八戸沖で撤去中のクリムゾン・ポラリス、船尾部分の引き揚げ断念
2024年7月29日、八戸沖で撤去作業が進められている木材チップ専用船 CRIMSON POLARIS(クリムゾン・ポラリス)について、自治体の関係者など20人以上が出席した非公開の説明会で船体の完全撤去を断念し、残置するという方向で関係者と調整していることを明らかにしました。
クリムゾン・ポラリスが八戸沖で座礁したのは、およそ3年前にあたる2021年8月11日。座礁した翌日には船体が分断し、広範囲に油が流出。約2週間後に船首部分は撤去されましたが、残る船尾部分の撤去は難航。海面上に見えていた部分も波浪による影響で見えなくなり、天地が逆転した状態に。2023年末に船尾部のうち機関室を港内に引き込み、2024年3月にフローティングドックへ搭載して広島へ向けて搬出。八戸沖には船尾部のうち船倉と居住区が残されている状態になっていました。
船体の完全撤去を断念する理由について、居住区の多くが海底の土砂に埋まり、引き揚げ作業は技術的に不可能なためだとしています。
今後は、海底で居住区の開口部を塞いだりする作業をおこない、早ければ8月末から9月上旬にも全ての作業を終えたい考えだという。
「クリムゾンポラリス」座礁事故に関する撤去作業のタイムライン
- 2021年
8月11日座礁事故 発生青森県八戸港沖で錨泊中に強風により流され座礁。事故当時、船に乗船していた乗組員21名(中国人、フィリピン人)は、全員無事。
- 8月12日船体分断
船体分断により油流出。流出した油の量は388KL(推定)。座礁時点で「クリムゾンポラリス」が保有していた油の量は、重油約1,550トンと軽油約130トン。
- 8月27日船首部を八戸港内に移動
自船浮力で浮いている船首部を八戸港内に引き込み、岸壁に係留した状態で船内に残る油の抜き取り作業開始
- 9月13日船首部の曳航開始
9月11日に船首部の油抜き取り作業が完了、13日に八戸港を出港して広島県江田島へ向け船首部の曳航開始
- 9月25日船尾部の油抜き取り完了
八戸港沖に残る船尾部の油抜き取り作業を9月14に開始。9月25日に完了
- 10月8日船尾部の撤去作業も日本サルヴェージが引き続き継続
事故発生後から現地で油抜き作業にあたっていた日本サルヴェージが撤去作業についても引き続き継続しておこなうことを船舶管理会社である美須賀海運株式会社が発表(source:https://misuga-kaiun.co.jp/news/wordpress/wp-content/uploads/2022/09/20211008.pdf)
- 11月撤去準備作業中、潜水士がガス爆発に巻き込まれる事故発生
船尾部の分割撤去に向けて、船体に解体用チェーンを通すための穴を開ける作業中に潜水士がガス爆発に巻き込まれて肩や胸を打撲する事故が発生
- 2022年
9月28日地元の漁業者などを対象にした非公開の説明会10月初旬に大型起重機船到着、そして10月中旬に機関室部分の吊り上げ撤去という工程説明があったという
撤去作業完了予定:2023年1月
- 10月初旬海面上から船尾部分が見えなくなる
事故後、船尾部分は反転して船底が上になった状態で海面上に少し見えていましたが、海面上から姿が見えなくなる
- 10月23日起重機船「海翔」八戸港 到着
- 12月1日起重機船「海翔」八戸港 出港
入港後、何度か引き揚げを試みるためチャレンジはしていましたが、海象状況が悪く作業中止に。
- 12月9日「チェーンプラー」を使用した引き揚げ方法に変更
地元漁業者などを対象にした非公開の説明会で、船尾部分の引き揚げ方法について大型起重機船ではなく「チェーンプラー」を使用した施工方法への変更を提案。11ヶ月の工程遅延が明らかに。
撤去作業完了予定:2023年12月末
- 2023年
1月24日「チェーンプラー」使用の撤去工程を提示地元漁業者などを対象にした非公開の説明会で、引き揚げ方法を「チェーンプラー」に変更した工程を提示。機関室部分を2023年10月下旬から11月上旬におこない、撤去完了予定は工法変更を提示した時と変更なく、2023年12月末。
撤去作業完了予定:2023年12月末
- 8月31日使用予定の大型台船が遅れるため工程遅延
地元漁業者などを対象にした非公開の説明会で、引き揚げで使用予定の大型台船が現在従事している作業に遅れが生じているため、八戸沖撤去の工程が遅れるというもの。1ヶ月の工程遅延。
撤去作業完了予定:2024年1月末
- 10月24日機関室部分の引き揚げ作業開始
作業を開始した10月24日午後に油が流出し、オイルフェンスの外にも漏れたと撤去作業をおこなうサルベージ会社から海上保安部へ通報あり
- 12月14日機関室部分に想定外の切れ込みが発生し工程遅延
地元漁業者などを対象にした非公開の説明会で、機関室部分を台船2隻で吊上げた際に想定外の切れ込みが発生したため、別の位置に吊り上げ用のチェーンを設置し直す必要があるため工程が遅れるという説明。2カ月の工程遅延。
撤去作業完了予定:2024年3月末
- 12月31日八戸港の防波堤内側へ機関室部分を移設する作業が完了
台船2隻による機関室部分の吊り上げ作業は12月30日午前9時頃に開始。そして、午後4時半頃から曳航開始したものの機関室が海底に接触して進めないトラブル発生。30日夜から31日午前4時半頃にかけて再び吊り上げを実施。その後、午前5時頃に曳航を再開して午前7時20分頃に中央防波堤の港内側へ到着。
- 2024年
1月31日フローティングドック「宏洋12000」八戸港 到着 - 2月11日機関室部分の搭載作業中にフローティングドックの甲板破損
- 2月24日機関室部分をフローティングドックへ搭載完了
- 3月4日広島県江田島へ向けてフローティングドック八戸港 出港
- 3月4日機関室部分搭載作業の遅れから工程遅延
撤去作業完了予定:2024年5月中旬
- 5月8日2024年5月中旬の撤去完了は困難な見込み
遅延の見込みなどについては、5月16日の関係者説明会で発表予定
- 5月16日撤去完了時期の延期
撤去作業完了予定:2024年8月中旬
- 7月29日船尾部分の引き揚げ断念
海底で居住区の開口部を塞いだりする作業をおこない、早ければ8月末から9月上旬にも全ての作業を終えたい考え
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