入善洋上風力で初の風力タービン設置を行う「BLUE WIND」
富山県入善町沖の「入善洋上風力発電所」で洋上風力タービン設置を行っている清水建設のSEP起重機船「BLUE WIND」。出力3MWの風力タービン「MySE3.0-135」3基について基礎のモノパイル設置から風力タービン設置までを一貫して施工している。
チェック 入善町沖洋上風力で設置する明陽智能の風力タービンが天津港を出港
清水建設が500億円を投じて建造したSEP起重機船「BLUE WIND」は、2022年10月の完成・引き渡し以降、広島の江田島・呉周辺で習熟訓練を行い、施工に向けた準備を進めていた。2023年3月18日に「BLUE WIND」は広島を出港し、関門橋の桁下制限により九州南端を回るルートで日本海へ出て拠点港となる石川県七尾港に入港。
チェック SEP船「BLUE WIND」 ⼊善洋上⾵⼒の洋上風車建設に着手
4月上旬から富山県入善町沖の海域でモノパイル打設作業を開始。建造後「BLUE WIND」にとって初めての施工、初陣ということもあり建設スピードはゆっくりしていますが着実な作業で工事を進め、間もなく3基の風力タービン設置を完了しようとしている。
「入善洋上風力発電所」は、3基の洋上風力タービン設置が終わると性能検証など運転に向けた準備を行い、2023年9月の運転開始を目指している。一方、施工を完了した後のSEP起重機船「BLUE WIND」は、北上して北海道へ向かい「石狩湾新港洋上風力発電所」でSiemens Gamesaの出力8MW風力タービン「SG 8.0-167 DD」14基の設置を行う予定。
チェック 石狩湾新港洋上風力でジャケット基礎杭56本打設完了
入善洋上風力で「BLUE WIND」が使用した巨大油圧ハンマー
前から気になっていましたが、着床式風力タービンの基礎となるモノパイルを打設した機材について。
今回「BLUE WIND」が使用した油圧ハンマーを製造しているオランダのメーカー IQIP が自社製品による施工として記事を掲載していました。
SUCCESFUL INSTALLATION OF THE MONOPILES AT THE OFFSHORE WINDPROJECT NYUZEN TOWN
(入善町洋上風力発電プロジェクトにおけるモノパイルの設置に成功)
https://iqip.com/succesful-installation-of-the-monopiles-at-the-offshore-windproject-nyuzen-town/
掲載記事によると、「入善洋上風力発電所」のモノパイル打設に使用した油圧ハンマーは、IQIP のSシリーズ「S-2000」とのこと。秋田港・能代港洋上風力発電所でSEP船「SEAJACKS ZARATAN」が使用していた油圧ハンマーは「S-1200」でした。
Sシリーズ製品名の数字は油圧ハンマーの最大打撃エネルギーを表している。「S-1200」であれば1,200kJ、「S-2000」であれば2,000kJ。
打撃エネルギーの単位として使用されている ”J”(ジュール) は、エネルギーや熱量を表す単位として使用され、”1ジュール” は標準重力加速度の下で 102.0g の物体を1m持ち上げる時の仕事に相当する。「BLUE WIND」が今回使用した「S-2000」の2,000kJという最大打撃エネルギーは、1J の200万倍なので204トンの物体を1m持ち上げるエネルギーに相当する。ラムと呼ばれるハンマー内部の錘は100トン、油圧ハンマーの本体は長さ17.37m、重量230トン。
打設時は常に最大打撃エネルギーという訳ではなく、「S-2000」であれば最小打撃エネルギー220kJ~最大2,000kJの間で調整しながら施工を行う。
IQIPが製造している油圧ハンマーには「S-2000」以上に強力なものがあり、Sシリーズで最大は「S-4000」。洋上風力向けに開発されたIQシリーズでは「IQ6」という出力100%で5,500kJ、最大120%の出力で打撃エネルギー6,600kJという想像を絶するオバケ油圧ハンマーも製品ラインナップに並んでいる。
中国でも大型油圧ハンマーの開発が進められており、2023年3月に振華重工の子会社にあたる江蘇龍源振華海洋工程有限公司は、打撃エネルギー6,000kJ以上、直径9m以上のモノパイル打設が可能な超大型油圧ハンマー開発プロジェクトを発表している。
他にも様々なIQIP製の機器を使用
SEP起重機船「BLUE WIND」のモノパイル設置では、油圧ハンマー「S-2000」の他にもIQIP製品が使用されていました。パイルガイドツール(PGT,Pile Guiding Tool)とフランジ付きパイル建て起こしツール(FPUT,Flanged Pile Upending tool)。
パイルガイドツール(PGT)には2つの役割があり、まず1つ目はSEP船の甲板上に倒した状態で運搬してきたモノパイルを建て起こす動作のサポート。そして、2つ目は建て起こした後の位置決め用ガイド。位置決めが完了してモノパイルを着底・自沈させた後は、パイルガイドツールにより保持した状態で玉掛けを外して油圧ハンマーに段取り替えを行う。
フランジ付きパイル建て起こしツール(FPUT)は、モノパイルのフランジを利用して建て起こしに使用する専用の吊具。建て起こし時に変化するモノパイルの姿勢に追従する向きでシャックルを取り付ける吊りピースが設置されている。今回使用されたものは、最大重量750トンまで使用可能ということなので、逆にモノパイル重量は750トン以下であることが推測できる。
気になる一体化した風力タービンブレードの設置方法
モノパイル設置方法や使用機材は分かりましたが、もう一つ気になっているのは3枚のブレードを一体化した状態で設置する方法。いろんな画像を見て、3枚のブレードをハブに接続して水平に積み込んでいるのは知っていましたが、どうやって建て起こすんだろうと思っていました。
設置を行う動画を見ると、甲板に積んだ油圧クレーンで相番しているようです。そして、新たな疑問が。ブレードの玉掛けはどうやって外したんだろう。高所作業車も積んでるんですかね。
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