国内企業の會澤⾼圧コンクリート株式会社(本社 北海道苫小牧市)は、グリーンアンモニア製造艦「GAPS」の実証機開発に着手することを発表。10MW級の浮体式洋上風車にコンテナ型のアンモニア製造モジュールを搭載し、洋上でアンモニアを製造する。
グリーンアンモニア製造艦GAPS一号艦「MIKASA」
Green Ammonia Production Shipの頭文字を取ったGAPSという開発コードで実証機開発に乗り出したのは、北海道 苫小牧市に本社を置く會澤⾼圧コンクリート株式会社。
プロジェクトは、浮体式洋上風車の電力を使用してアンモニア(NH3)を製造し、貯蔵するという単体ではなく、NH3の海上輸送や陸上でのNH3の運搬や水素サービスステーションでのNH3から水素への転換装置までを視野に入れている。
”世界に例のない地域分散型のグリーン水素サプライチェーンモデルを構築する”という壮大なプロジェクト。
GAPSの実証機開発とアンモニア並びに水素の製造モジュールのプロトタイピングについては、特別目的会社(仮称Shin-Energy Inc.)を近く設立し、投資家や内外の事業会社のパートナーを募りつつ進めて参ります。10MWの巨大風車がそびえるグリーンアンモニア製造艦が我が国の領海に大量に浮かぶ、その第一歩を記すため、GAPS一号艦は「MIKASA」と命名、「地球の興廃この一戦にあり」の決意のもと実証機開発にあたる考えです。
洋上風力事業を本格化、グリーンアンモニア製造艦「GAPS」の実証機開発へ WIND EXPO に出展 | AIZAWA (aizawa-group.co.jp)
2022年8月31日から3日間、幕張メッセで開催された世界最大級の新エネルギー総合展「第2回スマートエネルギーWeek秋」に出展。
水素キャリアとしてアンモニアを使用
水素は燃焼しても地球温暖化の原因となる二酸化炭素をまったく排出しない、究極のクリーンエネルギー。一方で貯蔵、運搬、取り扱いには従来の化石燃料よりもインフラの整備などに費用がかかる上、水素が金属の内部に浸透することにより脆くなる水素脆化の問題など、安全かつスムーズに運搬して使用する現実的な方法が確立されていない。
この問題を解決する方法として、アンモニア(NH3)を水素キャリアとして使用。
出典:AIZAWA Group.
まだ実証機開発段階なので、これから詳細を詰めていく部分が少なくないと思われますが、全体的に理にかなってて効率的な感じ。
10MW級浮体式洋上風車
グリーンアンモニアの製造に必要な電力は、浮体上の10MW級風車によって発電する。浮体式洋上風力に10MW級タービンというだけで現状、商業ベースでの設置・運用・量産が可能になれば評価されるレベルなのでそう簡単なものではないでしょう。
出典:AIZAWA Group.
浮体はコンクリート製で、形状は1辺68mの正三角形の頂点にフローターを配置した巨大な半潜水型。フローターは、直径18m、高さ42mの円筒形で、下端は直径28mになっていてひと回り大きな形状。
フローターの製作には、コンクリート3Dプリンターを使用。壁枠を積層造形したうえで構造体コンクリートを充填して一体化させるため鋼製型枠を必要とせず、工期の短縮とコスト削減が見込める。浮体性能を向上させるため壁枠内部には軽量コンクリートを充填。
3つのフローターを繋ぐ梁部材には、規格大量生産が可能な直径1,200mmの超大型PHCパイル(Pretensioned Spun High Strength Concrete Piles)を採用。PHCパイルとプレキャストコンクリート製のジョイント部材を格子状に配置し、全ての方向にプレストレスを加えることで、強靭な巨大浮体モデルを構築。
社名にもコンクリートが入っていますが、生コン、コンクリート2次製品などコンクリート関連のノウハウや知識が豊富でコンクリート製のフローター部分の製作は問題なく進みそうな感じがします。
最後に
水素キャリアとしてグリーンアンモニアを利用するというアイデアは今後、世界でも進んでいきそうな気がしますし、どこかで見かけたような気もするので是非スピード感を持って取り組んでもらいたいところです。
コンクリートを活かすという目的で浮体式が採用されているような気がしましたが、着床式でも「Fécamp offshore wind farm」(フランス)の重力式基礎や「カマウ洋上風力発電所」(ベトナム)のPHC杭による基礎など、コンクリートを使用する方法があります。
水素キャリアというアイデアを最大限に活用できる工法が他にもあるかもしれません。
最後に、浮体式洋上風車の係留方法には記載がありませんでしたが、「魚雷杭」は採用しない方がいいかもしれませんね。「三笠」+「魚雷杭」はちょっとインパクト強すぎて。。。
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