商船三井が次世代型浮体式洋上風車の開発に出資参画を発表
次世代型浮体式洋上風車の開発を行うオランダ・TouchWind社に出資参画
https://www.mol.co.jp/pr/2023/23110.html
2023年9月11日、株式会社商船三井(MOL,Mitsui O.S.K.Lines)は、次世代型浮体式洋上風車を開発するオランダのTouchWind BVに出資したことを発表。出資参画により、TouchWindが開発する浮体式洋上風車の実用化に向けた技術開発を進め、将来的にはヨーロッパをはじめ日本を含むアジアでも次世代型浮体式洋上風車のサプライチェーン内での事業機会獲得を目指しているという。
TouchWind社が独自に設計・開発する次世代型浮体式洋上風車は、傾斜したローターにより大規模なウィンドファームでの風車ウェイクという問題を低減し、ウィンドファーム全体の発電効率を改善することにつながるという。その他にも強風での運転、風車と浮体部分の重量低減が可能で、風車の設備利用率の向上、製造・運転・保守コストの軽減、総発電コストの低減が期待されている。
TouchWind BV について
次世代型浮体式洋上風車を開発するTouchWind BVは、2018年にオランダのアムステルダムで設立し、現在はアイントホーフェン(Eindhoven)に拠点を置いている。これまでにオランダ政府の補助金と賛同企業の協力を得て、風力タービン技術の原理を実証するためのテストを実施。2023年7月には、オランダ政府企業局(Netherlands Enterprise Agency)より補助金を受け、ローター直径6mの風車(出力12kW)を最大10基製作し、2024年から25年にかけて、同国内の陸・海上で、風車間の風の干渉を低減する効果検証試験を行う予定。
低価格とワンピースローター(A low-cost, one-piece rotor)
TouchWind BV が開発している次世代型浮体式洋上風車の大きな特徴のひとつが低価格。単に製造価格だけではなく、運転、保守管理に至るまでコストを抑える取り組みが盛り込まれている。なかでも特徴的なのはワンピースローター(one-piece rotor)と呼ばれる風車の顔とも言えるブレードが1つの部材で構成されているという点。
一般的な風車では3枚のブレードをハブに接続するため、4つの部材が必要になりますが、TouchWind BV が開発する風車はそれらが1つの部材に集約されている。従来の風力タービンと比較して30%のコスト削減が見込まれているという。
メンテナンス時はナセルを海面際に
出典:TouchWind
風力タービンのメンテナンス時はブレード及びナセルを海面際まで近づけることでボートから容易にアクセスが可能になるという。高いタワーを昇降する必要が無く、メンテナンス作業で風車を停止させる時間が短縮されることで発電効率の向上につながる。
メンテナンス作業員の昇降方法は詳細不明なので何とも言えませんが、イメージ画像を見る限り安全な方法には見えないような・・。風車も船も揺れている中で人が昇降するので、今後の開発で検討が必要な部分かもしれません。
風速70m/sで運転
出典:TouchWind
これが一番驚きの特徴。一般的な風車では発電可能な最大風速(カットアウト風速)は風速25m/sに設定されているものが多く、それ以上の風速になると停止するか強度上安全な回転数まで低減します。
TouchWind BV が開発している次世代型浮体式洋上風車は、風速70m/sという猛烈な風で発電が出来るという。海上に設置された状態で耐えれるという事ではなく、ブレードを回転させて発電することが出来るというのは驚異的ですね。発電可能な風速幅が広がることで運転時間の増加、発電電力量の増加につながる。
どのような仕組みになっているのでしょうか。単にブレード面の角度が変化するだけだとすると事件が起きそう。カットアウト風速以上の強風でブレードが回転し、過回転状態で風車が制御できなくなると、ブレードの破損や風車自体の倒壊につながり、これまでに多くの事故が起きています。何か一般的な風車にも導入可能な要素があるならば展開するといいかもしれませんね。
ローター直径200m、出力12.5MWへのスケールアップを想定
出典:TouchWind
現在、実証試験機として製造が進められているのはローター直径6m、出力12kWという小さな規模の風車ですが、将来的にはローター直径200m、出力12.5MWへのスケールアップが想定されているそうです。
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