台湾で14MW風力タービンを設置した「BLUE WIND」室蘭へ

2025年11月3日、台湾の「Hai Long 2 Offshore Wind」で14MW風力タービンを設置した清水建設のSEP起重機船「BLUE WIND」が母港である室蘭港へ帰港しました。
SEP起重機船「BLUE WIND」のAIS情報によると、台湾の台中港を出港したのは2025年10月8日。なぜか出港後に東へ向かい、西表島の北へ。すぐに西へ転じて福建省の漳州市に10月16日到着。このたび台湾のプロジェクトへ従事する前にも漳州市に寄港しており、風力タービン設置の施工で使用したタワー部材の架台やブレードラックの艤装解除だと思いますが、立ち寄った理由は不明。
その後、「BLUE WIND」は漳州市を10月25日に出発し、北海道の室蘭港へ。漳州市から室蘭港までの距離は約3,100km、約1,680海里。室蘭港への到着日である11月3日までの航行日数10日間で平均速力を計算すると7ノット。AISで確認できる速力では10ノット以上で航行している時もありました。
2025年3月の室蘭出港からおよそ7カ月という今回の台湾プロジェクトでの作業。14MW風力タービン設置を経験し、一回り成長したSEP起重機船「BLUE WIND」の乗組員の方には ”お疲れさまでした!おかえりなさい!” と言って労いたい気持ち。
「Hai Long 2」で14MW風力タービン37基を設置

SEP起重機船「BLUE WIND」が風力タービン設置をおこなった「Hai Long Offshore Wind」(海龍洋上風力発電所)は台湾西部の彰化県沖で建設が進められています。Northland Power、三井物産、Gentariで構成されるHai Long Offshore Wind Projectが3つのフェーズに分けて開発を進めており、2A(300MW)、2B(232MW)、3(512MW)では、Siemens Gamesaの14MW風力タービン「SG 14-222 DD」73基と洋上変電所2基を設置する計画。
2025年の施工では2A、2Bの合わせて37基の風力タービン設置が完了。台湾海峡では海象の悪い冬季に洋上施工を進めることが難しいため、残る「Hai Long 3」の風力タービン36基の設置は2026年に完了する予定。2026年の設置作業に「BLUE WIND」が再び動員されるのかは不明。
着実に実績を積み重ねる「BLUE WIND」

出典:Japan Marine United Corporation
2019年7月に ”世界最大級・高効率の自航式SEP船” と銘打って建造が発表された清水建設の2,500トン吊りSEP起重機船「BLUE WIND」。建造費400億円、技術開発などのコストを含めると約500億円が投じられた「BLUE WIND」は日本国内のジャパン・マリン・ユナイテッド呉事業所で建造され、2022年10月に完成・引き渡し。
これまでにSEP起重機船「BLUE WIND」が携わった洋上風力プロジェクトを振り返ると、3MWの⼊善洋上⾵⼒に始まり、8MW、14MWと着実に実績を積み重ねながらステップアップしていることが確認できます。
| 船名 | BLUE WIND |
| クレーン能力 | 2,500トン |
| 揚重高さ(2,500トン仕様) | 116.5m |
| 揚重高さ(1,250トン仕様) | 158.5m |
| 長さ | 142m |
| 幅 | 50m |
| 深さ | 11m |
| 喫水 | 6.2m |
| 総トン数 | 28,000トン |
| DPS | DP2 |
| 建造年 | 2022年 |
| 搭載可能重量 | 10,000トン |
| デッキ強度 | 10t/m2 |
| デッキスペース | 4,600m2 |
| レグ長さ | 90m(最大109m) |
| スパッドカン | 160m2 |
| アジマススラスター | 3,800kw(5,167ps)×3 3,200kw(4,351ps)×1 |
| トンネルスラスター | 3,200kw(4,351ps)×2 |
| 最大航行速度 | 11ノット |
| 最大乗船人数 | 130名 |
⼊善洋上⾵⼒発電所
竣工後、およそ半年間に渡る習熟訓練を経て、2023年3月から初作業のプロジェクトとして従事したのは富山県沖の⼊善洋上⾵⼒発電所でした。⼊善洋上⾵⼒発電所では、油圧ハンマー「S-2000」を使用した着床式の基礎となるモノパイル設置から明陽智能(MingYang Smart Energy)の3MW風力タービン「MySE3.0-135」3基を設置。
石狩湾新港洋上風力発電所
2件目のプロジェクトは、北海道の石狩湾新港洋上風力発電所。「BLUE WIND」が石狩湾新港に到着したのは2023年7月。ここでの作業は風力タービン14基の設置のみでしたが、設置した風力タービンは出力が入善洋上風力の倍以上となるSiemens Gamesaの8MW風力タービン「SG 8.0-167 DD」。2023年9月に「BLUE WIND」の施工は完了。
雲林洋上風力発電所(Yunlin Offshore Wind Farm)
2023年9月、清水建設は台湾の雲林洋上風力発電所でのモノパイル輸送・設置について契約したことを発表。
雲林洋上風力発電所は台湾中西部の雲林県沖8~17kmにSiemens Gamesa製の8MW風力タービン「SG 8.0-167」80基を設置する計画で着床式の基礎にはモノパイルを採用。総発電容量は640MW。
「BLUE WIND」は、2024年2月下旬に兵庫県相生を出港し、3月3日に台中港へ到着。2024年の設置作業が開始される前のモノパイルに関するプロジェクト進捗は全80基のうち45基設置完了という状態。全80基のモノパイル設置が完了したのは2024年7月。およそ5ヵ月でモノパイル45基を設置したのは「BLUE WIND」1隻ではなく、NPCCが所有する3,810トン吊りクレーン船「DLS 4200」も同様にモノパイル設置をおこなっており、2隻体制。
今振り返って考えてもよく分からないのは、2023年10月に「BLUE WIND」が一度台湾へ行っているという点。翌月の2023年11月には台湾を出発して日本へ帰ってきました。実機で現場の下見でもしたのでしょうか?ほんとに謎。
海龍洋上風力発電所(Hai Long Offshore Wind)
「Hai Long Offshore Wind」の施工に向けて「BLUE WIND」は2025年3月に室蘭港を出港。2025年4月21日に1基目の風力タービン設置を完了。そして、およそ6か月間で「Hai Long 2」の14MW風力タービン37基を設置しました。
2026年に「Hai Long 3」の風力タービン36基の設置に「BLUE WIND」が従事するのかは分かりませんが、これからも着実に実績を積み重ねていくことを願っています。
























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