「Borkum Riffgrund 3」でモノパイル設置開始
JAN DE NUL KICKS OFF ØRSTED‘S BORKUM RIFFGRUND 3 OFFSHORE WIND FARM CONSTRUCTION
(ジャン・デ・ヌルがオルステッドのボルクム・リフグランド3沖合風力発電所建設を開始)
https://www.jandenul.com/news/jan-de-nul-kicks-orsteds-borkum-riffgrund-3-offshore-wind-farm-construction
2023年12月13日、ドイツのボルクム島から約53km沖合の北海で建設が進められている「Borkum Riffgrund 3 offshore wind farm」で風力タービン基礎となるモノパイル設置作業が始まり、最初の1基目が設置されたことをJan De Nulが明らかにしました。
デンマークのØrstedによって開発が進められている「Borkum Riffgrund 3 offshore wind farm」はSiemens Gamesaの出力11MW風力タービン「SG 11.0-200 DD」を83基設置する計画で、総発電容量は900MW。2025年に運転を開始する予定。
5,000トン吊りクレーン船「Les Alizés」によるモノパイル設置
モノパイル設置作業をおこなうのは、Jan De Nul が所有する5,000トン吊りクレーン船「Les Alizés」。中国で建造され、2023年1月に完成・引き渡しのあと2023年夏から「Gode Wind 3」でモノパイル設置作業などに従事していました。「Gode Wind 3」と「Borkum Riffgrund 3」のモノパイル107本(風力タービン基礎:106本、変電所基礎:1本)を設置する予定で、「Gode Wind 3」のモノパイル設置は完了したという。
「Les Alizés」による1本目のモノパイル設置を報じる記事に掲載されている画像では、全長236mの巨大な船体に5本のモノパイルを積んできるのが確認できます。
設置するモノパイルは、ドイツのノルデンハムにあるSteelwindとデンマークのLindøにあるBladt Industriesで製造されており、最大のもので長さ約100m、重量1,500トンにもなる。「Borkum Riffgrund 3」で設置する風力タービンはVestas製の11MW。
最近、日本国内で選定事業者が公表された洋上風力発電所に設置予定の風力タービンは15MWと18MW。設置海域の水深や海底地質など様々な条件によって選択される基礎構造は異なり、日本ではジャケット式が採用される可能性がありますが、もしもモノパイル式を採用するとなると今回「Borkum Riffgrund 3」で設置が開始されたモノパイルよりも、はるかに巨大なモノパイルを設置しなければならない。国内にいる洋上風力向けの作業船で設置作業が出来そうなのは、現状だと清水建設の「BLUE WIND」しかいない。
なので、施工的に基礎構造はジャケット式が採用される可能性が高そうですが、Ørstedが掲載している「Borkum Riffgrund 3」でモノパイル設置作業をおこなう様子を見ると、国内の既存大型起重機船で2,000トン級のモノパイル設置をおこなう1つの方法になるかもしれないと思いました。
5,000トン吊りクレーン船「Les Alizés」
船名 | Les Alizés |
クレーン能力 | (主)5,000トン (補)1,500トン |
揚程 | (主)125m (補)167m |
長さ | 236.8m |
幅 | 52m |
深さ | 16m |
喫水 | 10.5m(最大) |
DPS | DYNAPOS-AM/AT-R (Class 2 相当) |
載貨重量トン数 | 61,000トン |
貨物甲板面積 | 9,300m2 |
甲板強度 | 30トン/m2 |
アジマススラスター | 3,000kW×4 |
格納式スラスター | 3,250kW×2 |
バウスラスター | 2,600kW×2 |
最大速力 | 13ノット |
宿泊設備 | 150人 (1×120室、2×15室) |
― 5,000トン吊りクレーン船「Les Alizés」に関する記事 ―
モノパイル建て込みにSEP船「JB 117」を使用
出典:Ørsted
出典:Ørsted
ØrstedがLinkedInへ投稿した「Borkum Riffgrund 3」で最初のモノパイルを設置する作業の画像では、大きなパイルグリッパーを搭載したSEP船「JB 117」をモノパイル建て込み用として使用していました。
モノパイルの建て込みが完了してもSEP船「JB 117」はクレーンをジブレストから起こしていないので、クレーン作業をする気は全く無さそう。モノパイル打設は「Les Alizés」に積まれている油圧ハンマーを使用したとみられます。この方法だとSEP船ではない「Les Alizés」に動作補償機能が付いたパイルグリッパーを搭載する必要が無くなり、一見するとSEP船を贅沢に使っているようにも思えますが効率的ともとれる。
日本の秋田港・能代港洋上風力発電所ではモノパイルの建て込みに起重機船「海翔」を使用していたそうなので、同じ方法で2,000トン級のモノパイル設置は可能なのかも。建て起こし設備を使用せず、起重機船のみでモノパイルを建て起こす場合は、起重機船「海翔」であっても最大吊り上げ能力4,100トンの半分2,050トンが上限になってしまう。なので、風力タービンの大型化が進んでいくと考えるなら「Les Alizés」「Orion」「Bokalift 2」「Green Jade」などのようなSEP船ではなく、DP搭載の大型クレーン船がいずれ必要になりそう。
あと、導材みたいな使われ方をしているSEP船「JB 117」を見て思ったのは、揚程の小さなSEP船は洋上風力事業で使い道がほとんど無いということ。「柏鶴」が心配。
1,000トン吊りSEP起重機船「JB 117」
船名 | JB 117 |
クレーン能力 | 1,000トン |
長さ | 75.9m |
幅 | 40.0m |
深さ | 6.0m |
レグ長さ | 80.0m |
DPS | DP2 |
建造年 | 2011年 |
出典:Jack-Up Barge BV
「Gode Wind 3」と「Borkum Riffgrund 3」
デンマークのØrstedによって開発が進められているドイツの着床式洋上風力発電所「Gode Wind 3」と「Borkum Riffgrund 3」。ともに2023年夏の着工が予定されており、風力タービンはSiemens Gamesaの出力11MW「SG 11.0-200 DD」を合わせて106基設置する。運転開始の予定は規模の小さい「Gode Wind 3」(242MW)が2024年、「Borkum Riffgrund 3」(900MW)が2025年となっている。
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