来島海峡の海底から引き揚げた「白虎」、小部湾へ曳航完了
2023年8月26日、来島海峡で沈没した貨物船「白虎」の船体が水深60mの海底から引き揚げられ、海面付近に船底をあらわにした状態で小部湾への曳航が完了。引き揚げる船体の大きさ、沈没場所の水深、来島海峡という潮流など世界的に見ても難易度の高いサルベージ作業。まだ作業が全て終わった訳ではありませんが、大きな山をひとつ乗り越えたことは確か。
「白虎」船体の引き揚げに向けた吊り上げ用チェーンの巻き上げは8月17日に開始されましたが、想定よりも潮の流れが速く18日に作業を一時中断。そして、潮流が緩む8月23日に作業を再開し、25日には「白虎」の船底が海面上に姿を現していました。
8月25日の段階では「白虎」の船体が傾いていましたが、曳航時には船底のフラットな部分が全体的に確認できる程、水平に近い状態に修正。
「白虎」は秋以降に広島でスクラップの予定
報道されている情報では、最終的に「白虎」を広島県の江田島に運んで今年の秋以降にスクラップ処理するという。江田島のどこへ持ち込まれるのかは詳細不明。可能性が高いのは、八戸沖で座礁した木材チップ専用船 CRIMSON POLARIS の船首部分を引き取り、船舶解体や陸上プラント解体など多くの実績がある㈱フルサワ(本社:広島県江田島市)。
最終的な「白虎」運搬方法
ひとつ問題として残るのは、どのようにして小部湾から広島県の江田島まで「白虎」を運搬するのかという点。
台船2隻に搭載したチェーンプラーで吊り上げている現状の状態でも、リスクは高くなりますが運ぶことは出来るのかも。しかし、「白虎」の大部分は海面下にあり、水深の関係で目的のスクラップ処理をおこなう場所まで辿り着けるかどうかは、曳航経路を精査する必要がある。
ただ、台船のチェーンプラーで吊り上げて圧縮空気を送り続けているような不安定な状態の「白虎」を持ってこられても処理する方は非常に困る。24時間体制で船体の状況を管理する必要があり、スクラップ処理で船体を解体することは不可能。
関連 ジブラルタル沖の貨物船「OS 35」半潜水式バージへの搭載完了
「白虎」の船体を気中へ引き揚げる方法
スクラップ処理のことを考えると、「白虎」の船体を気中まで引き揚げる必要がありそう。
考えられる方法は2つ。
1つ目は、半潜水式バージを使用する方法。ただ、国内には全長約170mの「白虎」を搭載できる大きさの半潜水バージはいない。外国から調達するか、国内の半潜水式バージにオーバーハングした状態で積み込むか。注意点として、積んだ後の陸揚げまで想定しておかないとスクラップ処理している間、ずっと半潜水式バージを拘束することになる。
2つ目は、起重機船で吊り上げて運搬台船に積み込む方法。これは見てみたいという気持ちは強い。しかし、「白虎」よりも一回り小さい「セウォル号」でも重量は1万トンを超えていました。この1万トンには、吊り上げ用のビームなど船体以外の重量も多く含まれており、船種も違うので「白虎」の船体重量が同程度あるのかは分かりませんが、国内最大の4,100トン吊り「海翔」1隻では吊れない程の重量はあると思われるので、やるとすれば複数の大型起重機船による相吊り。
9月以降に施工場所付近へ台風が来るような予報も出ているので、のんびりはしていられない。今後もどのようにして巨大な「白虎」の船体をスクラップ場所へ運搬するのか、注目。
よく読まれている記事