座礁船「クリムゾンポラリス」を搭載するFD到着、週明けに作業開始
2021年8月に青森県八戸港の沖で座礁した木材チップ専用船 CRIMSON POLARIS(クリムゾン・ポラリス)の残された船尾部分撤去作業が大詰めを迎えている。
2024年1月31日、船尾部分を引き揚げたあとに運搬するためのフローティングドック(FD,Floating Dock)「宏洋12000」が八戸港に到着。予報で作業可能な天候が見込まれる週明けにも、引き揚げた船尾部分をFDに搭載する作業が開始される予定。
「クリムゾン・ポラリス」の船体は座礁後2つに分断され、船首側の撤去は座礁から1か月後の2021年9月に完了、残っているのは船尾部分のみ。そして、船尾部分の撤去は機関室、居住区、船倉部分という3つに分けて作業が進められており、最も油流出リスクが高い機関室は2023年12月31日に八戸港中央防波堤の港内側に移動させる作業が完了している。
週明けから開始される作業では、防波堤港内側に移動した機関室を再度吊り上げてFD甲板上への搭載がおこなわれるとみられ、撤去作業全体の完了予定が2024年3月末であることから、八戸沖の座礁・沈没場所に残る居住区、船倉部分についても継続して引き揚げ・搭載という作業が進められると思われる。
FDへの搭載方法
当初、船尾部分の撤去については大型起重機船を使用して吊り上げる方法が採用されていましたが、以前、日本最大の起重機船「海翔」が八戸港に到着したものの、悪天候のため引き揚げ作業が出来なかったことを受け、2022年12月に撤去方法を変更。変更後の撤去方法は大型起重機船を使用せず、チェーンプラーを艤装した2隻の台船を使用して引き揚げるという方法。
2024年1月9日に発表された第二管区海上保安本部発表の起重機船作業予定を周知する海上安全情報では ”起重機船作業” という記載があったので大型起重機船の登場を少し期待していましたが、作業方法を変更した理由との整合性が取れないので「海翔」クラスの大型起重機船は登場しないと思われる。
FD「宏洋12000」に引き揚げた船体を搭載する時の問題点
船名 | 宏洋12000 |
載貨重量トン | 約12,000トン |
長さ | 64m |
幅 | 45m |
深さ | 5.3m |
最大甲板深度 | 21.5m |
搭載クレーン | 6トン×2基 |
入港が報じられたFDは「宏洋12000」。家島建設(本社:兵庫県姫路市)が所有し、長さ64m、幅45m、最大甲板深度は21.5m。載貨重量トン数は12,000トンなので、搭載する貨物だけを考えても10,000トン以上は搭載できると思うので、重量1,700トンと報じられている機関室の積み込みは重量的に問題ない。
今回の作業をおこなう上で問題になるのはFD両サイドにそびえ立つ側壁。中央部分に穴が空いていますが、FDを半潜水させた時に搭載物を載せるための進入経路が前後だけに限定されてしまう。両側の側壁と側壁の間は35m。側壁が無い半潜水式バージを準備すれば問題なかったと思いますが、今回のFDには側壁があるため35mの間をスリ抜けるようにして通っていかなければならない。
一般的な方法と今回実施される方法との違い
昨年末に防波堤内側へ機関室の移動をおこなう画像を見た時に違和感を覚えましたが、その理由が今回入港したFD「宏洋12000」を見て分かった気がします。
チェーンプラーを使用した引き揚げ作業では、台船の長辺にチェーンプラーを配置するのが一般的ですが、昨年末の機関室移動を報じるニュースでは、台船短辺にチェーンプラーを配置して機関室の引き揚げ・移動をおこなっている様子が伝えられていました。
この画像を見た時にとても違和感を覚えましたが、機関室を搭載・運搬するための半潜水式バージにFD「宏洋12000」を使用することから、FD側壁内側の35mを通り抜けるため、やりにくい台船短辺にチェーンプラーを設置していたと思われる。
機関室部分をチェーンプラーで吊り上げた状態で、狭いFD側壁の間を通り抜けて搭載する作業は難易度が高い作業になりそうです。
機関室をFDに搭載するまでの作業の流れは分かりましたが、まだ八戸沖には居住区、船倉部分が残されている状態。機関室をFDに搭載してしまうと、残りの居住区と船倉部分を同じFDに搭載できなくなってしまいますが、どうなってしまうんでしょうか。数百トンクラスのクレーン船はいるようですが、そのクレーン船で吊り上げることが出来るということなのか。実際におこなわれる作業の様子が気になります。
ジブラルタル沖で座礁した貨物船「OS 35」引き揚げ(チェーンプラー使用)
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