海面から高くジャッキアップした甲板からの衝撃的な避難方法
ジャッキアップした船からの脱出システム。
— クレーン船.com (@crane1000com) February 4, 2024
船上火災などの緊急避難としては、ジャッキアップした甲板上から水面に飛び込むよりマシなのかも。あまり使いたくない感じですけど。pic.twitter.com/bG4cIeprFF
Xのタイムラインに流れてきた1つの動画にとても衝撃を受けました。
動画に登場するのは、ジャッキアップリグと呼ばれる石油掘削などをおこなう設備を甲板に搭載した作業船で、レグという脚を海底に突き立てて自船をジャッキアップし、波浪による影響を受けない状態で作業出来るのが大きな特長。
動画内で実施されている設備の動作確認では、海面から結構な高さまでジャッキアップした状態の甲板上から脱出する様子が紹介されています。使用している避難器具は垂直降下式救助袋と呼ばれるもので、海上に限らず陸上でも同様の仕組みの物が使われているそうです。
Xの動画は少し画素数の粗い感じでしたが、少しだけ映る船名から作業船を調べた結果、ジャッキアップリグは「NOBLE LLOYD NOBLE」、そして避難器具はデンマークに本社を置くVIKING Life-Saving Equipmentの製品であることが分かりました。
ジャッキアップリグ「NOBLE LLOYD NOBLE」
船名 | NOBLE LLOYD NOBLE |
総トン数 | 26,733トン |
長さ | 90m |
幅 | 115m |
深さ | 12m |
レグ長さ | 214m |
作業水深 | 150m(最大) |
建造年 | 2016年 |
最大高さ81m、10分間で159人の避難ができる垂直降下式救助袋
デンマークに本社を置くVIKING Life-Saving Equipmentは貨物船や大型客船などの幅広い船舶に救命いかだや避難器具などを製造している。
動画でテストしていた垂直降下式救助袋は「VIKING SES-2A 2006」という製品。垂直降下式救助袋でも何種類か仕様の違うタイプがあり、その中には最大高さ81m、10分間で159人の避難ができるというものもあるようです。
高さ81mからの降下に必要な時間は不明ですが、垂直降下式補助袋の一般的な降下速度は毎秒4m程度と言われており、その速度で計算すると1人の降下時間は約20秒。これを基に10分間で159人が降下する場合を計算すると、3.7秒間隔で次々と降下しなければならず、常時4、5人が降下中という少し実現するには訓練が必要なレベル。ですが、無理ではなさそう。
ジャッキアップリグ「NOBLE LLOYD NOBLE」には140人分の宿泊設備が備わっており、一刻を争う緊急事態の避難ではスピーディーな脱出が生死を分ける可能性もある。
【動画】VIKING SES-2A 2006の動作テスト
Xで流れてきた動画の元と思われるYouTube動画。
【動画】クルーズ船「Adora Magic City」搭載の動作テスト
VIKING Life-Saving Equipmentの製品をいろいろ見てると、2024年の元旦に運航を開始した中国の大型クルーズ船「愛達・魔都号」(ADORA MAGIC CITY)に避難設備を納品していました。
「VIKING VEDC dual chute Marine Evacuation System」という製品で、30分以内に900人以上を避難させることが出来るそうです。
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