Allseasが所有する「Hidden Gem」が太平洋のクラリオン・クリッパートン断裂帯と呼ばれる海域で水深4,000m以上の海底から推定4,500トンにも及ぶ大量の多金属団塊採取に成功。採取を行った「Hidden Gem」は、深海掘削船「Vitoria 10000」を多金属団塊採取の目的で改造した作業船。
Allseasが太平洋の深海から4,500トンの多金属団塊を採取

出典:Allseas
Allseasが発表した記事によると、深海掘削船「Vitoria 10000」を改造した「Hidden Gem」を使用して太平洋のクラリオン・クリッパートン断裂帯(Clarion Clipperton Zone)と呼ばれる海域の海底から多金属団塊(polymetallic nodules)を推定4,500トン採取することに成功。採取を行った海域の水深は4,380m。「Hidden Gem」に搭載されたライザーと呼ばれる海底から海面上の設備まで物質を揚げるための配管を通して海水と共に汲み上げられた。
今回行われた2ヵ月にも及ぶ太平洋での多金属団塊採取は試験的なもののようで、ゆくゆくは商用規模にスケールアップするための調査・データ収集という側面があるようです。実際、水質測定装置を備えたROVなどを使用して多金属団塊採取時やライザーによる海面上への輸送時に発生する海底堆積物の浮遊状況や騒音レベルの調査を行っている。
Allseasは、2020年3月2日のプレスリリースで深海鉱物探査や開発をおこなう The Metals Company(旧 DeepGreen Metals)と提携し、海底からの多金属団塊を収集するシステムの開発と深海掘削船「Vitoria 10000」の買収・改造を発表していた。
多金属団塊とは?
いったい、多金属団塊(polymetallic nodules)とは何なのか?

出典:User Koelle on de.wikipedia – Koelle, selbst fotografiert, own photo, CC 表示-継承 3.0, リンクによる
マンガン団塊(manganese nodule)、多金属団塊(polymetallic nodule)とは、深海の海底に存在する球状の凝結塊。コアの周りに同心円状に水酸化鉄と水酸化マンガンが層状に凝結したもの。コアは、微化石(放散虫や有孔虫)の殻や、燐灰石などのリン酸塩鉱物に置換されたサメの歯や、玄武岩のデブリ、さらには既に形成されていた別の団塊(ノジュール)の破片であることもある。
マンガン団塊の化学組成は、マンガン鉱物の種類や大きさ、コアの種類によって変化し、マンガン(27%-30%)、ニッケル(1.25-1.5%)、銅(1-1.4%)、コバルト(0.2-0.25%)を含んでいる。
マンガン団塊の主成分は鉄やマンガンですが、ニッケルや銅、コバルトなどの有用金属元素を含んでいる。その成長速度は百万年に数mm程度というレベル。

出典:Wikipedia | By USGS – Public Domain, Link
マンガン団塊は世界中の大洋のほとんどに分布しているようですが、資源量と金属含有量の観点から今回採取が行われたクラリオン・クリッパートン断裂帯(Clarion Clipperton Zone)が最も有望とされているそうです。
マンガン団塊の成長には数十年から数百万年かかる。資源回復には時間がかかり、深海の生物とその生態は未知の領域が多く、影響を予測するのは大変困難。環境変化や底生生物の直接的な死、堆積物を浮遊させることによる濾過摂食者の窒息死などが懸念されているようです。
「Hidden Gem」の概要

出典:Allseas
Allseasは2020年3月に深海掘削船「Vitoria 10000」を購入し、多金属団塊回収船「Hidden Gem」に改造。
全長228m、幅42mで200人を収容可能な宿泊設備を搭載している。4,500mのライザーと呼ばれる海底物質を採取する配管を展開することが可能で、ライザー先端で多金属団塊を採取する全長12mの「robotic collector」も搭載されている。「robotic collector」の制御と動力電源は5,000mの有線ケーブルによって行われ、「Hidden Gem」のDPS(自動船位保持装置)と連動して動作することが可能。

出典:Allseas
船名 | Hidden Gem |
長さ | 228m |
幅 | 42m |
総トン数 | 60,331トン |
宿泊設備 | 200人 |
建造年 | 2010年 |
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