2,500トン吊りSEP起重機船「BLUE WIND」

 建造費400億円、技術開発などのコストを含めると約500億円という巨額を投じてスーパーゼネコンの清水建設が建造した自航式SEP起重機船「BLUE WIND」。搭載しているクレーンは、世界最大クラスの2,500トン吊り

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2,500トン吊り「BLUE WIND」

清水建設が建造した2,500トン吊りSEP起重機船「BLUE WIND」
出典:Japan Marine United Corporation

 2019年7月に ”世界最大級・高効率の自航式SEP船を建造” と銘打って発表され、清水建設が建造したSEP起重機船「BLUE WIND」。搭載されているクレーン能力や設備は世界のSEP起重機船の中でも最先端と言えるもの。あとは動かす人次第。

船名BLUE WIND
クレーン能力2,500トン
揚重高さ(2,500トン仕様)116.5m
揚重高さ(1,250トン仕様)158.5m
長さ142m
50m
深さ11m
喫水6.2m
総トン数28,000トン
DPSDP2
建造年2022年
搭載可能重量10,000トン
デッキ強度10t/m2
デッキスペース4,600m2
レグ長さ90m(最大109m)
スパッドカン160m2
アジマススラスター3,800kw(5,167ps)×3
3,200kw(4,351ps)×1
トンネルスラスター3,200kw(4,351ps)×2
最大航行速度11ノット
最大乗船人数130名
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Vessel History

SEP起重機船「BLUE WIND」
  • 2019年7月
    建造を発表

    建造費400億円、技術開発などのコストを含めると約500億円

  • 2020年12月
    First steel cutting 鉄鋼切断式

    ジャパン・マリン・ユナイテッド呉事業所で建造に着工

  • 2021年11月
    進水

    この時点ではメインクレーンの搭載はまだ行われていない

  • 2022年1月
    2,500トン吊りテレスコピッククレーン搭載

    深田サルベージ建設の2,200トン吊り起重機船「駿河」で設置

  • 2022年10月
    完成・引き渡し

    JMUアムテック(兵庫県相生市)で命名式が行われ、以降は広島県江田島・呉付近を中心に習熟訓練など施工に向けた準備を進める

  • 2023年4月
    ⼊善洋上⾵⼒発電所で施工(初作業)

    富山県沖の⼊善洋上⾵⼒発電所で出力3MW×3基の着床式洋上風車設置

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「BLUE WIND」の特徴

 国内のSEP起重機船では、最大の吊り上げ能力を誇るクレーンを搭載している「BLUE WIND」ですが、他にも注目すべき特徴がある。

SEP起重機船「BLUE WIND」の特徴
  • SEP船としては国内初の自航式
  • 世界最大クラスの2,500トン吊りクレーン
  • 伸縮するテレスコピッククレーン

日本の作業船では珍しい自航式

「BLUE WIND」船尾に搭載された3,800kw×3基のアジマススラスター
出典:SHIMIZU CORPORATION

 日本国内のクレーン船・起重機船でプロペラなどの推進器を搭載しているものは99.9%いない。国内に大小のクレーン船・起重機船・クレーン付き台船が何隻いるか分かりませんが、数千隻は下らないはず。その中で知っている限り、自航式のクレーン船は五洋建設の「CP-5001」と東洋建設の「AUGUST EXPLORER」の2隻のみ。

500トン吊り自航式クレーン船「CP-5001」
出典:PENTA OCEAN DREDING
500トン吊り自航式クレーン船「AUGUST EXPLORER」
出典:TOYO CONSTRUCTION

 そんな状況の日本国内において、清水建設が建造したSEP起重機船「BLUE WIND」は自航式

 洋上風力産業で世界の最先端を行くヨーロッパのWTIV(Wind Turbine Installution Vessel)と呼ばれるSEP船は大半が自航式。この点から見ても「BLUE WIND」が世界標準を見据えて設計されていることが伺える。

 一方で日本では船舶に該当する「BLUE WIND」は、総トン数や航行区域に準じた海技免状を保有する船員が乗船する必要があり、船体の検査に関してもクレーン検査だけではなく定期検査、中間検査といった船舶安全法に準じた船舶検査が義務付けられる。

世界最大クラスの2,500トン吊りクレーン

2,200トン吊り起重機船「駿河」に吊り上げられる「BLUE WIND」のメインクレーン
出典:SHIMIZU CORPORATION

 世界で稼働しているSEP起重機船を見ても2,500トン吊りのクレーン能力は世界最大クラスであることは間違いない。大型化していく風力タービンの進化に合わせ、設置を行うSEP起重機船の能力が大きくなっていくのは必然なのかも。ただ、「BLUE WIND」に搭載されているクレーンには、その能力を効果的に発揮するため、ユニークな仕組みが採用されている。

伸縮するテレスコピッククレーン

クレーンブームを伸ばした状態でブレード取付を行う「BLUE WIND」
出典:SHIMIZU CORPORATION

 搭載されているクレーンには大きな吊り上げ能力に加えて伸び縮みするテレスコピッククレーンという特徴がある。この特徴により、風力タービン設置の場面において効果的に能力を発揮することが出来る。

 揚程が必要な風車タービンの設置作業ではブームを伸ばして揚程を確保、最大で158.5m、吊り上げ能力は1,250トン。逆に風車タービン設置に比べて揚程が必要ない風車基礎の設置では、ブームを縮めた状態で最大吊り上げ能力2,500トンという性能を発揮。15MW級の風車設置が可能。

ブームの状態吊り上げ能力揚程
拡張時1,250トン158.5m
短縮時2,500トン116.5m
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清水建設が公開した「BLUE WIND」のテレビCM

清水建設がSEP起重機船「BLUE WIND」のテレビCMを公開
清水建設が制作した「BLUE WIND」を紹介するテレビCM
出典:SHIMIZU CORPORATION

 清水建設がSEP起重機船「BLUE WIND」を紹介する30秒のテレビCMを制作。

 何度か実際にテレビCMとして流れているのを拝見しましたが、知っていたこともあってか食い入るように見ている自分がいました。普通に知らない人が見ても、なんか清水建設がデカい事をやってるなという気持ちにさせる内容。

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アジア向けの番組「Channel JAPAN」で「BLUE WIND」紹介

出典:Youtube | Channel JAPAN by Nikkei

 日本のビジネス・経済情報や、クールで高度な日本の流行、文化、テクノロジーなどに焦点を当てた知的情報番組「Channel JAPAN(チャンネルジャパン)」の番組内コーナー「The Project Japan」の中で清水建設のSEP起重機船「BLUE WIND」を紹介。

 国内外から「BLUE WIND」に注目が集まっていることが分かります。

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