北海道の「石狩湾新港洋上風力発電所」商業運転開始
2024年1月4日、株式会社グリーンパワーインベストメントおよび株式会社JERAは、特別目的会社(SPC,Special Purpose Company)である合同会社グリーンパワー石狩を通じて保有する「石狩湾新港洋上風力発電所」において、2024年1月1日より商業運転を開始したと発表。
「石狩湾新港洋上風力発電所」では風車基礎として着床式のジャケットを採用しており、Siemens Gamesa製の8MW風力タービン「SG 8.0-167 DD」を14基設置。設備容量は112MWですが、発電した電力を送電網へ供給する接続容量は99MW。
「石狩湾新港洋上風力発電所」に関する記事
清水建設のSEP船「BLUE WIND」による8MW風力タービン設置
「石狩湾新港洋上風力発電所」の建設について陸上工事は鹿島建設、洋上工事は清水建設と日鉄エンジニアリングによる共同事業体が元請けで施工。清水建設の2,500トン吊りSEP起重機船「BLUE WIND」による風力タービン設置をはじめ、作業に従事した主要な作業船は以下の通り。
蓄電設備、将来的な水素製造・・・その理由は
「石狩湾新港洋上風力発電所」は国内最大規模の発電容量に加えて、洋上風力で発電した電力を陸上で蓄電する設備を保有しているという特長があります。洋上風力による出力が発電所の出力を上回る時は蓄電設備に充電し、逆に洋上風力による出力が発電所の出力を下回る時は蓄電設備から放電してその差を補うという電力ロスが出ない仕組みを採用。
しかし、この蓄電設備に電力を蓄電する根本的な理由・原因は電力需給事情や電力系統による制約で発電した電力を全量使い切ることが出来ない時間帯が長いからだという。さらに、大型蓄電施設を設置しても余剰電力が相当量発生するらしく、その余剰電力を利用して水素サプライチェーン構築の事業実現性及び実証事業の検討をおこなう予定。
完成した洋上風力発電所の能力を効果的に100%利用できないというのは残念。
国内の洋上風力発電導入量311.2MW
運転を開始した「石狩湾新港洋上風力発電所」を含めて日本国内の洋上風力発電導入量を調べてみると、311.2MWでした。本来であれば同時期に「五島市沖洋上風力発電事業」も運転開始予定でしたが、”浮体構造部の不具合”により2026年1月へ2年延期が発表されています。
日本国内で運転中の洋上風力発電所
設置区域 | 名称 | 合計出力 | タービンメーカー | 風車定格×基数 | 風車基礎形状 | 運転開始 |
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北海道 瀬棚港 | 風海鳥 | 1.2MW | Vestas | 0.6MW×2基 | 着床、ドルフィン | 2003年12月 |
山形県 酒田港 | サミットウインドパワー坂田発電所 | 10MW | Vestas | 2MW×5基 | 着床、ドルフィン | 2004年1月 |
茨城県 鹿島港 | ウィンド・パワーかみす第1洋上風力発電所 | 14MW | 富士重工業 | 2MW×7基 | 着床、モノパイル | 2010年2月 |
茨城県 鹿島港 | ウィンド・パワーかみす第2洋上風力発電所 | 16MW | 日立製作所 富士重工業 | 2MW×8基 | 着床、モノパイル | 2013年2月 |
千葉県 銚子沖 | 銚子沖洋上風力発電所 | 2.4MW | 三菱重工業 | 2.4MW×1基 | 着床、重力 | 2013年3月 |
長崎県 五島椛島沖合 | はえんかぜ | 2MW | 日立製作所 | 2MW×1基 | 浮体、スパー | 2013年10月 |
秋田県 秋田港 | ユーラス秋田港ウインドファーム | 3MW | Siemens | 3MW×1基 | 着床、ドルフィン | 2015年2月 |
福岡県 北九州市沖 | ひびき | 3MW | Aerodyn engineering | 3MW×1基 | 浮体、バージ | 2019年5月 |
秋田県 秋田港 | 秋田洋上風力発電(秋田港) | 54.6MW | MHI Vestas | 4.2MW×13基 | 着床、モノパイル | 2023年1月 |
秋田県 能代港 | 秋田洋上風力発電(能代港) | 84MW | MHI Vestas | 4.2MW×20基 | 着床、モノパイル | 2022年12月 |
富山県入善町沖 | 入善洋上風力発電所 | 9MW (出力制御7.495MW) | 明陽智能 | 3MW×3基 | 着床、モノパイル | 2023年9月 |
北海道 石狩湾新港 | 石狩湾新港洋上風力発電所 | 112MW (接続容量99MW) | Siemens Gamesa | 8MW×14基 | 着床、ジャケット | 2024年1月 |
311.2MW | 76基 |
政府の導入目標と現状
2020年12月に日本政府が発表した洋上風力発電の導入目標は、2030年までに1,000万kw(10GW)、2040年までに3,000万kw~4,500万kw(30GW~45GW)の案件を形成するというものでした。
国内で運転を開始した洋上風力の発電容量311.2MWという数値は2030年目標の僅か3.1%。政府導入目標は”案件形成”ということなので、建設中の254.3MWと公募がおこなわれている1,809MWを加えて合計すると2,374.5MW。今後、毎年1,000MW(1GW)以上の案件を継続して形成できれば2030年の目標達成は可能なのかも。
日本国内で建設中の洋上風力発電所
設置区域 | 名称 | 合計出力 | タービンメーカー | 風車定格×基数 | 風車基礎形状 | 運転開始予定 |
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長崎県 五島市沖 | 五島市沖洋上風力発電事業 | 16.8MW | 日立製作所 | 2.1MW×8基 | 浮体、ハイブリッドスパー | 2026年1月 |
福岡県 北九州市沖 | 北九州響灘洋上ウインドファーム | 237.5MW (接続容量220MW) | Vestas | 9.5MW×25基 | 着床、ジャケット | 2025年度 |
254.3MW | 33基 |
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公募がおこなわれた洋上風力発電事業
設置場所 | タービンメーカー | 単機出力 | 設置基数 | 総発電出力 | 運転開始時期 |
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秋田県男鹿市、潟上市及び秋田市沖 | Vestas | 15MW | 21基 | 315MW | 2028年6月 |
新潟県村上市及び胎内市沖 | GE | 18MW | 38基 | 684MW | 2029年6月 |
長崎県西海市江島沖 | Vestas | 15MW | 28基 | 420MW | 2029年8月 |
秋田県八峰町及び能代市沖 | 15MW | 26基 | 390MW | 2030年 | |
113基 | 1,809MW |
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