橋崩落事故の概要とコンテナ船「DALI」の動静

コンテナ船「DALI」がアメリカのメリーランド州ボルティモアに架かるフランシス・スコット・キー橋の橋脚に衝突したのは、2024年3月26日午前1時30分頃(現地時間)。
衝突のおよそ40分前にあたる3月26日00時39分、シーガート・マリン・ターミナルを出港したコンテナ船「DALI」はスリランカのコロンボに向かっていた。01時07分に航路INした後、01時24分に最初のブラックアウトが発生し、船首は衝突する橋脚に向かって右舷へ振れ始める。その後、衝突までの5分間にブラックアウトから復帰、再度ブラックアウト、復帰という状態の中、水先案内人と船橋のチームは進路変更を試みたものの、橋に非常に近い場所で推進力を失ったため、その措置は効果がなかったという。そして、01時29分に橋脚へ衝突。
コンテナ船「DALI」がフランシス・スコット・キー橋へ衝突した際、橋には道路整備員7名と検査官1名がいたという。そして、道路整備員7名のうち6名が死亡。衝突時の瞬間を映した映像を見ると、橋に衝突する直前まで橋面上を車両が通行していましたが、衝突時に通行する車両のライトは無くなっていた。NTSBはコンテナ船の操縦士、陸上のディスパッチャー(運航管理者)、そしてメリーランド州交通局が橋の通行を迅速に停止させたことで、より大きな人命損失を防いだと判断している。
コンテナ船「DALI」がフランシス・スコット・キー橋に衝突する瞬間の映像
A solid quick breakdown of the apparent multiple power failures on the 'Dali' ahead of impact with the Francis Scott Key Bridge in Baltimore, MD.
— Moshe Schwartz (@YWNReporter) March 26, 2024
I'm looking to credit whoever created this. (Dm) pic.twitter.com/NV1zSQHYkU
崩落した橋の大部分は川に落下しましたが、橋桁の一部がコンテナ船「DALI」の船首部分に落下して船体は座礁。5月13日に船首部分の橋桁を撤去するための爆破による精密切断を実施。衝突事故から55日後の5月20日、コンテナ船「DALI」の再浮上作業がおこなわれ、事故現場から2.5マイル(約4.6km)離れたシーガート・マリーン・ターミナルへの移動が完了。

2024年11月13日、コンテナ船「DALI」はアメリカを出港して中国の福建省福州市羅源県にある福建華東船廠有限公司に到着。損傷部分の修理などをおこない、2025年1月21日に運航再開。
VDRとは、Voyage Data Recorder、航海データ記録装置のこと。
海難事故の原因究明を目的として、2002年7月以降に建造された旅客船および総トン数3,000トン以上の貨物船に対し、SOLAS条約によって搭載が義務付けられている。
航海に伴う日付・時刻を中心に船位、船速、船首の方位等に加え船橋音声や通信音声、レーダ画像、船橋等に伝えられるアラームといった各種情報をデジタルデータとして圧縮し、船体外部に設けられた保管ストレージに記録。保管ストレージは船舶の火災、爆発、衝突、沈没に備え、耐熱、耐圧、耐衝撃構造となっている。

出典:Wikipedia | Hervé Cozanet – http://www.marine-marchande.net/, CC 表示-継承 3.0, リンクによる

保管容器の上部に水中ロケータービーコンが取付られている
出典:Wikipedia | Edward Betts – 投稿者自身による著作物, CC 表示-継承 4.0, リンクによる
- 3月26日
00時39分ボルティモアのシーガート・マリン・ターミナルを出航 - 01時07分航路IN
- 01時24分針路141度、8ノットで航路を航行
- 01時24分
59秒複数の警報が鳴り響き、VDRは船の電子システムデータの記録を停止電子システムの記録は停止したが、バックアップ電源によりブリッジ内の音声録音は継続
- 01時26分
02秒VDRは船の電子システムデータの記録再開 - 01時26分
39秒パイロットがVHF無線でタグボートの救援を要請※この時、パイロット協会の司令員がフランシス・スコット・キー橋を運営するMDTA(メリーランド交通局)の当直職員に連絡。この連絡によりMDTAは橋の通行止めに関して早期警告を得ることができたため、結果多くの命を救うことが出来た。
- 01時27分
04秒パイロットがコンテナ船の左舷アンカー投錨を指示(衝突2分前) - 01時27分
25秒パイロットはVHF無線でコンテナ船「DALI」が電力喪失し、フランシス・スコット・キー橋に近づいていることを警告、橋の閉鎖を要請 - 01時29分7ノットで航行、衝突音が聞こえ始める
- 01時29分
33秒衝突音が収まる - 01時29分
39秒パイロットがVHF無線で橋の崩落を報告
- 2024年
3月26日コンテナ船「DALI」がフランシス・スコット・キー橋へ衝突 - 5月13日船首部分に載っていた橋桁を爆破により精密切断
- 5月20日船体再浮上、シーガート・マリーン・ターミナルへ移動
- 6月25日バージニア州ノーフォークへ移動
コンテナ船「DALI」積まれていたコンテナを荷卸し
- 9月19日中国へ向け出港
- 11月13日中国の福建省福州市羅源県にある福建華東船廠有限公司へ到着
- 2025年
1月21日運航再開


















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