女川町で日本最大の起重機船「海翔」による中央径間架設中!
2024年12月の完成を目指して建設が進められている宮城県女川町の離島 出島と本土を結ぶ出島架橋事業で、いよいよ中央径間の架設作業が開始されました。
架設作業前日の11月15日に女川港内で中央径間の吊り上げがおこなわれ、起重機船「海翔」は吊り上げた状態のまま架設位置に近い停泊場所まで移動していました。架設作業はYouTubeの女川町公式チャンネルでライブ配信がおこなわれています。無事に架設作業が終わりますように・・。
LIVE配信予定の女川町公式チャンネル :https://www.youtube.com/@user-lh7lt2dg2j
日本国内でナンバー1の起重機船「海翔」
起重機船「海翔」による架設作業がおこなわれている中央径間は、三重県にあるJFEエンジニアリング津製作所で製作されたあと、輸送可能なブロックに分割して台船に積み込まれ三重県から宮城県女川町まで4回に分けて海上輸送されたという。その後、女川港石浜ヤードで一括架設用の大ブロックに組み立てをおこない、橋の中央部分にあたる中央径間が完成。中央径間の上部工部材に使用されている鋼材重量は約2,500トン。
ライブ配信内で最終的な重量は約2,800トンという説明がされていた巨大な中央径間。架設するのは日本国内最大の起重機船「海翔」。その最大吊り上げ能力は4,100トン。国内には起伏式でジブを2本搭載している「海翔」と同じような仕様の大型起重機船は「海翔」以外に3,700トン吊りの「武蔵」(深田サルベージ建設所有)と「第50吉田号」(吉田組所有)の計3隻しかいません。その中でも吊り上げ能力と揚程が最も大きいのは「海翔」。
船名 | 所有会社 | 最大吊り上げ能力 | ※揚程 |
---|---|---|---|
海翔 | 寄神建設株式会社 | 4,100トン | 117.9m |
武蔵 | 深田サルベージ建設株式会社 | 3,700トン | 107.1m |
第50吉田号 | 株式会社 吉田号 | 3,700トン | 106.0m |
作業を見ると分かる起重機船の豆知識
起重機船「海翔」による作業は見るだけで、壮大なまでの大きさと絶大なパワーを感じることが出来ます。ですが、もう少し詳しく起重機船の仕組みを知り、作業の要点や工夫されているポイントを理解することで今までとはひと味違うワンランク上の魅力を感じることが出来るかもしれません。
今回おこなわれている作業で紹介するのは、ディスタンスビームとバラストについて。
側径間架設時は外していたディスタンスビームを装着
ディスタンスビームとは、フックとフックの間を一定距離に保持するための部材。元々フックがある平面位置から離れた位置に玉掛けすると、張り合わせた時にフックが外側や内側に移動してしまう。これによりフックに掛けられている主巻ワイヤーがジブトップの滑車から外れたり、角度が付くことによって主巻ワイヤー自体がジブトップの部材に干渉するといった現象が発生するのを防ぐため、ディスタンスビームを使用。
側径間架設時はアーチ部分と橋桁部分を左側・右側のフックにより、2つの部材を同時に吊り上げた状態で作業をおこなっていました。側径間架設作業では前後のフックで傾きを調整する必要があり、1部材ずつ架設をおこなうため左右のフックを連動させて動作することが出来ない事からディスタンスビームは外されていたようです。
しかし、中央径間の吊り上げ作業では吊荷が大きく、玉掛けをおこなっている吊り点間が広くなるため、左右のフックを連結するディスタンスビームを装着しているのが確認できます。
バラストによる船体の傾き調整・カウンターウェイト
出典:X | 女川町(@TownOnagawa)
吊り上げ前の船体と吊り上げ後の船体を見比べると一目瞭然。吊り上げ前の船体は、船尾側が海面際まで沈み込み、船首側はカットアップと呼ばれる斜めの切り込みが見えている状態で船体は前後で大きく傾いています。ですが、中央径間を吊り上げた後の船体は、船首側が沈んで船尾側は少し浮き上がり傾きがほぼ無くなっているのが分かります。
起重機船のバラスト調整については知っている方も多いと思いますが、吊荷の重量が重たいだけにバラスト量も半端ないようで、その見た目の変化に気付くだけでもワクワクします。
日本最大の4,100トン吊り起重機船「海翔」
船名 | 海翔 |
クレーン能力 | 4,100トン |
長さ | 120.0m |
幅 | 55.0m |
深さ | 7.5m |
建造年 | 1987年 |
所有会社 | 寄神建設 |
出典:YouTube | 女川町公式チャンネル
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