洋上風車設置作業に特化したSEP起重機船。日本ではSEP船、SEP型多目的起重機船と呼ばれていますが、世界では WTIV(Wind Turbine Installation Vessel)、 jack-up vessel、jack-up barge などという呼び方をされています。
WTIV(Wind Turbine Installation Vessel)という呼び方からも分かるようにSEP起重機船は風力タービン設置を目的として建造されています。他のクレーン船と異なる特徴としては、レグと呼ばれる4本の脚を海底に突き刺し船体をジャッキアップした状態で作業できるという点。波の影響で船体が動揺するという状況が無くなり、安全に風力タービン設置がおこなえる。逆に言えば、洋上での風車設置作業はそれだけ繊細なクレーン作業が要求される難しい作業といえる。
世界で活躍するSEP起重機船に搭載されたクレーン能力ランキング。日本でも相次いで建造が行われ、世界トップクラスのSEP起重機船の中に日本企業もランクインしているので注目。
#6 「CP-16001」1,600トン吊り
五洋建設・鹿島建設・寄神建設の3社による共同出資会社「PKYマリン株式会社」(出資比率 五洋:65%,鹿島:30%,寄神:5%)が保有・運営する1,600トン吊りSEP起重機船「CP-16001」。建造発表時に公表された投資額は185億円。
建造が行われたのは、シンガポールの南、インドネシアのバタム島にあるPaxOcean Graha造船所。当初は2022年9月に完成予定でしたが、まだ完成のアナウンスはありません。ですが、近いうちに引き渡しが行われると思うのでランキングには入れておきました。
#6 「Aeolus」1,600トン吊り
オランダのVan Oordが所有する自航式の1,600トン吊りSEP起重機船「Aeolus」。2014年にドイツのハンブルグにあるJ.J Sietasで完成し、建造当時は900トン吊りのクレーンが搭載されていましたが、2017年から2018年にかけてオランダのロッテルダムにあるDamenのShiprepair yardでクレーンの載せ替えと船体の甲板を1m高くする大規模なアップグレードを行い、現在の1,600トン吊りになった。
さらに、現在2度目のアップグレードをロッテルダムで行っている。クレーンブームを133mに延長する改造は、2023年初頭に完了する予定。
#6 「Bold Tern」1,600トン吊り
ノルウェーのFred. Olsen Windcarrierが所有する自航式の1,600トン吊りSEP起重機船「Bold Tern」。2013年にアラブ首長国連邦のドバイにある Lamprell PLC で建造され、当時は800トン吊りのクレーンが搭載されていました。2022年にシンガポールのKeppel FELS yardで行われたアップグレードによりクレーンを載せ替えて1,600トン吊りとなり、船体幅も39mから45mへ広がった。この改造によって15MW風車の設置が可能になったそうです。
#4 「Bai He Tan」2,000トン吊り
中国電力大手の中国長江三峡集団が出資した自航式の2,000トン吊りSEP起重機船「Bai He Tan」(白鹤滩)。中国船舶集団(CSSC)傘下の中船黄埔文沖船舶有限公司(CSSC Huangpu Wenchong Shipbuilding)で建造され、2022年9月28日に完成・引き渡しが行われた。
最大で15MWの洋上風車設置が可能、自船の甲板スペースには8MW風車機材を4セット、12MW風車機材なら2セットを搭載して運搬することが出来る。
#4 「LongYuanZhenhuaSanHao」2,000トン吊り
江蘇龍源振華海洋工程有限公司の2,000トン吊りSEP起重機船「LongYuanZhenhuaSanHao」(龙源振华叁号)。中国の上海振華重工で建造され、2018年5月に引き渡しが行われました。
船体の4隅に出力は不明ですがアジマススラスターを搭載しており、DP1の自動船位保持装置が備わっている。ただ、船型はカットアップが入っているだけの台船タイプで自航式かどうかは不明。
搭載されているクレーンは船体の左右に対して中央に設置されており、現在のSEP起重機船で主流となっているLEC(Leg Encircling Crane)では無い。
#2 「BLUE WIND」2,500トン吊り
清水建設が建造費400億円、技術開発などのコストを含めると約500億円という巨額を投じて建造した自航式SEP起重機船「BLUE WIND」。SEP起重機船としては日本国内最大の2,500トン吊りのクレーンが搭載されている。
自航式という特徴の他に、伸縮するテレスコピッククレーンという特徴がある。揚程が必要な風車タービンの設置作業ではブームを伸ばして揚程を確保、最大で158.5m、吊り上げ能力は1,250トン。逆に風車タービン設置に比べて揚程が必要ない風車基礎の設置では、ブームを縮めた状態で最大吊り上げ能力2,500トンという性能を発揮。ブームを伸ばした時と縮めた時の揚程差は42mになる。15MW級の風車設置が可能。
#2 「Longyuan Zhenhua 6hao」2,500トン吊り
江蘇龍源振華海洋工程有限公司の2,500トン吊りSEP起重機船「Longyuan Zhenhua 6hao」(龙源振华陆号)。あまり情報が公開されていないので詳細がヴェールに包まれている謎の多い船ですが、世界でも珍しい唯一無二の特徴を持っています。
その特徴はSEP起重機船の肝となるレグに関係するもので、一般的なSEP起重機船でもレグの下端は船体をジャッキアップした時に大きな反力で自船の重量を支えるためにパイルシューと呼ばれるレグよりも広い面で海底に接地する構造になっていますが、「Longyuan Zhenhua 6hao」ではそのパイルシューに切り離した船体下部を使用する構造になっている。世界のSEP起重機船の中でもこのような構造は唯一「Longyuan Zhenhua 6hao」のみ。
中国では「坐底式海上风电安装平台」という呼び方で紹介されており、日本語に翻訳すると「着座式SEP起重機船」。
#1 「Voltaire」3,200トン吊り
Jan De Nulが所有する自航式の3,200トン吊りSEP起重機船「Voltaire」。2020年5月にsteel cutting ceremonyが行われ、中国の江蘇省 南通市にあるCOSCO Shipping(中国遠洋海運集団有限公司)で建造が進められ、2022年12月15日に完成・引き渡し。
搭載されているHuisman製のクレーンは3,200トン吊りでSEP起重機船としては世界最大。建造途中の2022年9月には、台風12号(ムイファー,Muifa)の直撃した影響でクレーンとヘリデッキに損傷を受けるという事故が発生。中国での引き渡し時にはヘリパッドが撤去され、骨組だけの状態でした。
今後の作業予定は、2023年春から風車タービンの設置が行われるDogger Bank AでHaliade-X 95基の設置を行う予定。
建造中のSEP起重機船
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