ベルギー沖「世界初の人工エネルギー島」で最初のケーソン2函設置


2025年4月30日、Elia Groupはベルギーの海岸から45km沖合に位置する世界初の人工エネルギー島「Princess Elisabeth Island」で最初のケーソン2函の設置が完了したことを発表しました。
「Princess Elisabeth Island」の外周に設置する予定のケーソンは全部で23函。ベルギーの送電事業者Elia Transmission BelgiumとのEPCI契約を締結しているDEMEとJan De NulのコンソーシアムであるTM Edisonが建設工事をおこなっている。
Elia Groupの掲載情報によると、オランダのフリッシンゲンにあるケーソン製作場所から「Princess Elisabeth Island」へのケーソン海上輸送は2025年4月21日に開始。設置するケーソンの大きさは長さ58m、幅28m、高さは防風壁の有無に応じて23mから32m、重量約22,000トン。タグボート4隻による約53海里(約98km)の海上輸送および現地での設置・固定という設置作業全体には約24時間かかるという。
ケーソン設置作業をおこなう画像の背面に映っているSEP起重機船は、DEMEが所有する600トン吊りSEP起重機船「Neptune」。
8点係留による1函目のケーソン設置

出典:Elia
工事を進める上で重要な基点となる1函目のケーソン設置。目標物が何にも無い状態で設置するため2函目以降のケーソン設置と比較して難易度は高くなる。その1函目のケーソン設置では、海上輸送したケーソンを事前に設置したアンカー8点を使用して係留。設置精度を高め、制御・安定した状態でケーソンに注水し、海底まで降下させて設置完了。
2函目のケーソン設置方法について記載はありませんでしたが、公開されている動画によると、曳航してきたタグボート4隻でケーソンにラインを取った状態で既設ケーソンからクロスで2本の引き寄せラインを取り付けて設置作業をおこなっていました。
日本国内でおこなわれるケーソン設置作業では、ケーソンとケーソンの間に目地板を挟み込み、その厚みを変えることで法線の通りや延長を調整するのが一般的ですが、今回のケーソン設置では側面に取り付けられたゴム材しか使っていないように見えたので、どのように微調整をおこなっているのか気になりました。
作業中止基準は波高1.5m以下、風速はビューフォート風力階級5以下(8~10.7m/s以下)。沖合の設置場所で気象・海象予測をおこなうため、2つの独立した気象予報サービスと複数のブイによる観測を実施することでリアルタイムの監視が可能だという。
半潜水式バージ「BOABARGE 33」によるケーソン進水

出典:Boa Offshore
オランダのフリッシンゲンにあるケーソン製作場所でおこなわれたケーソン進水作業にはBoa Offshoreの半潜水式バージ「BOABARGE 33」を使用。
半潜水式バージ「BOABARGE 33」の船体寸法は、長さ140m、幅57.05m、深さ8.54m。半潜水時の最大喫水は船首側が26.5m(甲板深度18m)、船尾側29.5m(甲板深度21m)。甲板面積は5,800m2、甲板強度31.5トン/m2。載貨重量トン数は、30,200トンなので重量約22,000トンのケーソン進水も問題なし。ですが、Boa Offshoreの掲載記事によると、極端な重量負荷が船尾にかかる今回のケーソン進水作業では、管理するために特別な変更が施されているという。”特別な変更” の詳細は記載されていませんが、推測すると甲板強度を高める補強や荷重を分散させる鋼板・鋼材の設置などが考えられます。
Googleマップの航空写真でフリッシンゲンのケーソン製作場所を見ると、半潜水式バージ「BOABARGE 33」がケーソンを進水するためにセットされた状態でした。

半潜水式バージ「BOABARGE 33」は、スペイン北部の沖合にDemoSATHプロジェクトで設置されている出力2MWの浮体式洋上風力プラットフォーム実証機を進水させる作業にも従事した実績があります。
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