難航する離礁作業、函館市恵山岬沿岸で座礁したタンカー「さんわ丸」

難航する離礁作業、函館市恵山岬沿岸で座礁したタンカー「さんわ丸」 国内ニュース
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難航する離礁作業、函館市恵山岬沿岸で座礁したタンカー「さんわ丸」

2025年1月10日、北海道函館市の恵山岬えさんみさき沿岸で座礁したタンカー「さんわ丸」の船体を曳き出す作業が実施されましたが、船体は動かず作業は中断されました。

難航するタンカー「さんわ丸」の離礁作業。

翌日の1月11日にはタンカー「さんわ丸」から燃料などを抜き取り、船体を軽くして喫水を小さくするという曳き出しに向けた次の段階の作業を実施。この作業を報じるニュース映像を見ると、燃料などを抜き取る作業は日本サルヴェージの多目的作業台船「海島みしま」でおこなっているようです。報道情報によると、抜き取り作業は夜通し実施する見通しで1月12日に再び離礁に向けた船体の曳き出しを試みる方向で調整しているという。座礁位置に近い函館の潮位表では1月12日の満潮時刻は3時41分(75cm)と13時15分(95cm)。

タンカー「さんわ丸」の座礁事故が発生したのは、1月6日18時ごろ。翌日の7日には日本サルヴェージの「航洋丸」が現場に到着し、離礁に向けた作業が実施されましたが船体を曳き出すことは出来ず。1月8日朝になって燃料の重油が漏れているのが発見され、乗組員がオイルフェンスを設置。転覆のおそれは無いということですが、船体がわずかに傾き始めたことから、海上保安部は乗組員11人のうち7人を救助し、残る4人は引き続きタンカーの離礁作業にあたっているという。

タンカー「さんわ丸」座礁事故のタイムライン
  • 2025年
    1月6日
    座礁事故発生

    1月6日13時ごろに北海道苫小牧を出港して秋田に向かって航行中、18時ごろ北海道函館市の恵山岬沿岸に座礁

  • 1月7日
    現場に到着した「航洋丸」で曳き出し作業を実施するも船体は動かず
  • 1月8日
    燃料の重油流出、乗組員11人のうち7人を救助
  • 1月9日
    破損した燃料タンクに残る重油を別のタンクへ移し替え

    重油は長さ約2.7km、幅約1kmにわたって拡散、約2km離れた恵山漁港で漂着を確認

  • 1月10日
    再度「航洋丸」で曳き出しを試みるも船体は動かず

  • 1月11日
    燃料などの抜き取りを実施

    多目的作業台船「海島」による燃料などの抜き取り作業を実施

函館付近の潮位差は大潮でも1m程度

「航洋丸」による「さんわ丸」の船体曳き出し作業は、いずれも満潮時刻に合わせて実施しているようです。しかし、事故が起きた恵山岬に近い函館の潮汐表を確認すると、その潮位差は大潮でも1m程度。

事故が発生した1月6日18時ごろの函館の潮位は0.62m。直近で満潮時の潮位が最も高くなる大潮は1月14日となっており、満潮時刻14時59分の潮位は1.00m。したがって、1月15日以降は満潮時の潮位が次第に低くなるため、あまり潮位差は大きくないとは言え、何としても1月14日までに「さんわ丸」の離礁を成功させたいところ。ちなみに次の大潮は1月29日前後。

報道されている情報によると、タンカー「さんわ丸」には燃料として重油199kLが積まれており、燃料とは別に積荷として石油製品3,800kLが積まれているということですが、現段階で抜き取りをおこなっているのは燃料や船内で使用する清水だけだという。A重油の比重は0.82~0.95程度なので、199kLだと重量は163~189トン。船体寸法で割ると平均で喫水0.1m分に相当。

離礁に向けた作業は段階的に進められているんだと思いますが、燃料の抜き取りだけでは効果はあまり期待できないのかも。座礁位置が特定されていれば、並行して船体の船首・船尾で喫水調整をすることで効果は上がるかもしれませんが、出来るのなら既にやっているでしょうね。最終手段は積荷の抜き取りになると思われる。

エンジンなどに異常は確認されていない・・・事故原因は?

タンカー「さんわ丸」座礁直前のAIS航跡

タンカー「さんわ丸」のAIS航跡は座礁事故の数十分前に急な針路変更をおこなった後に起きている。事故当時、「さんわ丸」の位置情報を知らせる装置やエンジンなどに異常は確認されていないという。

更に不可解なのは、操船していた乗組員が海上保安部の聞き取りに対し、「現場近くの海域でかじを切り、途中で航路を変えたが、自分が陸に向かっているとは分からなかった」などと説明しているという点。単なる力量不足なのか、何かの勘違いや思い違いが要因なのか、それとも他に別の要因が関係しているのか、現段階では不明。

事故原因については調べが進められている段階なので、今後事実が明らかにされることを期待。

多目的作業台船「海島みしま」

船名海島
総トン数1,408トン
長さ60m
24m
深さ4m
建造年2008年4月
多目的作業台船「海島」
出典:The Nippon Salvage

タンカー「さんわ丸」

日本海事協会(ClassNK)に登録されているタンカー「さんわ丸」のRegister of Ship
  • Owner(船主):WAKO KISEN YUGEN KAISHA
  • Manager(運航会社):MIYAZAKI KAIUN CO., LTD. IMABARI OFFICE
  • Shipbuilder(建造):KANREI SHIPBUILDING CO., LTD.
船名さんわ丸
総トン数3,919トン
載貨重量トン4,999トン
長さ104.95m
16m
深さ8.3m
船籍日本
建造年2018年10月
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