2020年5月、「Orion」のクレーン倒壊事故から2年が経過。
完成した「Orion」による初仕事。
事故が起きたあの日、こんな日が来るなんて想像も出来なかったはず。
人生ってそんなもんですよね。その時は「うわぁぁ。」ってなるけど、振り返るとそんな事もあったなぁ、みたいな。
辛いことがあっても時間が経てば記憶は薄れていって振り返る時がいつか来る。諸行無常。
ということで「Orion」が打設した世界最大の重量2,000トン以上のモノパイルについて。
世界最大のモノパイル打設
ニュース記事より使用機材の情報が詳しく記載されている IQIP の情報を引用。
IQIPは今週、DEMEとParkwindに加わり、最初のモノパイルがArcadis Ost I風力発電所に設置されるため、輸入マイルストーンを祝います。風力発電所は、直径10メートルのモノパイルを使用した最初のプロジェクトの1つであり、世界最大の風力タービンの本拠地となっています。
このプロジェクトでIQIPの革新的なツールのいくつかを組み合わせることで、DEMEとParkwindは、従来の設置方法と比較して、デッキ上の安全性が向上し、環境への影響を最小限に抑えながら、より迅速かつ効率的なモノパイル設置を実現します。
プロジェクトの設置作業のために配備されたIQIPの最新機器:
S-4000 ·ハイドロハンマー新しい7000 mmスリーブ付き
アルカディス・オストIに初めて設置されたモノパイル:IQIPのマイルストーン
新機能脈拍ノイズ対策ソリューション
新型2450tフランジ付きパイル Upending ツール(フプット)
新型3000tコンビリフティングツール(ティッカー)
今回の「Orion」によるArcadis Ost 1のモノパイル打設に関して色んな技術が採用されているようです。
S-4000 Hydrohammer
モノパイル打設に使用されている油圧ハンマーは「S-4000」。全長20m、重量430トン。
構造としては、上部の白い部分が油圧ハンマー本体、下側の赤い部分がスリーブと呼ばれる打撃エネルギーを伝える杭に被せるキャップ。間のオレンジと青の部分は振動騒音を低減させる「PULSE」という装置。
PULSE:Piling Under Limited Stress Equipment
PULSEとは、Piling Under Limited Stress Equipmentの略。杭打設時の負荷低減装置。
低減されるのは打設時の騒音と杭の疲労。騒音低減効果は5~12dB。杭の疲労低減効果は最大で60%も減少するらしい。”杭の疲労低減”と聞くと、打設時間が増えてしまいそうですが、打撃効率は10%アップだそうです。
油圧ハンマーの規格 | 重量 | 高さ |
S-90 | 1トン | 1m |
S-3000 S-4000 | 125トン | 3.6m |
今回使用しているPULSEの重量は125トン。という事は、油圧ハンマーの全体重量は430トンではなく555トンなのかも。
FPUT:Flanged Pile Upending Tool
FPUTとは、Flanged Pile Upending Toolの略。フランジの付いた杭を建て起こす器具。
詳細は分かりませんが、杭頭部のフランジを利用して杭を建て起こす器具。操作はオペレーターがワイヤレス遠隔操作可能。
規格ラインナップの最大使用荷重は1,600トンまでだったので、今回打設する重量2,000トン以上のモノパイルに合わせて、新規格2,450トン用を使用。
CLT:Combi Lifting Tool
CLTとは、Combi Lifting Toolの略。組み合わせ出来る揚重器具。
👆上の画像は組み合わせのベースとなるソケット部材。このソケットは、使用する各揚重器具と簡単に接続する事が出来る。先ほどのFPUT(フランジ付き杭建て起こし器具)に加え、トランジションピース揚重器具や油圧ハンマー用の揚重器具とも接続可能。
Huismanにも似たような「Universal Quick Connector (UQC)」がありますが、両社ともコンセプトは作業の迅速化とリスクの高い作業を無人化するという点。
「Arcadis Ost 1」の概要
「Arcadis Ost 1 」は、ドイツのリューゲン島から北東へ約19kmのバルト海に位置する建設中の洋上風力発電所。
風車27基に対して設置するモノパイルは28本。1本は洋上変電所が設置されるようです。
モノパイル打設後の風車設置には「Rotor Nacelle Assembly (RNA)」という施工方法が採用されるようです。そして作業する起重機船は「Thialf」。
風車設置作業が始まればお伝えいたします。
現在「Thialf」は、現場へのルート上にある橋を通過するために改造中。
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