今治沖の貨物船「白虎」引き揚げ作業 本格的に開始
2021年5月に来島海峡で発生した貨物船「白虎」とケミカルタンカー「ULSAN PIONEER」の衝突事故により水深60mの海底に沈没した「白虎」。今年の3月4日から貨物船「白虎」引き揚げに向けた準備作業として吊り上げ用チェーンの取り付けが行われていましたが、今治海上保安部発表の海上安全情報によると6月12日から7月19日の間で、作業船2隻により「白虎」を海面近くまで引き揚げて小部湾まで曳航する作業が行われるという。
気になる引き揚げ方法とは?
引き揚げ方法について詳細は公表されていないので不明ですが、公表されているのは以下の情報。
- 作業船2隻を使用して海面付近まで引き揚げ
- 沈没位置で海面付近まで引き揚げる吊具はチェーン
- 海面付近まで引き揚げた「白虎」を小部湾まで曳航
船名 | 白虎 |
船種 | RO-RO貨物船 |
総トン数 | 11,454トン |
長さ | 169.98m |
幅 | 26.0m |
建造年 | 2020年 |
引き揚げ準備として「白虎」の船体にチェーンを取り付ける作業を行っていたのは、日本サルヴェージの多目的作業台船「海進」。AIS情報によると引き続き現場海域で作業を行っているようですが、さすがに「海進」に搭載されているクローラークレーンで引き揚げられるレベルの重量ではない。北海道知床半島で観光船「KAZU1」を引き揚げた時のように、甲板上のウインチを使用する方法が考えられますが、結構な台数を設置する必要があり、デッキスペース的に不可能。
チェーンプラ―による引き揚げ
作業船2隻という表現、引き揚げた船体を気中まで吊り上げず水中で曳航するという点、そして沈没している海域の水深が60mと深い事から可能性が高いのは、「セウォル号」引き揚げと同じような方法だと思われる。「白虎」の排水トン数は分かりませんが、国内最大の起重機船「海翔」1隻では到底引き揚げられないレベルの重量であることは間違いない。海面付近まで引き揚げた状態で曳航することを考えると複数の大型起重機船で相吊りするのはリスクが高い。
船名 | 白虎 | セウォル号 |
総トン数 | 11,454トン | 6,825トン |
長さ | 169.98m | 146.61m |
幅 | 26.0m | 22.2m |
沈没場所の水深 | 60m | 44m |
「セウォル号」よりも船体が大きく、沈没した場所の水深が深い「白虎」のサルベージ。衝突・沈没時に船体が分断したという情報は今のところ出ていない。「白虎」の船体全体を一度に引き揚げるという作業は、私が知る限り国内に前例は無く、世界的に見ても難易度の高い作業になることが予想されますが、ほんとにやるんでしょうか。
海面付近までの引き揚げと小部湾への曳航は7月中旬頃に行われる予定。
水深44mの海底から引き揚げられたセウォル号
八戸沖座礁船のサルベージ方法
「白虎」の引き揚げ方法は、あくまでも推測に過ぎませんが、八戸港沖で座礁した木材チップ専用船 CRIMSON POLARIS(クリムゾン・ポラリス)の撤去方法は「チェーンプラー」を使用することが明らかにされています。
「白虎」と「クリムゾン・ポラリス」で大きく違うのは、引き揚げる船体の大きさ。「クリムゾン・ポラリス」で引き揚げるのは船尾部分だけで、さらに機関室、居住区、船倉部分に分割している。最初に撤去する機関室の引き揚げは、今年10月下旬から実施される予定となっている。
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