アメリカのジョーンズ法に準拠したSEP式の洋上風力設置船の建造構想が発表されました。これまでにもいくつかのジョーンズ法に準拠した設置船構想がある中で、驚くような斬新さは無いようです。
洋上風力設置船「FEEDERDOCK」
2022年9月26日、ドイツのハンブルグを拠点とする ONP Management とアメリカのボストンを拠点とする Renewable Resources International のコンソーシアムはジョーンズ法に準拠した洋上風力設置船「FEEDERDOCK」を開発したことを発表。
FEEDERDOCK: Game-Changing, Jones Act Compliant Offshore Wind Installation Solution
(FEEDERDOCK:ゲームを変える、ジョーンズ法準拠の洋上風力設置ソリューション)
2022-FEEDERDOCK | ONP Management (onp-management.com)
記事によると、実際に建造が開始されるのは2023年の予定。完成し、アメリカの海域で運用する準備が整うのは2026年の予定。
3,000トンのクレーンを搭載
SEP式の洋上風力設置船「FEEDERDOCK」には、3,000トン吊りクレーンが搭載される予定。レグの長さは131m、最大70mの水深で作業可能。
設置を想定している風車規模は驚きの25MW。クレーンの最大揚程はデッキ上から182m。
船体寸法などの概要は以下の通り。
船名 | FEEDERDOCK |
クレーン能力 | 3,000トン |
長さ | 205.0m |
幅 | 67.2m |
レグ長さ | 131m |
作業水深 | 最大70m |
宿泊設備 | 120人 |
最大設置風車規模 | 25MW以上 |
最大設置基礎重量 | 2,800トン |
連結タグバージの使用
ここまでの説明だと通常のSEP起重機船と比べて何も変わらない感じですが、「FEEDERDOCK」最大の特徴は船体後部に切欠きが設けられている点。その切欠きに風車部材を積んだ台船(ATBs,Articulated Tug Barges)を連結して一体化させた状態でジャッキアップして施工を行う。
出典:ONP Management
この施工方法は以前、Maersk Supply Service が発表したSEP起重機船に似ています。
両者の違う点:運搬台船の受け入れが ジャッキアップ前 or 後
両者の違う点として、「FEEDERDOCK」はレグを着底させてるけどジャッキアップはしてない状態で運搬台船を受け入れし、連結後にジャッキアップという流れ。一方、Maersk Supply Service の方は完全にジャッキアップした状態で運搬台船を係留、台船上の風車資材が積まれたトレイのみをリフトアップするという方法。
両者の施工方法を見た感想としては、「FEEDERDOCK」の方が現実的で安全に施工できそうな感じ。Maersk Supply Service のアイデアを取り入れつつ、弱点を改善したアップグレード版といったところでしょうか。
共通するのは “fixed-to-fixed”(固定から固定へ)
着床式の洋上風車設置作業にSEP船以外の一般的なクレーン船を使用して施工すると、ジョーンズ法に適応している既存クレーン船を選定できるというメリットはありますが、 “floating-to-fixed” (浮体から固定へ)という状態になり、施工効率が悪く安全面でもリスクが高くなる。
やっぱり、安全で施工効率が良いのはSEP船による施工。レグでジャッキアップし、固定された船体のクレーンを使用して着床式の固定された洋上風車を組み立てる。“fixed-to-fixed”(固定から固定へ)という施工方法が望まれているようです。
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