する大型基礎施工船が世界初になるかもしれません。しかし、2023年4月にシンガポールに本社を置くCyan RenewablesがUlsteinと基礎設置船の設計について契約をおこなったと発表されているため、こちらの進捗具合によっては世界初の「ULSTEIN X-BOW」搭載大型クレーン船とはならないかもしれません。

ULSTEIN X-BOWとは?

ULSTEIN X-BOWとは、inverted bow(逆船首)と呼ばれる船首の形をコンセプトとして設計され、斧のような外観が特徴的な船首形状。

ULSTEIN X-BOWを最初に導入した「Bourbon Orca」
出典:Ulstein

 荒天航行時に船首が水面上に出てしまう事が少ないのでスラミングと呼ばれる船体が水面に叩きつけられる現象が起こりにくい。さらに、波による速度損失が低減され、速力の向上や燃料消費の削減につながるという効果がある。

 ULSTEIN X-BOWを最初に導入したのは、2006年に建造されたAHTS(Anchor Handling Tug Supply)の「Bourbon Orca」。

自航式ケーブル敷設船(CLV)

大型自航式ケーブル敷設船
出典:PENTA-OCEAN CONSTRUCTION
船籍日本
船級登録ClassNK
電力ケーブルタンク容量5,000トン×2
DPSDPS2
カーボンニュートラル対応バッテリー蓄電システム
メタノールレディー
基本設計Salt Ship Design(ノルウェー)
船体建造PaxOcean Group(シンガポール)
トレンチャー(埋設機)
ワークROV
SMD(イギリス)

風車建設工事から電力ケーブル敷設工事へと事業を拡大するため、一般海域はもとより将来のEEZにおける洋上風力建設を見据えて、世界最大級かつ最新鋭の大型ケーブル敷設船(CLV)を建造。

船体寸法などは明らかにされていませんが、ケーブル敷設船としての主要スペックとなるケーブルタンク容量は5,000トン×2基。

東洋建設が2024年7月にルーマニアのVARD Brăila Shipyardで建造を開始した自航式ケーブル敷設船は、全長150mでケーブル容量9,000トン。こちらはケーブル敷設以外にも着床式基礎工事や浮体式洋上風力係留工事など多目的な運用を想定しているので少しコンセプトに差があるようです。

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