イギリスで建造されている世界初の水陸両用乗組員輸送船が完成間近。完成・引き渡し予定は2022年9月なので今月中。この船の建造目的は、ある困った問題を解消するためだったようです。
水陸両用乗組員輸送船「CRC Walrus」
水陸両用乗組員輸送船(ACTV,Amphibious Crew Transfer Vessel)が建造されているのは、イギリス南部のワイト島にある造船所「Diverse Marine」。
船を発注したのは、同じくイギリスで2001年に設立された「Solent Rib Charters」の取引部門である「Commercial Rib Charter」。40隻のボートを所有し、ヨーロッパ最大手のリブチャーター(Rib charter)を運航する企業。
リブ(Rib)とは、Rigid-Hulled Inflatable Boatの略で、FRP成型やアルミ成型による船体に、ハイテク素材の浮力体であるチューブを接合したボートのこと。特徴としては、走行性に優れ、FRP製ボートのように波にたたきつけられる不快感がなく乗り心地が良い。そして何より、船体が軽量であるため、小さいエンジンで高速走行が可能で燃料消費が少なく経済的。
「CRC Walrus」の特徴
水陸両用乗組員輸送船「CRC Walrus」は、乗組員2人と乗客8人が搭乗できる全長12mの船。喫水はわずか80㎝。動力は300馬力のディーゼルエンジン2基ですが、最高速力は29ノット。
そして、最大の特徴は搭載している油圧式の上下する車輪。これにより水陸両用が可能になるらしい。
建造目的の困った問題
なぜ、水陸両用の人員輸送船が必要なのか?
理由は、画像に写っている「Scroby Sands Wind Farm」へメンテナンス作業員を送迎するため。
「Scroby Sands Wind Farm」はイギリス東部のグレート・ヤーマス沖に建設されている発電容量60MWの洋上風力発電所。2004年に完成し、2MW風車30基が建てられている。風車を建てたからなのかは分かりませんが砂の堆積で水深が減少し、メンテナンスの為に風車へアクセスしようにも船で行けない部分が出てきて困ったことになっていたようです。
そこで解決策として、水陸両用乗組員輸送船「CRC Walrus」の建造に至ったという。
ちょっと心配なのは、堆積している砂の性質にもよりますが、車輪が少し埋まったりすると抵抗が大きくて進まない事もあるんじゃないのかなという点。
船名の由来
船名「CRC Walrus」の由来。
”CRC”は、所有企業の「Commercial Rib Charter」。
”Walrus”は、セイウチという意味。セイウチは泳ぐと早いですけど、想像した時に出てくるイメージでは砂浜とか岩場の上をノソノソ歩いてる感じ。確かに水陸両用。妙に納得してしまいました。
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