CadelerのSEP起重機船「Wind Ally」海上公試完了
中国の江蘇省 啓東市にある中遠海運重工(COSCO Shipping Heavy Industry)で建造中のCadeler向けとなるSEP起重機船「Wind Ally」のSEA TRIAL(海上公試)が完了。
CadelerがLinkedInに投稿した内容によると、海上公試を含む各種試験は25日間に渡っておこなわれ、すべての試験が無事に完了して現在は岸壁に帰港しているという。SEP起重機船「Wind Ally」(現段階で表示されている船名はZHONGYUANHAIYUN1130)のAIS情報を確認すると、2025年8月2日に江蘇省 啓東市を出港して沖合での海上公試をおこなった後、8月11日~19日は山東省 威海市へ移動してジャッキアップ試験やクレーン荷重試験を実施。その後、8月26日に江蘇省 啓東市に帰港していました。
SEP起重機船「Wind Ally」は、CadelerのA-classとして1隻目にあたり、2025年第3四半期に引き渡し予定。船体仕様に関する詳細情報は公表されていませんが、CadelerのウェブサイトにA-classの標準仕様として掲載されている船体寸法は長さ162m、幅60m、レグ長さ119m、最大作業水深70m。メインクレーンの最大吊り上げ能力は ”To be disclosed”(開示予定)と記載されているため不明ですが、クレーンを製造するHuismanの掲載情報では、「Wind Ally」に搭載されるクレーン能力は2,600トン。貨物エリアは、5,600m2で甲板強度は15トン/m2、15MWの風力タービン7セットまたはXXLモノパイル6基を自船に積んで輸送・設置することが出来る。


出典:Cadeler
350万時間以上の安全作業時間を記録
CadelerのLinkedIn投稿で気になったのは、SEP起重機船「Wind Ally」の建造に関する安全作業時間。
So far, the construction of Wind Ally has accumulated more than 3.5 million safe working hours.
(現在までに、「Wind Ally」の建造は350万時間以上の安全作業時間を記録しています。)
出典:LinkedIn | Cadeler
現在までに、SEP起重機船「Wind Ally」の建造には350万時間以上の安全作業時間を記録しているという。
”350万時間” という数字の大きさから凄いことなんだろうなとは感じるけど、あまり凄さが伝わってこないのはなぜだろう。ということで作業に従事している人数に換算してみました。1日8時間労働で割って作業人数を算出。
350万時間 ÷ 8時間=437,500人
これまでにSEP起重機船「Wind Ally」の建造に従事した人数は437,500人。これは驚き。さらに、建造期間で割って1日当たりの人数を算出。SEP起重機船「Wind Ally」のSteel Cutting Ceremony(鉄鋼切断式)がおこなわれ建造着工したのは2023年9月8日。なので、2025年9月5日までの建造期間は729日。
437,500人 ÷ 729日 ≒ 600人
これまた驚き。約2年間の建造期間で1日当たり平均600人が建造に携わっているという事実。工程には波もあると思われるのでピーク時は1日1,000人を超える日もあったことでしょう。巨大な船舶建造の大きなスケールを感じると同時に、これほど多くの人が作業するなかで事故が起きていないというのは素晴らしい。
SEP起重機船「Wind Ace」起工


出典:Cadeler
CadelerのLinkedIn投稿では、SEP起重機船「Wind Ally」の海上公試完了とともにA-class2隻目となるSEP起重機船「Wind Ace」の起工式(Keel Laying Ceremony)がおこなわれたことも発表されました。
SEP起重機船「Wind Ace」が建造着工したのは、2024年7月。引き渡し予定は2026年第3四半期。
ちなみに「Wind Ace」についても安全作業時間が記載されており、これまでの記録は200万時間。2024年7月18日の着工から現在までの作業期間は、415日。延べ人数は25万人、1日当たりの平均人数は602人。同じ造船所で同型船を建造しているので、1日当たりの平均人数はほぼ同じでした。
Cadelerの建造船情報

出典:Cadeler
2022年以降に建造を開始したCadelerのSEP起重機船7隻のうち3隻は既に竣工し、残る4隻が建造中。Cadelerの保有船で現在稼働中のSEP起重機船は8隻、建造中の新造船も合わせると12隻。
👆上の画像には11隻しかいないので1隻入っていない。映っていない1隻は2025年7月に上海博強重工集団(Shanghai Boqiang Heavy Industry Group)から購入した2,200トン吊りSEP起重機船「Wind Keeper」。なぜ判別できるのかというと、画像のSEP起重機船はすべて船尾右舷側にメインクレーンが搭載されているのに対して、「Wind Keeper」は船尾左舷側に搭載しているため。
画像左下に映っているひと際小さなSEP起重機船は、800トン吊りの「Wind Zaratan」。商業ベースで日本国内初となる能代港洋上風力発電所(2022年12月運転開始)、秋田港洋上風力発電所(2023年1月に運転開始)の建設で活躍しました。モノパイルを採用した着床式で風力タービンの出力は4.2MW。ここ数年で風力タービン大型化は急速に進んでおり、施工するSEP起重機船の大型化もそれに追随。新造船やアップグレードした既存船に比べて小さく見える「Wind Zaratan」がそれを物語っている。
船名 | 建造番号 | クレーン能力 | 着工 | 起工 | 進水 | 引き渡し(予定) |
---|---|---|---|---|---|---|
Wind Peak (P-class①) | N1063 | 2,600トン | 2022年6月 | 2023年7月 | 2024年1月 | 竣工 2024年8月 |
Wind Pace (P-class➁) | N1064 | 2,600トン | 2023年2月 | 2024年2月 | 2024年6月 | 竣工 2025年3月 |
Wind Ally (A-class①) | N1130 | 2,600トン | 2023年9月 | ? | 2025年1月 | (2025年第3四半期) |
Wind Ace (A-class➁) | N1131 | 3,000トン以上 | 2024年7月 | 2025年9月 | ― | (2026年第3四半期) |
Wind Apex (A-class③) | N1149 | 未公表 | 2025年7月 | ― | ― | (2027年上半期) |
Wind Maker (M-class①) | No.3306 | 2,600トン | ? | 2024年3月 | 2024年6月 | 竣工 2025年1月 |
Wind Mover (M-class➁) | No.3307 | 2,600トン | ? | 2024年11月 | ― | (2025年第4四半期) |
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