石狩湾新港洋上風力で工事本格化、現場の様子を報道公開
国内最大級 石狩湾新港沖洋上風力発電プロジェクト工事本格化
https://www3.nhk.or.jp/sapporo-news/20230608/7000058164.html
2023年6月8日、石狩湾新港の沖合で国内最大級の洋上風力発電プロジェクトの工事が本格化し、現場の様子が報道陣に公開されました。「石狩湾新港洋上風力発電所」では、Siemens Gamesaの出力8MW風力タービン「SG 8.0-167 DD」を14基設置する計画で、風力タービン基礎の形状はこれまでに国内で建設された秋田洋上風力や入善洋上風力で採用されていた基礎形状のモノパイルとは異なるジャケット式を採用している。
ジャケット式基礎の設置にあたっては先行して基礎杭の打設が行われ、ジャケット1基に対して4本、全14基で合計56本の基礎杭を打設。作業を行ったのは、森長組の1,800トン吊りクレーン船「第一豊号」。
ジャケット設置は深田サルベージ建設の起重機船「金剛」
今回の報道公開された情報で、ジャケット設置を深田サルベージ建設の起重機船「金剛」が行っているということが分かりました。起重機船「金剛」は最大2,050トン吊り、搭載されているメインフックは1,025トン吊りが2基でブーム先端の補助フックは200トン吊り。石狩湾新港の基礎ジャケット重量は約750トンなので施工は問題なさそうです。ジャケットは日鉄エンジニアリングの北九州市にある若松工場で14基の製作が行われました。
国内最⼤規模の洋上⾵⼒と蓄電池を保有する洋上風力発電所
まだ国内で建設されている商用規模の洋上風力発電所は多くありませんが、「石狩湾新港洋上風力発電所」で設置する予定の風力タービンは出力8MWで設置を開始している中では最大。ですが、4月末に起工式が行われた「北九州響灘洋上ウインドファーム」で設置する予定の風力タービンは9.5MW。世界的に洋上風力発電所のスケールアップは加速していますが、国内の洋上風力でも同様の現象が短いスパンで起きていることが分かります。
発電所名称 | 発電容量 | 単機出力 | 風車基礎 | 運転開始 |
秋田港洋上風力発電所 | 54.6MW | 4.2MW | 着床式、モノパイル | 2023年1月 |
能代港洋上風力発電所 | 84MW | 4.2MW | 着床式、モノパイル | 2022年12月 |
入善洋上風力発電所 | 9MW | 3MW | 着床式、モノパイル | 2023年9月(予定) |
石狩湾新港洋上風力発電所 | 112MW | 8MW | 着床式、ジャケット | 2023年12月(予定) |
五島市沖洋上風力発電所 | 16.8MW | 2.1MW | 浮体式、スパー | 2024年1月(予定) |
北九州響灘洋上ウインドファーム | 220MW | 9.5MW | 着床式、ジャケット | 2025年度(予定) |
「石狩湾新港洋上風力発電所」には国内最大規模となる発電容量の他にも洋上風力で発電した電力を陸上で蓄電する設備を保有するという特徴があります。洋上風力による出力が発電所の出力を上回る時は蓄電池に充電し、逆に洋上風力による出力が発電所の出力を下回る時は蓄電池から放電してその差を補うという電力ロスが出ない仕組みを採用している、というと聞こえはいいですが、蓄電池に電力を蓄電する根本的な理由・原因は電力需給事情や電力系統による制約で発電した電力を全量使い切ることが出来ない時間帯が長いからだという。
ただ、大型蓄電施設を設置しても余剰電力が相当量発生するらしく、その余剰電力を利用して水素サプライチェーン構築の事業実現性及び実証事業の検討も行うという。
風力タービン設置は清水建設のSEP船「BLUE WIND」
「石狩湾新港洋上風力発電所」で8MWの風車設置を行うのは、つい先日、入善洋上風力発電所で風力タービン設置を完了した清水建設のSEP起重機船「BLUE WIND」。建造時の説明では15MW級の風力タービン設置が可能と謳っているので、施工自体は問題ないと思われる。注目すべきは施工速度。入善では非常にゆっくりとしたペースで施工を進めていましたが、いつまでも同様のペースで施工することは出来ない。安全・確実は大前提、石狩湾新港ではプロの施工を見せて欲しい。
報道されている情報によると、風力タービンの建設工事は、地元漁協との取り決めで秋さけ漁が始まる前までに終えることになっているという。なので8月までに14基すべての設置を終えることが至上命令となる。
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