海底から引き揚げられた「白虎」のその後
2021年5月に来島海峡付近で発生したケミカルタンカー「ULSAN PIONEER」との衝突事故により水深60mの海底に沈没した「白虎」。
2023年3月から引き揚げに向けた準備作業がおこなわれ、8月25日に「白虎」の船底部分が海面上に姿を現した。そして、翌日26日には引き揚げをおこなった2隻の台船と共に小部湾へ曳航され、その後も日本サルヴェージの「海進」、堀田建設の「第50幸神丸」などの作業船によって引き続き作業がおこなわれていました。
まだ、「白虎」引き揚げ作業は完了した訳ではなく、解体に向けた作業は今も続けられています。
― 「白虎」に関するこれまでの記事 ―
「白虎」を解体場所へ曳航するまでの手順
沈没貨物船 小部湾に移送
(抜粋)船体は一度、小部湾の底に沈められる。船底が上になった逆さ状態のため、9月下旬にもクレーンを使うなどして船底を下側にし、海面まで浮上させる。その1か月後、解体のために広島県江田島市へ運ぶ予定。
https://www.yomiuri.co.jp/local/ehime/news/20230826-OYTNT50197/
引き揚げられた「白虎」の解体に向けた手順として、小部湾への曳航が完了したあとに読売新聞オンラインで掲載された記事のなかに注目すべき文章がありました。
「白虎」を解体場所へ曳航するためのキーポイント
- 船体は一度、小部湾の底に沈められる
- クレーンを使うなどして船底を下側にし、海面まで浮上させる
- 解体のために広島県江田島市へ運ぶ
掲載記事は1カ月以上も前のものなので、取材時と現況の手順が変わっている可能性はありますが、「白虎」を江田島へ運搬するにあたり、ひっくり返った状態から船体を建て起こす作業をおこなうという。そして、その作業には起重機船を使用。
「白虎」の重量、排水トン数は不明なので正確な数字は分かりませんが、気中重量では1万トン以上あると思われる。”船体は一度、小部湾の底に沈められる”という記載から、起重機船を使用して船体を建て起こす作業は「白虎」を小部湾に着底させた状態から開始するのかもしれない。
浮力で浮いている「白虎」を完全に制御した状態で反転させることは難しい。さらに、反転させる動作で部分的に浮力が失われることがあれば、クレーンの転倒にもつながりかねない。「白虎」の船体が常時海底に着底している状態で建て起こし作業を進めるのはより安全な方法と言えるのかも。
最終的に江田島の解体場所へ運搬する方法については、よく分かりません。ただ、船底を下にして正常な向きに直ったとはいえ、いつまた沈むか分からない「白虎」をそのまま曳航するというような許可がおりるとは思えないので、運搬船に搭載した状態で運ぶと思われる。
小部湾へ向かう大型起重機船、10月8日到着予定
全長約170mという大きな船体の「白虎」を吊り上げる時に、荷重を効率的に分散できて、フック間が広いジブ2本の大型起重機船は国内に3隻しかいない。それは、「海翔」「武蔵」「第50吉田号」。
小部湾へ向かう大型起重機船、10月8日到着予定
2023年10月5日08時30分時点では、来島海峡の曳航船入航予定に吉田組の「第50吉田号」とみられる起重機船団が10月7日09時15分に西航船としてあがっていましたが、現在は無くなっています。
しかし、仕向港が小部湾になっていることから「白虎」の作業へ向かうものとみられ、主曳船「双美」のAIS情報を確認すると瀬戸内海ではなく、太平洋側の四国南を通るルートで小部湾へ向かっていました。到着予定は10月8日08時。なぜ、太平洋側をまわっているのかは不明。吊具をフックにぶら下げていて桁下制限をクリアするまでジブを倒せないなどの理由が考えられますが、詳細はわかりません。
大型起重機船の現在地
寄神建設の「海翔」は、出島架橋での作業に向けて宮城県 女川町へ向かう途中の東京湾で停泊中。深田サルベージ建設の「武蔵」は広島県の江田島にいるようなので「第50吉田号」とともに「白虎」の作業に向かうのかもしれません。
よく読まれている記事