Allseasが所有する「Hidden Gem」が太平洋のクラリオン・クリッパートン断裂帯と呼ばれる海域で水深4,000m以上の海底から推定4,500トンにも及ぶ大量の多金属団塊採取に成功。採取を行った「Hidden Gem」は、深海掘削船「Vitoria 10000」を多金属団塊採取の目的で改造した作業船。
Allseasが太平洋の深海から4,500トンの多金属団塊を採取
Allseasが発表した記事によると、深海掘削船「Vitoria 10000」を改造した「Hidden Gem」を使用して太平洋のクラリオン・クリッパートン断裂帯(Clarion Clipperton Zone)と呼ばれる海域の海底から多金属団塊(polymetallic nodules)を推定4,500トン採取することに成功。採取を行った海域の水深は4,380m。「Hidden Gem」に搭載されたライザーと呼ばれる海底から海面上の設備まで物質を揚げるための配管を通して海水と共に汲み上げられた。
今回行われた2ヵ月にも及ぶ太平洋での多金属団塊採取は試験的なもののようで、ゆくゆくは商用規模にスケールアップするための調査・データ収集という側面があるようです。実際、水質測定装置を備えたROVなどを使用して多金属団塊採取時やライザーによる海面上への輸送時に発生する海底堆積物の浮遊状況や騒音レベルの調査を行っている。
Allseasは、2020年3月2日のプレスリリースで深海鉱物探査や開発をおこなう The Metals Company(旧 DeepGreen Metals)と提携し、海底からの多金属団塊を収集するシステムの開発と深海掘削船「Vitoria 10000」の買収・改造を発表していた。
多金属団塊とは?
いったい、多金属団塊(polymetallic nodules)とは何なのか?
マンガン団塊の主成分は鉄やマンガンですが、ニッケルや銅、コバルトなどの有用金属元素を含んでいる。その成長速度は百万年に数mm程度というレベル。
マンガン団塊は世界中の大洋のほとんどに分布しているようですが、資源量と金属含有量の観点から今回採取が行われたクラリオン・クリッパートン断裂帯(Clarion Clipperton Zone)が最も有望とされているそうです。
マンガン団塊の成長には数十年から数百万年かかる。資源回復には時間がかかり、深海の生物とその生態は未知の領域が多く、影響を予測するのは大変困難。環境変化や底生生物の直接的な死、堆積物を浮遊させることによる濾過摂食者の窒息死などが懸念されているようです。
「Hidden Gem」の概要
Allseasは2020年3月に深海掘削船「Vitoria 10000」を購入し、多金属団塊回収船「Hidden Gem」に改造。
全長228m、幅42mで200人を収容可能な宿泊設備を搭載している。4,500mのライザーと呼ばれる海底物質を採取する配管を展開することが可能で、ライザー先端で多金属団塊を採取する全長12mの「robotic collector」も搭載されている。「robotic collector」の制御と動力電源は5,000mの有線ケーブルによって行われ、「Hidden Gem」のDPS(自動船位保持装置)と連動して動作することが可能。
船名 | Hidden Gem |
長さ | 228m |
幅 | 42m |
総トン数 | 60,331トン |
宿泊設備 | 200人 |
建造年 | 2010年 |
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