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海に沈んだ船を引き上げる5つの方法

海に沈んだ船を引き上げる5つの方法 事件・事故
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過去の引き上げ事例

 これまでに引き上げが実際行われた事例を5つ紹介。

九州南西海域工作船事件の工作船引き上げ(水深90m)

水深90mの海底から引き揚げられた工作船

 2001年12月22日、東シナ海で日本の海上保安庁の巡視船と交戦の末に爆発、沈没した北朝鮮の工作船引き揚げについて。

 沈没位置は水深90mの海底。工作船の大きさは全長約30m、幅約5m、深さ2.3m、総トン数44トン。重量は約55トン

 この作業の流れに関して海上保安資料館横浜館がYoutubeで動画を作成していますので見ると分かり易いです。

沈没位置の特定

 船体の引き上げに先立ち、沈没位置を特定する為、海上保安庁の測量船「海洋」を使用。搭載機器のサイドスキャンソナーで沈没位置のあたりを付け、巡視船「いず」のROV(自航式水中カメラ)で沈没船を発見し、位置を特定することに成功。

船体状況の調査

 船体の詳細状況を調査する為、有人潜水艇大気圧潜水服潜水支援船などを使用。

有人潜水艇「はくよう」

 使用された有人潜水艇「はくよう」の潜航最高深度は300m。搭乗人員は通常2名(最大3名可能)。マニピュレータと呼ばれる耐圧殻内からパイロットが遠隔操作するロボットハンドを使用して工作船付近に散乱する様々なものを回収。

大気圧潜水服

 大気圧潜水服とは、深海を潜水するために身に着ける潜水用具で水圧の影響を受けないよう硬くて機密性のある全身を覆う形状をしている。そのままの状態で潜れるため、特別な混合ガスは必要ない。デメリットは、関節部の自由度が低く重いので行動には制限がかかり、使用環境の温度などの問題も受ける。大気圧潜水服にもマニピュレータが付いており海底から様々なものを回収する事が可能。

引き上げ方法の選定

 各事項について検討し、引き上げ方法を決定。

  • 船型の仮定
  • 吊り上げ重量及び重量分布の推定
  • 船体強度の推定
  • 油流出への対応

 その他の調整事項として、沈没位置が東シナ海にある日中中間線よりも中国側に位置し、中国のEEZとして扱っている海域であったため、中国政府との調整が必要であった。

出典:海上保安資料館横浜館
引き上げ

 2002年6月25日、現場海域にクレーン船が到着し引き上げ作業が開始された。

 しかし、荒天と台風の影響により予定は大きく遅延していく。

出典:海上保安資料館横浜館

 結果として、2002年9月11日に引き上げ完了となるが、その間の作業稼働日は23日作業中止日は55日だった。

 肝心な引き上げ方法は、船底をワイヤーで吊上げる方法

 この方法だと吊り上げた後に船体のバランスが崩れたり、引き上げ中の潮流の影響でワイヤーが滑り、船体が落下する可能性がありますが、その辺の対策もされています。

引き上げの流れ
  1. 船底と海底との間に吊り上げワイヤーを通すために、ワイヤーガイドを設置する。
  2. ワイヤーガイドを使用して吊り上げワイヤーをセット
  3. 事前に仕込んだ船底の吊り上げワイヤーとクレーン側の吊り上げワイヤーを潜水士が接続して引き上げ(飽和潜水にて)
1.ワイヤーガイドの設置
出典:海上保安資料館横浜館
2.船底と海底との間に吊り上げワイヤーをセット
出典:海上保安資料館横浜館
3.船底のワイヤーとクレーンの吊り上げワイヤーを連結して吊り上げ
出典:海上保安資料館横浜館
引き上げに使用されたクレーン船

引き上げ作業を行うこの画像を見て何か気付きますか?

クレーンのフックブロックが見えないので海中に沈んでいます

水深90mから工作船を引き上げるための揚程を確保するにはフックブロックを水中に沈むほどに下げてから吊り上げる必要があった。通常のクレーンで使用されている主巻ワイヤーは海中に下げれるほど長くはないと思われるので、船体重量がクレーン能力と比べ軽いことからフックブロックへの巻掛け数を減らしてワイヤー長を確保しているのかもしれません。

それと、大前提としてフックブロックを海中に沈めるという行為は普通しないので発想としてスゴイなと思いました。

船体には深田サルベージ建設の社名がありますが、実際は吉田組の1,700トン吊りクレーン船「第60吉田号」。現在は中国に売船されて「德瀛(De Ying)」という船名になっています。

次へ:「セウォル号」引き上げ(水深44m)
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