家畜糞尿由来の液化バイオメタンを船舶燃料として活用
2023年6月21日、商船三井やエア・ウォーターなど7社は、内航LNG燃料貨物船「いせ みらい」で家畜糞尿由来の液化バイオメタン(LBM,Liquefied Bio Methane)を舶用燃料としてトライアル使用する実証試験を伊勢湾内で実施し、成功したと発表。
実証試験を実施した7社
- 株式会社商船三井
- エア・ウォーター株式会社
- 株式会社テクノ中部
- 協同海運株式会社
- 株式会社商船三井内航
- 株式会社シーエナジー
- 株式会社IHI原動機
家畜糞尿由来という言葉だけで鼻をつまんでしまいそうになる強烈な字面の原料。そこから製造する液化バイオメタンは、バイオガスプラントから発生した未利用バイオガスを回収し、主成分であるメタンを分離・精製して約-160℃で液化したもの。この液化バイオメタンの製造については、実証試験に参画しているエア・ウォーターが環境省に採択され推進する技術開発・実証事業において北海道十勝地方で家畜糞尿から製造しているという。
液化バイオメタンを船舶燃料として使用
実証試験では、国内初の取り組みとして液化バイオメタン(LBM)を船舶燃料として使用。伊勢湾内でのトライアルに向けて、北海道で製造したLBMを既存のLNGサプライチェーンで輸送。というのも、LBM、LNGともに主成分はメタンで輸送や消費に関わる既存のLNGサプライチェーンを活用できるそうです。これは導入費用が劇的に抑えられるので効果は大きい。
LNG燃料は従来の燃料油に比べてCO2の排出量を約25%削減する効果があり、LBMを混合して使用することにより、更なるCO2削減効果が望めるという。
国内初のLNG燃料内航貨物船として建造された「いせ みらい」
実際に実証試験で液化バイオメタンを船舶燃料として利用したのは内航LNG燃料貨物船「いせ みらい」。商船三井グループの商船三井内航、中部電力グループのテクノ中部、協同海運が共同保有するLNGと重油の二元燃料貨物船で、初のLNG燃料内航貨物船として2020年12月に竣工。
船名 | いせ みらい |
総トン数 | 6,455トン |
載貨重量トン | 7,797トン |
長さ | 118.86m |
幅 | 18.0m |
建造年 | 2020年12月 |
建造場所 | 檜垣造船(波方) |
実証試験での成果
- 既存のLNGサプライチェーンでLBMを輸送可能なこと
- 既存のLNGローリーでLBMを本船に対してTruck to Shipバンカリング可能なこと
- 本船の既存設備でLBMを安定して利用可能なこと
LBMを舶用燃料として使用した実証試験では、上記の3点が確認できたという。有効活用されていないバイオガスに着目、そこから液化バイオメタン(LBM)を製造し、船舶燃料として利用することで海上輸送の低・脱炭素化に貢献する取り組みは素晴らしい。これまで廃棄され不要と思われていた産業副産物を有効活用することで、マイナスがプラスになるような感じ。実用化に向けては、まだ様々な壁があると思いますが、継続して欲しいと思いました。
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