ニューヨーク沖のサウスフォーク洋上風力発電所でモノパイル設置
アメリカで「Vineyard Wind 1」に続き、商用規模の洋上風力発電所「South Fork Wind」でモノパイル設置作業が開始されました。ニューヨーク州のロングアイランド島先端にあるモントーク岬から東へ約56kmにあるエリアで最初のモノパイルを設置。
作業をおこなうのは、Boskalisの4,000トン吊りクレーンを搭載した自航式クレーン船「BOKALIFT 2」。Ørstedが更新したLinkedIn(ビジネス特化型SNS)の投稿によると、1本目に打設したモノパイルは洋上変電所基礎になるという。
モノパイル打設時は、「Vineyard Wind 1」と同じようにバブルカーテンで周辺に生息する海洋生物への騒音低減対策がおこなわれています。パイルグリッパーの部分もシート状の何かで覆われているように見えるので他にも騒音対策が施されているのかもしれません。
クレーン船「BOKALIFT 2」は改造船で、元はアメリカのTransoceanが所有していた掘削船「GSF JACK RYAN」。2020年5月からドバイに本拠を置くDrydocks Worldで改造が実施され、2022年に完了。その後、台湾の洋上風力発電所で作業をおこなっている。
サウスフォーク洋上風力発電所の概要
「South Fork Wind」は、Ørsted と Eversource の合弁事業によるもので、比率は50:50。2019年2月に両社は合弁事業の提携を締結し、「South Fork Wind」の他にも「REVOLUTION WIND」(700MW)の計画を進めている。
「South Fork Wind」で設置する風力タービンは、Siemens Gamesaの「SG 11.0-200 DD」12基で総発電容量は132MW。少し前にモノパイルの施工を開始した「Vineyard Wind 1」の「Haliade-X」62基、800MWに比べると規模は小さく、運転開始時期も「South Fork Wind」の方が先になる見込み。
ジョーンズ法の問題は解決?
あれ、普通にジョーンズ法に適合していないクレーン船で作業してるけど、なぜなんだろう?と、「Vineyard Wind 1」の施工が始まった時から思っていました。「Vineyard Wind 1」の時は、施工するクレーン船「ORION」がカナダのダートマス(Dartmouth)から現場海域に移動していたので、アメリカ以外の港で積み込みをしたのかなと思い、納得してました。
ですが、今回のクレーン船「BOKALIFT 2」はヨーロッパからアメリカのロード・アイランド州にあるニューポートへ入港、そして現場海域へ移動しています。う~ん、辻褄が合わない。ということで、ジョーンズ法について再度、調べることに。そして、分かったのはモノパイル設置がジョーンズ法から除外されているという事。たぶん。
This opportunity was cemented when an amendment was made, in 2021, to the Outer Continental Shelf Lands Act (OCSLA). This amendment clarified that devices fixed to the seabed for the purpose of ‘developing non-mineral energy resources’ fall within federal jurisdiction and thus constitute ‘coastwise’ points under the Jones Act.
Put more simply, the Jones Act applies to offshore wind turbines.
(2021 年に大陸棚外陸地法 (OCSLA) の改正が行われたことで、この機会は確実なものとなりました。 この修正案は、「非鉱物エネルギー資源の開発」を目的として海底に固定された装置は連邦管轄権内にあり、したがってジョーンズ法に基づく「沿岸」ポイントを構成することを明確にしました。)
(もっと簡単に言えば、ジョーンズ法は洋上風力タービンに適用されます。)
https://www.brookesbell.com/news-and-knowledge/article/the-jones-act-and-offshore-wind-the-challenges-opportunities-158414/
ジョーンズアクトでは米国2地点間の物品輸送に米国建造船を使用することが義務付けられています。米国の領海外大陸棚(Outer Continental Shelf)の海底に取り付けるかたちで設置された構造物は米国内の地点とみなされます。浮体式洋上生産貯蔵積出設備(FPSO)や海洋移動掘削ユニット(MDU)のような一時的に海底に係留される構造物も係留中は「米国内の地点」となります。
米国で洋上風力発電ファームを建設する際には、基礎の杭打ちをした瞬間にジョーンズアクトが適用されることになり、基礎上に設置するタービンを米国から輸送するためには米国建造船を使用しなければなりません。
ジョーンズ・アクト諸々 – USJ Consulting LLC
2つのジョーンズ法について記載された文章から、洋上風力発電所を建設するエリアは基礎を設置するまでは ”米国内の地点” ではないため、ジョーンズ法は適用されないとのこと。ですが、モノパイルを設置すると ”米国内の地点” となり、それ以降に設置するトランジションピース、風力タービンのタワー、ナセル、ブレードはジョーンズ法が適用されるという。
これでモヤモヤしていた気持ちがスッキリしました。
でも、ジョーンズ法に適合したモノパイル設置船の建造計画がありましたよね。この計画があるという時点で洋上風力関係の人でもアメリカでモノパイル設置がジョーンズ法から除外されることを知らない人が多いという事が分かります。
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